EU離脱を問う国民投票の結果を受け、イギリスのキャメロン首相が辞意を表明し、その後継が誰になるか注目が集まっている。NHKなどによると、与党・保守党は次期首相となる新しい党首を9月2日までに選出する見通しだ。
次期首相候補にはメイ内相やオズボーン財務相、ハント保健相などの名前が取り沙汰されているが、中でも最有力とされているのがEU離脱派の象徴的人物だったボリス・ジョンソン前ロンドン市長だ。彼は一体、どんな人物なのか。
■歯に衣着せぬ言動でカリスマ的人気 「イギリスのトランプ」とも
ジョンソン氏は、1964年6月生まれの52歳。ニューヨーク生まれ。家族とイギリスに戻ったのち、名門イートン校を経てオックスフォード大学に入学。キャメロン首相は後輩にあたる。卒業後はデイリー・テレグラフ紙などで新聞記者として活躍し、数々の賞を獲得した。2001年からは下院議員を2期、2008年にはロンドン市長に就任しロンドンオリンピック成功の立役者となった。
庶民派として知られ、歯に衣着せぬ言動と巧みな演説で、「ボリス」の愛称でイギリス国内でも人気の政治家だ。ただ、時に発する過激な発言やトレードマークのボサボサな金髪も相まって、アメリカ大統領選の共和党候補指名獲得を確実にしたドナルド・トランプ氏と重ねて「イギリスのトランプ」とも評される。EU離脱を呼びかけたジョンソン氏の発言には、以下のようなものがある。
イギリスは主権を取り戻すべきだ
(Boris Johnson: UK ‘should take back control’ - BBC Newsより 2016/05/06)
(ヨーロッパ統合は)ナポレオンやヒトラーなど、さまざまな人たちが試してきたが、EUは同じ末路を辿る
(Boris Johnson: The EU wants a superstate, just as Hitler didより 2016/05/15 10:22)
「テロリストや殺人者が路上にうようよいるのに、我々には追い返せない」
(クローズアップ2016:英、EU離脱派に勢い 国民投票 移民や拠出金、不満募る - 毎日新聞より 2016/06/12)
EUのその場しのぎの外交政策立案や、自信を持って遂行した防衛政策が実際に問題を起こしている例が欲しいなら、ウクライナで起きたことを見るがいい
(Boris Johnson blames EU ‘pretensions’ for Ukraine crisis | PoliticsHome.comより 2016/05/09)
発言はともかく、外見がトランプ氏に似ていることはジョンソン氏自身も自覚しているようで、ニューヨーク滞在中に少女から「うわぁ…あれ、トランプじゃない?」と言われたことを、「人生で最悪の瞬間の一つだった」とTV番組で明かしている。
■ボリスは首相になれるのか?
ブックメーカー(賭け業者)もジョンソン氏を次期首相として有力視している。ただ、もともと親EUとされながら、大学の後輩で盟友でもあるキャメロン首相を裏切り、首相の座を狙うためEU離脱派に回ったと批判する声も強まっている。
こうした声を受けて、ジョンソン氏も26日にテレグラフ紙に寄稿。「イギリスの民主主義はEUによって弱体化させられていた」とした上で「イギリスはこれからもヨーロッパの一部であり続ける」「残留派の人の中には、衝撃を受け、不安を抱えている人もいる。ぎりぎり過半数を占めた我々は、残留派の人々を安心させるため全力を尽くさねばならない」と、残留派に配慮する姿勢をみせた。
加えてジョンソン氏は「イギリスがEUの煩雑なシステムや膨大な法律から解放される。これはチャンスだ」と、EU離脱のメリットを強調した。
知名度の高いジョンソン氏を含めて、国民投票で真っ二つに割れた保守党内では、まとまった支持を得ている候補が現時点ではおらず、新党首の選考は難航することも予想される。保守党の党首は、下院議員のみが立候補出来、議員による投票で候補を2人に絞り込んだうえで、党員の一般投票で決まる。産経ニュースによると、BBCの国民投票直前の調査では、保守党の下院議員330人中、離脱派が138人、残留派が185人だったため、候補者の絞り込みに注目が集まる。
【UPDATED 2016/06/30 20:18】
ボリス・ジョンソン前ロンドン市長が6月30日、保守党の次期党首選に立候補しないことを明らかにした。