国籍は日本。だけどアメリカに家族がいて、香港に兄妹がいる。

私は様々な家庭の“真ん中“で育ってきた
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アメリカの叔父が「この頃から笑顔が変わってないね」とみせてくれた私の写真。1歳前の私が座っているのは、グランマが母へ結婚祝いに送ったアーミッシュキルトだ。
HuffPost Japan

私は日本生まれ、日本育ち。

もっと細かく言えば、日本生まれ・日本育ちの母と、日本生まれ・日本育ちの父の元で育った。国籍は、日本だ。

自分の国籍に疑問を感じたことや、嫌悪感を感じさせられたことは一度もない。

ただ、少し広いレンジから私自身とつながっている家族たちを眺めてみると、ルーツやバックグラウンドは「日本」だけではない。

日本人の父親が2人、日本人と中国人の2人の母がいる。

日本人の祖父母と、アメリカ人の祖父母がいる。

そして、4人兄妹で私は上から2番目。

母は実父と26年前に離婚した。実父は15年前ほどに中国人の奥さんと再婚して、今中国の大連で暮らしている。ふたりには10才の息子がいる。彼は私の弟にあたる。

母は継父と22年前に再婚した。私が16才のとき、両親の間に娘が生まれた。彼女が私の妹。

継父は母と再婚する前に離婚していて、私よりひとつ上の娘がいる。それが広域でみたときの私の姉だ。一度も会ったことはない。

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昨年、実父と25年ぶりに再会した大連。
えるあき

アメリカ人の祖父母は、母が高校時代、留学先でお世話になったホストファミリーだ。

彼らは専門機関に所属せずに母を受け入れたため、彼らの元にきたのは後にも先にも母と母の妹だけだ。

母はこの一家のことを「私に家族の愛をくれた人」と説明する。幼いときに父親を失った彼女にとって、実の両親よりも愛を感じたということだと思う。

母は辛いことがあると必ず彼らのもとへ帰る。そして、回復して日本に戻ってくるのだ。

私が彼らと初めてあったのは生後7カ月のとき。生まれたときからずっと彼らは私の「アメリカのグランマとグランパ」で、彼ら家族は私のことを「グランドドーター」と呼ぶ。

一緒に買い物へ行けば、「うちの孫!大きくなったでしょ」と店員に話しかける。そして相手は私をみて「あら〜、もうガールじゃないくてレディね!!」と笑顔を見せる。

私も何か辛いことがあったり、精神的に限界を感じたりすることがあると、彼らのもとに帰る。

「行く」のではなく、「帰る」。

だって、誰よりも安心感を与えてくれて、どんな場所よりもリラックスできる場所だからだ。人はそんな場所に戻りたくなるとき「帰る」と表現するはずだ。

私がこういう話をすると、必ず誰かが「そんなの本物じゃない」とか「嘘つきだ」という人がでてくる。

約1年前、Ask.FMという匿名の質問投稿サイトを通じ、こんな質問が投げかけられた。

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AskFM
ask.fmより

受け取ったとき、どうしても、腑に落ちなかった。

だって、「本物ってなに?」

「家族ぶってる」というならば、家族ぶらない家族とはどういうものなの?

離婚して再婚して得た家族は偽物なの?

血のつながらない関係は本物にはなれないのか。

アメリカの祖父母から美味しいミートソースパスタの作り方、ベッドメイキングのやり方、人を愛するということを教わった。

愛していると思ったときには相手の目を見て愛していると伝えること、言葉で伝えるのが恥ずかしかったら手紙を書く。手紙の最後には「この胸いっぱいの愛とともに」と一言添えることーー。

アメリカの家族から受けた、こうした教えから、私は仕事ですれ違いが増えたとき、夫に毎晩手紙を書いた。旅行に行けば、旅先でも手紙を書いた。

前職で心を病んでしまい、髪の毛を失った。

そのとき誰よりも助けてくれたのが、アメリカの祖父母だった。

祖母は「私よりあなたのほうが髪の毛ないけど、若さってずるいわ。だってキュートなんだもん」と言って、抱きしめてくれた。

祖父は「頑張ることだけが美しさじゃないんだよ。美しい人は顔にトマトソースが付いてても美しいんだから」と私の顔を拭いてくれた。

彼らの優しさに涙していると、叔父は私を膝にのせ「本当だったら抱っこしてあげたいけど、もうベイビーじゃないし、重いし腰にくるから」と抱きしめてくれた。

アメリカの家族だけじゃない、それぞれが私に与えてくれた愛や知識や教養は、全部今の私を作り上げている。

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アメリカの叔父が「この頃から笑顔が変わってないね」とみせてくれた私の写真。1歳前の私が座っているのは、グランマが母へ結婚祝いに送ったアーミッシュキルトだ。
えるあき

これが私のルーツで、私を語る上で、挙げた家族は全員、誰が欠けても成立しないのだ。

ASK.FMにあった「台湾」はきっと香港のことだろう。

14才のとき、イギリスに留学していた。そこで仲良くなった香港人の友人たちと、ずっと交流を続けている。

年上の彼らは私を「妹」と呼び、お互いに香港と日本を行き来して、同じ時間を過ごしている。

私が香港にいけば「日本のハーガオ(蝦餃子)じゃ、満足できないでしょ」と、食い倒れに付き合ってくれる。お腹いっぱいになったら、私のホテルの部屋で仕事や家族、これからの将来について夜通し話す。

離れている時間も、私が不妊や扁桃炎に悩んでいると知れば「こっちにこういう漢方があるよ」と教えてくれる。

今年の夏に妊娠の報告をした。「赤ちゃんができたの」とメッセージを送ると、すぐに電話がかかってきてで泣いて喜んでくれいた。

妊娠の報告から1週間ほど経ったある日、香港の友人のInstagramをみると、見たことのある景色が載っていた。

思わず「え、東京にいるの?」とメッセージを送ると、返事が来た。

「そうだよ!!おめでとうって言いにきたよ!!」

サプライズ訪問の翌日、私と夫とみんなで焼き鳥を食べた。

「ねえ、生まれたら連絡して絶対」

「もちろん」

「やっぱり陣痛きたら教えて?その連絡と同時に空港に行くから」

「うそでしょ笑 それはおもしろすぎる」

彼らは友人だけど、私のルーツの1つだ。誰がなんといおうと、彼らもアメリカの家族のことも、私は「恥ずかしい」なんて思ってない。

彼らのことを心から大切に思う自分のことも、「恥ずかしい」なんて思わない。

だって、そんなふうに自分を恥じるのは、彼らにすごく失礼だからだ。

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香港の友人の結婚式にて
えるあき

私はこんな風に様々な家庭の真ん中で育ってきた。

もし私が日系人だったら、もし私が白人の養子だったら、あんな質問がきたらすごく悲しいはずだ。すごく傷つくはずだ。

見た目が外国人であれば日本国籍でも"ガイジン"だし、見た目が日本人だったら、外国籍でも"ニホンジン"。

理解できないからって蓋をするんじゃなくて、否定するんじゃなくて、一つの小さなデータとして頭に置いてもらえるとすごく嬉しい。

ハーフだから、日系人だから、日本人だから...。

両親が揃っていないから、血の繋がりの無い関係だから...。

ぜんぶひっくるめて、人は皆真ん中で生きている。

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えるあき

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