今、中西部太平洋で指摘されている、マグロ類の資源枯渇。特に太平洋クロマグロ(本まぐろ)の資源量は、すでに96%が失われたとの報告があり、緊急の対応が必要とされています。この問題を解決するため、長期的な目標と科学的な根拠に基づいた資源回復計画を話し合う国際会議が、2014 年9 月1日から4 日まで福岡で開催されます。今回行なわれる太平洋クロマグロ未成魚の大幅な漁獲枠削減提案に、各国政府は合意できるのか。会議の行方が注目されます。
「メジ」「ヨコワ」の漁獲削減は合意されるか?
現在、太平洋では乱獲によるクロマグロ資源の深刻な枯渇が懸念されています。
資源量を評価している北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)は、すでに初期資源(漁業が開始される以前の推定資源量)の96%が失われてしまったと報告。
日本近海を含めた太平洋北部でマグロ漁を操業する各国の政府は、マグロの漁獲枠の縮小と、適切な漁業管理の実施が求められてきました。
この問題を検討する国際機関、「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」の第10 回北小委員会の会合が、2014 年9 月1日から4 日まで九州の福岡で開催されます。
日本をはじめ9つの国と地域の政府代表が集う今回の会議では、特に北小委員会事務局により行なわれる太平洋クロマグロ未成魚の大幅な漁獲枠削減提案に、各国政府が合意できるかどうかが注目されています。
科学委員会の指摘を受けて行なわれるこの提言は、「メジ」「ヨコワ」といった呼称でも知られる、太平洋クロマグロの未成魚の国別の漁獲枠を、「基準年(2002~2004年の平均)の50%に抑える」よう求めるもの。
これに対し、日本政府は以前から積極的に合意の意志を表明してきましたが、2013年まで韓国が太平洋クロマグロの資源管理措置を留保してきたため、未成魚の漁獲半減を含めWCPFCとしての合意が得られるかは、いまだ不透明な状況です。
日本政府は今回の会合で、親魚の漁獲枠についても、基準年と同レベル以下まで削減すべきことを提案するとみられており、これに各国が合意するかどうかも注目されます。
太平洋クロマグロの危機を救えるか
オブザーバーとして参加が認められているWWFは、今回の北小委員会の会合開催にあたり、各国政府に対して、海の生態系の一部をになうマグロ、カジキ類の保全と、その持続可能な利用の確立を強く求めています。
とりわけ、漁獲枠の削減については、現在、漁獲されている太平洋クロマグロの97%以上が、まだ産卵できない未成魚であること、さらに、産卵可能な成魚が著しく減少していることから、未成魚、成魚ともに、緊急に取り組む必要があると考えています。
さらにWWFでは、マグロのトレーサビリティーを確立する上で必要な「漁獲証明制度」の確立と、資源の減少や漁獲圧増大の判断根拠となる「管理基準値」の導入も各国に呼びかけています。
これらは以前からWCPFCの会合で議論されてきた内容ですが、現在までのところ明確な実現をみておらず、科学的な検証に基づいた保全管理の推進を妨げる一因になっています。
太平洋クロマグロを守りながら、その持続可能な形での漁業を継続してゆくためには、WWFはこれらの施策全てが必要なものであると考えています。
もし、これらがWCPFCで合意されない場合は、今後、一時全面禁漁といった、より厳格な保護対策の実施を、各国は求められることになるでしょう。
注目される日本の動向
今回のホスト国である日本政府は、この会議の開催にあたっては、すでに漁獲枠の削減などについて、重要な内容を含めた合意・提案の意志を明らかにするなど、積極的な姿勢を示しています。
何より日本は今も、太平洋クロマグロの最大の消費国であり輸入国。漁獲削減の合意を留保してきた韓国の漁獲したマグロも、ほぼ全てが日本に輸出されています。
国際会議の場で、そのリーダーシップがどこまで発揮されるか、関係諸国がその動きに注目しています。
WWFとしても、北小委員会における各国の合意形成に向けた、日本政府の尽力を期待しています。
今回の北小委員会会合に対するWWFの要望
- 太平洋クロマグロの長期的な資源回復計画、限界/目標管理基準値およびに漁獲管理方策を採用すること
- 太平洋クロマグロの未成魚漁獲量を、2002-04年平均から50%削減すること
- 太平洋クロマグロの成魚漁獲量を、2002-04年平均を超過しないよう制限すること
- 太平洋クロマグロにおいて漁獲証明制度を導入し、漁獲活動のモニタリングと管理強化、トレーサビリティーを確立すること
- 明確かつ科学に基づいた管理措置が完全に履行されない場合は、太平洋クロマグロの一時禁漁を勧告すること