西アフリカで感染が急拡大しているエボラ出血熱は、10月16日現在で感染者数が約9000人に上った。アメリカやスペインで治療に当たっていた医療関係者に二次感染したことが判明。世界的に感染が広がることも懸念されている。実際にはどんな病気なのか。その症状と基本的な知識をおさらいしてみよう。
10月10日の世界保健機関(WHO)の発表を元に、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が作成した感染マップ
■全身から出血して死に至るケースも
エボラ出血熱はエボラウイルスが引き起こす熱病で、野生動物の体液に直接触れることで感染する。エボラウイルスは、自然界ではオオコウモリ科のコウモリがウイルスの宿主となっていると考えられている。コウモリに感染しているときは無害だが、他の生物に入り込むと宿主を殺してしまうほどの毒性を発揮する。
エボラ出血熱は人から人へ感染することで、集団感染が発生する。集団感染した場合の致死率は最大で90%にも達したが、現在は対症療法が行われており、実際の致死率は60%だ。
感染から発症するまでの期間は2日から21日程度。その症状は初期にはインフルエンザに似ており、突然の発熱、強い脱力感、筋肉痛、頭痛、喉の痛みなど。その後、嘔吐、下痢、発疹、肝機能および腎機能の異常が起き、終末期には出血性ショックで臓器不全で死に至る。目や耳など全身から出血するケースで知られているが、実際には2割程度。その段階に達するまでに死亡する人や歯茎やあざからのみ出血する人も多い。
1976年の同時期に、アフリカのスーダンとザイール(現:コンゴ民主共和国)で、初めて病気が確認された。最初に感染した男性の出身地であるザイールのエボラ川から「エボラ出血熱」と名付けられた。1976年から2014年8月時点に至るまで、20回を超える集団感染が発生しており、2014年の大流行では1月のギニアを皮切りに隣国にも感染が広がった。
世界保健機関(WHO)は10月15日、感染または感染の疑いのある人は、ギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリア、セネガルの西アフリカ5カ国、それにアメリカとスペインを加えた7か国で8997人に上った。このうち4493人が死亡したと発表している。患者数は毎週1000人のペースで増えているが、封じ込めできなければ最大で現在の10倍にあたる毎週1万人に膨らむ可能性もある。
現時点で承認されたワクチンや治療薬は存在しない。ただし、イギリスの製薬会社が開発した実験段階のワクチンの臨床試験が2014年内に始まり、2015年1月にも使用開始される見込みだ。
■アメリカとスペインでも二次感染、医療機関での感染防止が課題
アメリカとスペインでエボラ出血熱の患者の治療に当たっていた看護師の女性が、防護服などを着用していたにもかかわらず相次いでウイルスに感染した。防護服を脱ぐ際などに、付着した体液に触れてしまった可能性があると見られており、医療機関内での感染をどう防ぐのかが大きな課題となっている。
AP通信によれば、この看護師はニナ・ファムさん(26)。防護服を着て治療に当たったが、脱いだ際に付着した体液に触れてしまった可能性があるという。また、男性が人工透析器や人工呼吸器を必要としたため、体液に触れる危険が高まったとの見方もある。
スペインの首都マドリードでも6日、リベリアとシエラレオネで感染した神父2人を受け入れたカルロス3世病院の女性看護師テレサ・ロメロさん(44)が感染した。地元紙によると、ロメロさんは9月24日、隔離された病室に入り、シーツやおむつを交換。「病室を出て防護服を脱ぐ際に、使用した手袋で顔を触ってしまった気がする」と話しているという。
(エボラ出血熱:防護すきだらけ 欧米で2次感染 - 毎日新聞 2014/10/14 22:49)
シエラレオネでエボラ治療で活動中のスペイン人医師ホセ・マリア・エチェバリアさんは、ハフィントンポスト・スペイン版にブログを寄稿した。現在使われている防護服の不備を解消し、万全な予防対策が取られない限り、感染の拡大は食い止められないことを警告した。
■日本政府は西アフリカ3カ国への「不要不急の渡航の延期」を推奨
日本の外務省は9月30日に発表した渡航情報の中で、西アフリカで感染が拡大しているリベリア・ギニア・シエラレオネの3カ国について、「感染症危険情報」を発令。渡航者には「不要不急の渡航」の延期をするように要請している。
《渡航者向け》
「不要不急の渡航は延期してください。一旦入国しても、商業便の運航停止などにより、出国できなくなる可能性があることに留意してください。」
《在留邦人向け》
「商業便の運航停止などにより、出国できなくなる可能性及び現地で十分な医療が受けられなくなる可能性があります。これらを踏まえ、早めの退避を検討してください。」
「帰国に際しては、経由地及び日本国内の空港等で停留される可能性がありますので留意してください。」
(海外安全ホームページ: 広域情報詳細 2014/9/30)
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