韓国・朴槿恵大統領はいつ辞める? 現時点で想定される3つのシナリオ

その道のりは「辞任」と「弾劾」の二つに集約される。
Open Image Modal
FILE - In this Friday, Nov. 4, 2016 file photo, people watch a TV screen showing the live broadcast of South Korean President Park Geun-hye's address to the nation on a
ASSOCIATED PRESS

朴槿恵(パク・クネ)大統領は今後、どうなるのか。「即時退陣」を求める100万人の抗議に押される形で、世論はもちろん、政界も「統治の権威と正当性を喪失した朴大統領が、任期満了(2018年2月)まで続けるのは不可能だ」という意見でまとまりつつある。

その道のりは「辞任」と「弾劾」の2つに集約される。大統領が任期を全うすることを前提に「大統領が第一線から退き、挙国一致内閣を構成する」構想は勢いを失っている。

■辞任 - 「即時辞任論」対「段階論」

Open Image Modal

11月12日の「100万人集会」を分岐点に、大勢は「辞任論」に移ったという意見は、与党・セヌリ党にもある。残りの争点は、辞任の時期と手順だ。即時辞任論は「辞任→暫定内閣の構成→早期に大統領選挙を実施」というシナリオだ。朴大統領がすぐに辞任しなければ沸騰した世論を落ち着かせることができないだけでなく、当面の外交・安保・経済の懸案を収拾できないまま、不安定な「二重権力」の状態が続いてしまうからだ。

しかし、大統領の権力が突然崩壊することによる、国民の不安を落ち着かせられるのかという反論もある。大統領が辞任した場合、首相が権限代行を務め、60日以内に大統領選挙を実施するよう規定した現行憲法の規定も野党の悩みの種だ。朴大統領と連帯責任がある黄教安(ファン・ギョアン)現首相に、暫定内閣の首相を任せられないという意見もある。主に野党から「段階的辞任」(秩序ある撤退)が提案されている理由だ。

Open Image Modal

段階的辞任論は、大統領がすぐに辞任しない代わりに、与野党が合意した「権限代行首相」に全権を移譲して挙国一致内閣を構成し、大統領は約束したスケジュールに基づいて辞任するプロセスだ。「大統領の権限移譲宣言→挙国一致内閣構成→辞任→早期の大統領選挙」の手順だ。しかし、憲政史に前例がない。「段階的辞任」を主張する側は「国家的危機状況では、政治的合意が優先」「今の状況を、大統領が職務を遂行できない『事故』局面と規定すれば、憲法の規定と矛盾しない」と反論する。しかし、これも「即時辞任」を求める世論を満足させるには力不足との指摘も少なくない。

■弾劾 - 「圧迫論」対「実行論」

Open Image Modal

問題は、「即時辞任」であれ「段階的辞任」であれ、朴槿恵大統領の決心にかかっているという点だ。そこで登場するのが「弾劾論」だ。弾劾は国会の決定で大統領の職務を停止させた後、強制的に地位から引きずり下ろす手続きだ。憲法で、大統領弾劾は、国会在籍議員の過半数(151人以上)の発議と、在籍議員の3分の2(200人)以上の賛成が必要だ。可決のためには、野党3党と無所属議員全員に加え、与党・セヌリ党の議員29人も加勢しなければならない。

「崔順実ゲート」政局の初期は、弾劾は国会勢力の関係で可決が難しいか、ともすれば政治的な逆風に巻き込まれる可能性もあり、現実的ではないという意見が野党の多数意見だった。しかし、セヌリ党の非・朴槿恵系議員が「弾劾不可避」に方針転換し、即時辞任を求める世論の噴出と、「辞任・弾劾賛成」が60%に達する世論調査の結果が発表され、状況が変わった。

しかし、野党の多くはまだ弾劾に懐疑的だ。セヌリ党の非朴系が賛成して弾劾訴追が可決されても、実際に憲法裁判所が弾劾審判をするまで最長180日かかる。その間、世論と政局がどう移り変わるか不透明なだけでなく、憲法裁判所の構成を見ると、国会の弾劾訴追案を認めるかどうかも不確実だ。パク・ハンチョル憲法裁判所長ら憲法裁判所の裁判官9人は、李明博・朴槿恵政権で任命された保守系の人物が圧倒的に多い。このため、崔順実容疑者が起訴される19日に、弾劾の法的要件が満たされない場合、近く任命される見通しの特別検事の捜査で弾劾事由が明確になるまで、弾劾発議を急ぐべきではないという慎重論もある。

■「司法解決」よりも「政治的解決策」探ろうとの主張も

Open Image Modal

2004年、盧武鉉大統領(当時)の弾劾訴追案が国会で可決されたが、直後の総選挙では盧大統領率いる与党が過半数を制する圧勝。弾劾を推進した野党は国民の強い批判にさらされ、憲法裁判所でも弾劾は棄却された

弾劾には「社会的葛藤と政治的懸案の解決を司法の判断に委ねてはならない」という主張も根強い。「司法万能主義」や「政治の司法化」に対する批判だ。ホン・ソンス淑明女子大教授(法学)は「今の問題は、憲法の理念と民主主義の問題であり、市民の手で提起された政治的問題だが、それが憲法裁判所のエリート裁判官の判断に委ねられる状況を(国民が)認めるだろうか。弾劾は最後の手段であり、問題は法ではなく、政治で解決しなければならない」と指摘した。

このような理由などから、野党では「辞任要求と合わせて、大統領の決断を迫るための並行手段」として弾劾を準備しなければならないという現実論が力を得ている。辞任を求める圧力をかけ続けながら、国会に「弾劾準備機構」を構成し、政治的・法的に準備を進めようという提案も同じ脈絡だ。一度与党の弾劾賛成派と一緒に弾劾手続きに着手して大統領に圧力をかけ、大統領が辞任を拒否するなら、弾劾の可否を再度判断するか「不確実性」を覚悟で弾劾に突入すればいいというものだ。

ハフポスト韓国版に掲載されたものを翻訳・加筆しました。

関連記事

Open Image Modal

Open Image Modal