"We are Orlando" オーランド乱射事件

銃乱射事件の犠牲者のための寄付集めのショー"We are Orlando"が有志のボストンクイーンたちによって行われた。
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6月20日にボストンにあるドラァッグクイーンバー ジャックスキャバレーで、6月12日未明にフロリダ州オーランドゲイクラブ、Pulseナイトクラブでおきた銃乱射事件の犠牲者のための寄付集めのショー"We are Orlando" が有志のボストンクイーンたちによって行われた。 入場10ドル、チップはすべて犠牲者のためにフロリダEQUIALITY に寄付される。

ベテランから新人、22人のボストンクイーンがパフォーマンスを行い、観客は老若男女で満員だった。 私はボランティアでショーの撮影をしたのだが、20日のジャックキャバレーは普段と感じが違った。 華やかなドラァッグショー、お酒の場独特の喧騒は同じだが、観客、パフォームするドラァッグクイーン達の眼が違う。 笑顔だが、この場所にいること、この空間を共有していることに対する切実なまでの切迫感と真剣さを皆から感じた。

ゲイバー、ゲイクラブはよくLGBTの中でセーフゾーンと言われる。 それは差別される恐れを忘れ自由に自分自身でいられる場所。

アメリカのドラァッグクイーンの大御所ルーポールはオーランド乱射事件のあと、

"As gay people we get to choose our families, and my chosen family includes millions of brave men and women across this country and around the world,...Don't fuck with my family."

(訳:私たちゲイは自分たちで"家族"を選ぶの。私の家族は世界中にいる勇敢な同志たち。私の家族に何かしたら承知しないわよ。)といった。

ここで彼のいう"家族"とは血縁でつながっている家族ではなく、つらい時も幸せな時もお互いを支えあい、サポートしあう"家族"である。

乱射事件の49人の犠牲者の一人、Pulse のバウンサーだったKJ Morrisはボストンでドラァッグキングとして活動していたことがあり、多くのボストンクイーンにとって友人であった。 私の友人でもあるボストンクイーンのフィーナは、K J Morris (友人たちはキムと呼んでいた)の友人であり、乱射事件のニュースを知ったあと12日のソーシャルメディアに下記の言葉を書き込んだ。

"Today we must stand a little taller for those who can no longer. It is the closing day for Boston pride week and definitely a somber one. Nightclubs have been my home for 14 years and tonight I just want to be with family.

"Do not go gentle into that good night.

Rage, rage against the dying of the light."

(訳)今日私たちはすごしだけ胸を張って立ち上ろう。 もうたつことのできない人たちのために。 今日はボストンのプライドウィークの最終日であり、暗い日だ。 この14年間、ナイトクラブは私のホームだった。 そして今夜もホームでただ家族と一緒にいたい。

"静かによき夜の中にいってはいけない。

怒れ、消えていく光に激しく怒るのだ" 

{ウェールズ出身の詩人ディラントーマスの詩の一部}

オバマ大統領はこの乱射事件を"an act of terror and an act of hate"と述べた。

犯人オマール・マティーンはアフガニスタンから移住していきた両親のもとにニューヨーク州に生まれ、インターネットで自ら過激派と覚醒したホームグロウンテロリストのようだ。 マティーンはこの乱射事件で使われた拳銃とライフルをフロリダ州の銃販売店で合法で購入し、犯行に臨んだようである。

銃販売店によるバックグラウンドチェックは1993年に民主党大統領クリントン政権下に可決されたブレイディー拳銃防止法により義務付けされている。 マティーンは過去にFBIのテロリスト予備軍危険、容疑がかかりの捜査を2度ほど受けた経歴がある。しかし現在の法律ではテロリストの容疑をかけられたことがある過去だけでは、銃購入時のバックグラウンドチェックにはひっかからない。

アメリカは銃社会だ。そして州立連邦なのでアメリカ憲法第2条によって全国民が"武器を保有する権利"を保証され、州によって銃規制はピンからキリまである。

例えば州によっては銃の個人売買、個人売買を基本とした銃器見本市(ガンショー)やインターネットの個人の間での取引、合法販売店(銃販売店は特別な免許が必要である)を通さずに購入する場合、バックグラウンドチェックは義務化されていない。

私の住んでいるマサチューセッツ州では個人売買でも買う側は州発行の銃保持許可証をもっていなくてはいけない。 そして購入から1週間以内に州政府機関に届け出る、という義務が課されている。 高速で40分ほどの隣の州ニューハンプシャーでは個人売買に関してのバックグラウンドチェック義務はない。

銃権利擁護者は「犯罪者は違法で銃を取得するのだから、合法な銃の売買の規制を厳しくするのは筋違いで "国民が武器を保有する権利"アメリカ憲法2条の侵害だ」と抗議をする。 犯罪者は違法で銃を購入する、たしかにそういうケースは多いのかもしれない。 しかし今回のオーランド乱射事件は合法で購入された銃で無差別大量殺人が行われた。 アメリカには銃が溢れすぎていると思う。

今年の1月にニューハンプシャー州プライマリー選挙の直前、共和党超保守派テッド・クルズ氏は雪のニューハンプシャー州の小さな町の雑貨屋に立ち寄って演説をした。その際この小さな雑貨屋には少なくとも50人以上当時の大統領共和党指名候補者の演説を聞きに来た。

クルズ氏は憲法2条"国民が武器を保有する権利"の擁護で有名な立役者である。 地元の白人青年がテッド・クルズ氏にサインをしてほしいとライフルを持ってきた。 今思い出して玉はこもっていなかったと信じたい。 町全体が夜7時までには就寝してしまいそうな片田舎のサイドウオークでライフルを持って黙って立つ青年の姿は私の眼には異常に映った。

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6月26日オーランド乱射事件から2週間たった日、民主党員が多数を占めるハワイ州知事議会で新たに3つの銃規制法案が立憲された。そのなかでも時に米国初、ハワイ州の銃保持者をFBIのラップバックと呼ばれるデータベースに登録することが可決されたことは注目に値すると思う。 ラップバックデータベースを使えば銃保持者が他州でも米国内でなんらかの犯罪に関与した場合、ハワイの警察と該当地域の警察に連絡が入る仕組みとなる。 ハワイ州政府はこれにより銃保持者の合法性を確認できるとし、地域の安全性を高めると強調した。

全米で3億人以上のメンバーを誇り、多大な政治力をもつナショナルライフルアソシエーション(National Rifle Association: NRA)はこのハワイ州の新たな銃規制案に対し、"ハワイでは銃を購入する、というアメリカ憲法で守られてる権利を執行をすると政府の監視下にはいる"と法案可決に対しての非難をツイートした。

アメリカでの銃規制戦争は続く。

20日にジャックスキャバレーで開催されたショーでクイーンたちは100万円を超える寄付金を募った。 それが多いか少ないかは個人の判断だろう。 ただいえることはあのショーを見に来ていた人の中で100万円を一人で寄付できる人はいなかっただろう。 あの夜ジャックスキャバレーはショーの題名通り、"We are Orlando" オーランドの悲しみと一つだったと思う。

6月は1969年のストーンウォールから始まり、LGBTプライドマンス(プライドの月)だ。 オバマ大統領の親LGBTの方針でアメリカにおけるLGBT運動は追い風を受けて躍進している。 しかしその反動でLGBTに対するヘイトクライムは増加している、という。 そしてヘイトクライムの多くは警察の通報されず、またはヘイトクライムとして取り扱われない場合もある。

私の友人のトランスジェンダーの女性は、リベラルを誇るボストンの地下鉄主要駅の一つで数人の青年に囲まれ、ひどい暴言を吐かれた、とソーシャルメディアに1か月前書き込んだ。

これはLGBTだけの問題ではない。 私は社会が進歩していくバロメータの1つは"インクルージョン"だと思っている。 多くの人にとって住みやすい社会。 反ナチス運動家だったマーティン・ニームラー牧師の有名な詩がある。

"ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった

私は共産主義者ではなかったから

社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった

私は社会民主主義ではなかったから

彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった

私は労働組合員ではなかったから

そして、彼らが私を攻撃したとき

私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった"

時代を通して、迫害される対象は変えられながらニームラー牧師のこの詩は引用され続けてきた。

私は多くの人々にとって住みやすい社会に住みたいし、つくっていくことに貢献したい。 そしてそういう社会を未来に残したいと思う。

ジャックスキャバレーWe Are Orlando ショー

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ベテランクイーン、ベルナ・タービュランス

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犠牲者キムの友人、フィーナ

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米国リアリティTVショー"ルーポールドラァッグレース"の人気クイーン、ジュージュービー。

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Sisters of Perpetual Indulgence ボストン支部によるパフォーマンス