日本初の女子プロサッカーリーグ「WE(Women Empowerment)リーグ」は今月6日に、多様性のある社会の実現を目指す「WE ACTION」のキックオフミーティングをオンラインで開催。
パートナー企業をはじめとした多様なステークホルダーとともに、社会課題に取り組むことを表明した。
「世界一アクティブな女性コミュニティへ」ジェンダー平等の機運高める
WE ACTIONキックオフミーティングには、WEリーグ 岡島喜久子チェアとパートナー企業の代表者、そして日本NPOセンター 代表理事/立教大学教授 萩原なつ子さんが登壇。
「世界一アクティブな女性コミュニティへ」というビジョンを掲げるWE ACTIONの概要や抱負などが語られた。
開会の挨拶で岡島チェアは、日本のジェンダー平等が「世界から遅れている」現状に触れ、その不平等を解消するために「パートナー企業とともに、まずはコミュニティをつくるところから始めていきたい」と力説。
さらに、将来的には教育機関や他のスポーツ団体とともに連携したい意思を示し、次のように呼びかけた。
「東京2020オリンピックが『多様性と調和』というビジョンを掲げたことで、ジェンダー平等の機運がすでに生まれています。私たちはまさに、その“渦”のスタート地点にいます。
初めは小さな渦かもしれませんが、私たち皆の力でどんどん大きくしていけると思っています。WEアクションの渦を、今日ここから大きくする仲間になってください」
パートナーシップで「スポーツに誰もが参加できる社会」を目指す
一方、WEリーグのタイトルパートナーに就任した株式会社ウェブシャーク(魔法のソファ「Yogibo」などを展開)の岸村取締役は、WE ACTIONキックオフに際して次のように抱負を語った。
「当社は女性のさらなる活躍と、その活躍を証明できる場が社会に必要だと考えています。まさにそれらを体現するWEリーグをサポートすることで、ジェンダーの枠を超えて一人ひとりが輝く社会の実現に向けた取り組みを推進していきたい」
同社はWE ACTIONの一環として、聴覚や視覚などの感覚過敏の症状がある人が落ち着けるセンサリールームをスポーツスタジオに導入するという。センサリールームの普及・啓発を通して「スポーツや文化活動に誰もが参加できる社会の実現を目指したい」と意気込んだ。
SDGs達成には「ジェンダー平等」と「女性のエンパワーメント」が必須
WEリーグは企業とのパートナーシップに留まらず、日本NPOセンターとも協働。WE ACTIONの本年度の目標でもある、日本社会におけるジェンダー課題の発見に向けて、横の連携を強めていく狙いだ。
ミーティングの後半には、日本NPOセンター萩原代表理事によるジェンダー講義を実施。荻原代表理事はSDGsの全体目標「すべての人々の人権を実現し、ジェンダー平等とすべての女性のエンパワーメントを達成することを目指す(前文)」に触れ、WEリーグが掲げる目標との共通点を指摘した。
「まさにSDGsの17目標を達成するためには、ジェンダー平等の実現と女性のエンパワーメントが必須である」と熱弁し、パートナー企業各社へ日本におけるジェンダー課題への理解を改めて促した。
「さまざまな視点からジェンダー課題を語ることで、平等に近づける」
岡島チェアはミーティング終了後の個別取材において、WE ACTIONキックオフミーティングを次のように評価した。
「WEリーグの社会的意義を広く伝えられたと思います。また、パートナー企業が一堂に会する場をつくることで、企業間の連携を強化するきっかけにもなったと考えています」
WE ACTIONでは今後、パートナー企業各社から「10年後に会社をひっぱっていくような、ジェンダーの異なる社員2名」を募り、ミーティングを通してコミュニティを形成していくという。この募集要項には、WEリーグのどのような思いが込められているのか。
「社会課題の解決には、時間がかかります。なので、当事者として選手とともにジェンダー平等を実現していく。そんな未来を担う世代の方々に参加してもらいたいと考えました。
実は、『ジェンダーの異なる』という表現は、もともと『男女』で考えていたんです。しかし、リーグの運営メンバーや選手と議論を重ねるなかで、性的マイノリティの方々の視点が欠けていることに気づき、表現を再考しました。
女性だけでなく、男性の視点も必要。そして性的マイノリティの視点も絶対に必要です。さまざまな視点からジェンダーを取り巻く課題を語ることで、初めて平等に近づけると考えています」
「スポーツの明るさを届けたい」シングルマザーの支援も視野に
一方、WEリーグ(正式名称:Women Empowerment League)として、女性特有の課題にも取り組みたい姿勢を示した。
「私たちには『女性』というキーワードがあります。ですので将来的には、女性のなかでも社会的な立場が弱く、とくに支援を必要とするシングルマザーの貧困問題にも取り組みたい。
たとえば、選手とオークションイベントを開催し、その売り上げを支援団体に寄付する。または、スタジアム運営において、シングルマザーを対象にした雇用をつくるなど。さまざまなアプローチが考えられます。
『発展途上国と比べると、日本人女性の貧困は大したことない』といった声が聞かれることもあります(※)。ですがリーグとしては、シングルマザーをはじめ困難を抱える方々にも、スポーツの明るさを届けたいと思っています」
「ジェンダー平等の渦を大きく」業界を超えた連携で、取り組みを加速
最後に改めて今後に向けた抱負を聞いた。
「私たちには、日本のジェンダー平等を推し進めるという大きな目標があります。しかしそれは、一リーグの力だけで解決できる課題ではありません。
だからこそ、女子サッカーをサポートすると決断してくれたパートナー企業の声を吸い上げて発信し、どんどんジェンダー平等の渦を大きくしていく。
今後は、自治体や政府、国際機関や教育・研究機関をはじめとした多様なステークホルダーもその渦に巻き込み、仲間を増やしていきたい」
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