ホワイトハウスの中の「テロリスト」

この民主主義を誰も守ってくれないのだろうか?
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ドナルド・トランプ氏は多くの人々の心に訴え、多くの変革を公約を掲げて、アメリカ大統領として選出された。トランプ氏は、民主党が歯止めをかけず何もしなかったから、高賃金の雇用が海外に流出してしまったと主張し、雇用を取り戻し、「アメリカを再び偉大な国にする(Make America Great Again)」と約束した。

トランプ氏はまた、移民制度を強化してジハード(聖戦)のテロリストやイスラム教徒、難民を締め出し「アメリカを再び安全な国にする(Amerika Safe Again)」と語った。さらに、不法移民のメキシコ人を、その多くは「犯罪者」だと見なし、メキシコに送還すると公約した。

自信に満ちた、見通しの明るい、新たなアメリカを築く代わりに、トランプ氏の大統領としての目まぐるしい活動とツイートが行われた最初の1カ月で、アメリカ国内の混乱と、世界的な混乱が増大した。アメリカで起こっていることに、国内のビジネスリーダーたちは不安を抱え、国外では同盟国が抵抗感を覚えた。4週間で、この「いわゆる大統領」は、アルカイダができなかったことをやってのけた。つまり、世界中に恐怖を巻き起こし、アメリカ民主主義の崩壊に必要な条件を作り出した。

「エコノミスト」誌が発表した「民主主義指数」によると、アメリカはすでに2006年の8.22ポイントから2016年の7.98ポイントへ格下げされており、「欠陥のある民主主義」のカテゴリへと追いやられた。

私たちの民主主義を揺るがす

最も憂慮すべきことは、大統領がアメリカという概念そのものを攻撃していることだ。アメリカは、単に国であるだけでなく、概念でもあるスーパーボウルの広告でも示されたように、私たちはパーツの寄せ集めではない。トランプ氏は、「エ・プルリブス・ウヌム」(多数から一つ=複数州からなる統一国家、アメリカ合衆国を表す)を、「全ての人間が自分勝手」に変えることに成功した。トランプ氏は、二極分化の戦略を使い、政府と市民生活のあらゆる側面を政治的に利用することによって、「アメリカン・マインドの終焉」をもたらしている。

これは偶然ではない。私たちがトランプ氏を通じて見ているのは、実際にアメリカを偉大にしたすべての制度と政策が次々と標的にされていることだ。(共和党が擁護する)この政権は、私たちの民主主義の中核を爆破させる爆弾を仕掛ける、テロリストのようなものだ。

詳細な計画は以下の通りだ。

メディアを攻撃 次々と嘘をつき、メディアに「フェイクニュース」とレッテルを貼り、トランプ氏は確実に「真実」に疑問を投げ掛けている。政治家に責任を負わせることを生業とするマスコミを破壊しようとしている。ジョン・マケイン上院議員は次のように指摘している。「独裁はこのようにして始まる」

司法を攻撃する 「いわゆる」判事たちが、トランプ氏の政策を止めるために介入すると、トランプ氏と同氏を取り巻く人々は、法制度があまりに「腐敗している」ことを理由として司法を非難する。政権は意図的に、司法を不安定化させている。「法の支配」による政府であれば、トランプ氏が求めている変化を阻止するはずだ。

選挙プロセスを攻撃 選挙プロセス自体に疑問を投げかけ、不正投票という虚偽の主張を展開し、トランプ氏は広範な投票者を抑圧しようと準備を整えている。これが投票プロセスを不安定化させるトランプ氏の計画だ。21の州は、この偽りの大義名分の下、投票することが難しくなっている。

言論の自由を攻撃 反対意見を沈黙させ、トランプ氏と共和党は「イデオロギーによる支配」に向けた準備を整えている。そこではもはや、科学的な、証拠に基づいた決定が下されることはない。トランプ氏は、産業の利益に恩恵をもたらすために真実をねじ曲げている。抗議者は、テロリストの烙印を押されている。国立公園は自由にツイートできない。エリザベス・ウォーレン議員は、上院で沈黙させられた。

情報機関を攻撃 トランプ氏は、中央情報局(CIA)などの情報機関を非難し、公の信用を貶めようとしている。これは、ロシアの大統領選に対する影響を隠蔽するために行われたのだろうか?

移民を攻撃 どうして移民たちによって築かれた国が移民を拒絶するか?「イスラム教徒の入国禁止」は違憲であり、国境の壁によって真の危機は解消されない。私たちが最近耳にするのは、トランプ氏が「新しく改善された」イスラム教徒の入国禁止令に署名するために、阻止された大統領令を作り直しているという話だ。さらに気がかりなのは、トランプ政権は、実際の移民改革に取り組む代わりに、国家警備隊を使い、私たちの経済にとって不可欠なメキシコ国民を「一斉検挙」し、国外退去させる計画を進めているというニュースだ。

公民権を攻撃 トランプ氏のジョン・ルイス上院議員に対する攻撃は、氷山の一角だ。トランプ氏自身は、過激主義者――トランプ政権の首席戦略官、スティーブン・バノン氏――に先導されている。バノン氏の影響力は、白人至上主義が当たり前となり、ホロコーストの「ユダヤ抜き」、「南部戦略」(ニクソン大統領が主導した、1960年代のリベラルな風潮に対し危機感を抱いた中産・下層の白人の間に,反黒人運動,反労働組合,反・反戦運動,反東部エスタブリッシュメント)の復活に見られる。彼らは人種差別を再び容認させたいと望んでいる。

女性の権利を攻撃 トランプ氏が出した、海外で中絶に関する支援を行うNGOへの政府支出を禁じる「グローバル・ギャグ・ルール」(口封じの世界ルール)は、女性の権利への攻撃に追い打ちをかけるものだ。トランプ氏はあからさまなミソジニスト(女性嫌悪)である上に、「プランド・ペアレントフッド(家族計画連盟)」への資金援助打ち切りに支持表明したことで、「女性がこれまでで最も深刻な国からの脅威に直面している」ことがわかる。

公教育を攻撃 教養ある一般市民がいなくなると、私たちの民主主義は深刻な問題に陥る。ベッツィ・デボス教育長官は、公教育制度を破壊することを望んでいる。教育者たちは抗議しているが、すでに難題を抱えた教育システムにデボス教育長官が与えたダメージは、絶望的な結果をもたらすかもしれない。

芸術を攻撃 トランプ氏は、全米芸術基金(NEA)と全米人文科学基金(NEH)を廃止し、公共放送のNPRとPBSの両方に支出している政府機関「公共放送協会」(CPB)を民営化する意向だ。これは、芸術だけでなく、民主主義自体の価値を下げる政治的」戦略だ。お金が問題なのではない。たとえば、NEAの予算全体は、私たち国民が、トランプ氏とメラニア夫人が別々に暮らすための生活環境に支出する額よりも少ない。

環境規制を攻撃 現在、環境保護庁(EPA)の長官を務めるスコット・プルイット氏は、反環境保護主義者だ。プルイット氏は、アメリカの大気や水、子供たちの健康、地球の未来を危険にさらす。EPAができる前の生活はどんなだったか、覚えているだろうか? 未来を見るには、上海やデリーに行くだけで十分だ。世界中の過去の協定を骨抜きにし、廃止する計画が複数ある。トランプ氏は、3つの石油パイプラインを「承認」し、石炭会社が河川に廃棄物を投棄するのを制限する規則に撤廃した。そして「クリーン・パワー・プラン」(オバマ前大統領が推進した環境保護政策)を廃止し、一部停止されていた国有の石炭埋蔵地の賃貸を解除しようしている。さらにトランプ氏は、まもなく公有地でのエネルギー開発の「規制を撤廃」するという。

倫理政策を攻撃 現在、外国政府に賄賂を渡すことは合法なのはご存知だろうか? また、トランプ氏は、ロビイストが政権に入ることに関する制限を撤廃する大統領令に署名した。トランプ氏は政治のクリーン化どころか、濁りきった沼地にしようとしている。ゴールドマン・サックスの株価は、大統領選以来、37%上昇している。

公有地を攻撃 ユタ州のジェイソン・チャフェッツ下院議員は、連邦政府の所有地を州へ譲渡するための法案を提出した。これは、州レベルで公有地を民営化させる一般的な戦略だ。幸い、世論の強い反発が起きてチャフェッツ下院議員は法案を撤回した。 「アメリカが生んだ偉大なるアイデア」と言われている国立公園や、その保護者たち、パークレンジャーも攻撃を受けている。

自由市場を攻撃 「トランプ氏の最初の30日で打撃を受けた自由企業」という見出しの記事で、トランプ氏がSNSを利用していかに多くの企業を攻撃してきたかが指摘されている。アマゾン、アメリカン航空、AOL、Apple、ボーイング、キャリア、フィアット・クライスラー、コカコーラ、ディズニー、Facebook、フォード、GM、ゴールドマン・サックス、Google、H&Rブロック、HP、コーク・インダストリーズ、ロッキード・マーティン、メイシーズ、マイクロソフト、マイラン、プロクター・アンド・ギャンブル、ソニー、T-Mobile、タイム・ワーナー、トヨタ、ベライゾンなどが攻撃された。これが、経済を動かす正しいやり方だろうか?  まさか。しかし、こうしたグローバル企業を攻撃することで、トランプ氏は、ツイートが実際の行動と取り違えるフォロワーたちに向けてエサを与える。

労働組合を攻撃 トランプ氏は、最も保守的な労働者層に積極的に取り入り、よりリベラルな労働者層を攻撃して、労働組合を意図的に弱体化させている。労働者を二極化させる戦略で、トランプ氏はすでに衰退している労働組合を無力化させることができる。

同盟国を攻撃 トランプ氏は、北大西洋条約機構(NATO)の基本理念に疑問を持ち、アメリカをロシアになぞらえ、テロとの戦いで大事な同盟国を遠ざけた。移民の入国禁止令は、すでにアメリカのブランドに大打撃を与えてしまった。さらにトランプ氏は、数日おきにメキシコ、オーストラリア、ドイツの首脳を侮辱している

恐怖政治

トランプ氏の「衝撃と畏怖」の戦略は、私たちに平静さを失わせ、恐れさせ、沈黙させ続けるために、直接アメリカ国民に向けられている。トランプ氏は、アメリカ国民を怖がらせ、混乱させるためにテロ攻撃をでっち上げる。

トランプ氏は、深刻な性格の欠陥を抱えている。同氏は、妄想的な現実に生きているのか、または単に嘘をつかずにはいられないのか。トランプ政権が最初の1カ月で混乱を引き起こしたと認める代わりに、トランプ氏は「政権は、よく整備された機械のように機能している」と語った。トランプ氏は2017年2月18日、フロリダ州メルボルンで2020年の大統領選に向けた運動を開始することで、高い支持率があると国民に対して正当性を立証するだろう。トランプ氏は英気を養うために、9000人のファンとフォロワーに1時間演説した。

今になって、私たちはトランプ支持者たちが計画している真の革命を理解し始めている。トランプ氏は、リーダーではなく、首席戦略官であり過激主義者であるスティーブ・バノン氏の操り人形に過ぎない。彼らの目的は、オバマケア、メディケア、社会保障制度、そして多くの福祉やいわゆる「給付金」制度を破壊することだ。

こうした過激主義者には、大きな野望がある。民主主義を去勢することだ。トランプ氏とその取り巻きは、二大政党制に関心がない。彼らは、民主党と協力する気はない。彼らは、民主党が昔の面影になるまで縮小させたいと望んでいる。この共和党の過激主義者たちは、富裕層によってアメリカを完全に支配したいと思っている。

彼らは、私たちの文化を貶めようと躍起になっている。私たちが目の当たりにしているのは、権威主義と独裁政権の誕生だ。公務員たちは今や、言動に注意深くならなければいけない。でなければ職を失ってしまう。ビジネスリーダーたちは、高コストであってもこの国で雇用を維持しなければならない。でなければ大統領からの電話で制裁を受け、恥をかくことになる。トランプ氏を批判する人々は、静かになって不平を止める必要がある、でなければ「報いを受ける」ことになる。

大統領の部下は、「くたばれ民主主義」といった言葉を使うことなく、「私たちの国を守る大統領の権限は絶大で、疑問視されることはない」と言う。

大きな疑問なのだが、なぜ共和党の首脳たちは、恐怖政治を解き放とうとしている怪物を作ってしまったと思っていないのだろうか。国内で育ったテロリストたちが内部から支配権を受け継いだとき、私たちは海外のテロリストを恐れる必要はない。

ジョン・マケイン上院議員などごく少数の共和党員だけが、トランプ大統領の行動に対して声高に反対している。沈黙が耳に痛い。

「アメリカン・ドリーム」が、アメリカで死にかけている。まだ存在しているが、カナダに移住せざるを得ない。

この民主主義を誰も守ってくれないのだろうか? 

それは私たち、国民次第だ。

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ハフィントンポストUS版より翻訳しました。