だが、感染が拡大する中で、大手製薬会社は傍観している。専門家らが8月5日にハフポストUS版に述べたところによると、エボラ出血熱は、あまり裕福でない、比較的少数の人々がかかる病気であり、利益優先の企業にとってはそれほど大きな投資対効果が得られない、というのが主な理由だという。
テキサス大学医学部ガルベストン校の研究室で、エボラ出血熱の治療法を研究しているトーマス・ガイスバート教授は、エボラ出血熱は現在話題にはなっているが、実際の患者数は比較的少ないと指摘する。同教授によると、エボラ出血熱の現時点の患者数は、マラリアやガンなどの患者数に比べればごくわずかなのだという。「患者数が少ない病気の治療薬を売ろうとする製薬会社などないのです」ガイスバート教授はエボラ治療の現状をこう嘆いている。
エボラウイルスと戦う抗体を利用したこの治療薬は、小規模なバイオテクノロジー企業各社(なかには従業員が10人未満のところもある)や、アメリカ陸軍による資金協力、カナダ公衆衛生庁の研究が連係したことで実現した。
ZMappの化学構造を開発したのは、カリフォルニア州サンディエゴにある小さな企業Mapp Biopharmaceutical社だ。そしてKentucky BioProcessing社(2014年に入って大手タバコメーカーのReynolds American社に買収されている)が、遺伝子組み換えタバコの葉を利用してZMappを生産した。
「CNNMoney」の報道によると、他にもいくつかの企業が、政府から資金提供を受けて、エボラ出血熱治療薬の開発に取り組んでいる。
政府がエボラ出血熱治療薬の開発を支援するのは、主に国家安全保障上の理由による。投資銀行のMaxim Group社で医療関連エクイティ調査部門の責任者を務めるジェイソン・コルバート氏は、治療薬を備蓄しなければ、バイオテロリストがエボラ出血熱や天然痘などの感染症を利用して大混乱を引き起こす可能性があると指摘する。
アリゾナ州立大学で感染症を専門とするチャールズ・アーンツェン教授は、ZMappによる治療が着実な成功を収めれば、それを契機に大企業も治療法の開発に向けた投資を増やす可能性があると話す。同教授はアメリカ政府から、Mapp Biopharmaceutical社の開発に従事する科学者たちに支給されたものと同じ助成金を通じて、エボラウイルス治療薬研究のための資金提供を受けている。
アーンツェン教授によると、同教授チームの研究はかなり進んでおり、動物実験の段階まで来ているが、人間での臨床実験で副作用を調べるまでには至っていないという。それには大企業による「多額の資金」が必要だからだ。
[Jillian Berman(English) 日本語版:湯本牧子、合原弘子/ガリレオ]
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