2015年12月3日から8日まで、インドネシアのバリで、WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の第12回年次会合が開催されています。この会議は中西部太平洋で漁獲されるマグロ類の資源保護について、加盟する漁業関係各国が集まり、そのための施策を話し合うもの。しかし、2015年に開催されてきた一連のWCPFC関連会合は成果を出せておらず、太平洋クロマグロの資源回復に向けた確かな道のりは、まだ見えていません。
中西部太平洋のまぐろ資源をめぐって
メバチ、キハダ、カツオなど、日本人の食卓を彩るカツオ・マグロ類が、最も多く生産されている海域、中西部太平洋。
これらの魚は、いずれも海の生態系のトップに位置する、海洋環境の指標ともなる生物です。
また、多くの島嶼国にとっては、国の経済成長を支える大切な資源となっています。
このマグロ類の資源管理について話し合う国際会合、「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」の第12回年次会合が、2015年12月3から8日まで、インドネシアのバリで開催されています。
熱帯性マグロ(メバチ・キハダ・カツオ)について
WCPFCがこれまで採択してきた保全管理措置は、メバチの保全を達成するには不十分な内容でした。
たとえばその一例として、漁獲の際に人工の浮き漁礁などを使ってマグロを集める集魚装置(FADs)に関する措置があります。
こうした装置は利用の仕方によって、乱獲や混獲(獲る必要のない魚や海鳥までも捕獲してしまうこと)を引き起こしており、モニタリング調査の積極的な改善や研究が求められてきました。
WCPFCには、集魚装置が及ぼす影響について理解を深め、そのための研究を支援する措置を取ることが求められます。
またWCPFCは、メバチの適切な保全管理措置を達成するため、すべての漁法について、効果的で実施可能な漁獲削減を、必ず行なわねばなりません。
そしてさらに重要なこととして、WCPFCが採択する措置は、どの内容についても、その効果を計測するための、綿密なモニタリング調査や管理措置を行なう必要があります。
WWFの要望
これらの一連の課題について、WWFは、WCPFCに対し、以下のことを求めています。
- 集魚装置(FADs)のさらなる研究・モニタリング調査を確立し、支援すること
- 利用可能な最良の科学的情報に基づき、メバチの保全を達成するために必要となる漁獲削減の水準を決定するための、開かれた、透明性のある審議プロセスを採ること
- メバチの死亡を大幅に減少させるために、現行の熱帯性マグロに関する保全管理措置を見直すこと
さらに、次の項目についても要望を行なっています。
【太平洋クロマグロ】
資源枯渇が心配される太平洋クロマグロ(本まぐろ)について、WWFは、WCPFCに対し、最良の科学的情報に基づいて、加入量の崩壊の危険性を減らし、産卵可能な親魚が回復するよう、漁獲を減らす早急な行動を求めています。もし、WCPFCが十分な保全管理措置を採択できなければ、近い将来、禁漁を検討する必要が出る可能性があります。
【漁業監視プログラム】
漁業監視プログラムについて、監視員の処遇の改善が必要です。
このプログラムは、漁船でモニタリング調査を行ない、監視員が目撃したことを評価し、報告するもので、漁業資源や海洋環境の健全性についての理解を促進します。さらに、船上でルールが確実に守られているかを監視し、違反があれば報告するなど、漁業管理上、重要な役割を担っています。
しかし、監視員の健康や安全を保障するための効果的な措置が実施されておらず、監視員に対する脅迫や暴行、さらには監視員が行方不明になる事故・事件の発生が報告されています。そのため、早急な処遇の改善が必要です。
WWFは、WCPFCを含む全ての地域漁業管理機関に対し、国際的な漁業監視員の権利章典(International Observer Bill of Rights)を実施することで、監視員の健康と安全を保障する手続きを採択するよう求めます。さらに、監視員をめぐるいかなる事件についても、地域漁業管理機関の加盟国に対し、報告の義務を課すことを強く求めます。