カナダのマニトバ州ウィニペグのシンクロ・チーム(アーティスティック・スイミング=旧種目名:シンクロナイズド・スイミング)は、強豪ではないかもしれない。しかし「最高の父親賞」であれば、メダル候補は間違いないだろう。
アクティカ・シンクロ・クラブで、マニトバ州で初となる男性メンバーだけの「アクティカ・シンクロ男子チーム」が発足した。チームの11人のメンバーは、同クラブに所属する女性アスリートの父親と夫のみで構成されている。
彼らは5月25日に行われるクラブ10周年イベントで、クイーンの名曲「ウィ・ウィル・ロック・ユー」に乗せて観客を前に演技を発表する予定だ。目的はクラブの活動資金の調達と同スポーツに励む娘や妻の応援、そして男子選手の参加を促し、このスポーツの知名度を上げるためだ。
ちなみに男性のアーティスティック・スイミングはオリンピックではまだ認められていないものの、国際大会レベルであれば男女混合デュエットで参加が可能である。
今回シンクロ男子チームを指導するヘッド・コーチのホリー・ヒャルターソンさんはハフポスト・カナダ版に「彼らのアイデアは本当に素晴らしいと思いました」と話した。そして、「チームメンバーの1人は私の夫なの」と笑いながら付け加えた。
「彼らがシンクロを披露できるだけでなく、女子チームを支える男性の存在を知ってもらう素晴らしい機会だと思います。いつも娘たちをプールまで送り迎えし、練習中はプールサイドで座って観ていてくれる。それなのに彼らは十分に評価されていません」
女子チームに2人の娘が所属するクリスチャン・ゴセリンさんは、クラブの10周年を祝い、娘たちをサポートし、男子選手の同スポーツへの参加を促す案を考えた結果、男子シンクロチーム結成にたどり着いたという。
「これで私が求めている要素が全て満たされるんです」と地元紙に話した。
また、アーティスティック・スイミングについて「非常にハードなスポーツです」とTV局CBDに語った。「『息を止めたまま400メートルを走るようなもの』聞いた事がありますが、まさにその通りです」
ヒャルターソンコーチは、現在チームは週に1度トレーニングに励んでおり、その様子は真剣そのものだと話した。「彼らはシンクロというスポーツを決して茶化したり見下したりすることはありません。ルーティンやカウンティングなど、一生懸命やっています」
想像するのは難しいかもしれないが、彼らの演技はなかなかイケている。
「確実に良くなってきています。本当に一生懸命練習に励んでいます」
しかしながら、男性にシンクロを教えるということは予想外のハードルがあるようだ。男性の浮遊力は女性とは異なるため、メンバーのほとんどが、足の浮力を保つのに苦労してしまうという。また、地上練習(地上で体の動きを繰り返すことにより体に覚えさせる)では、彼らは女子とは違って背が高いため、上部の動きをチェックしづらく、テーブルや椅子などの高い場所に立って指導しなければならないという。
さらには、通常のノーズ・クリップ(鼻栓)は彼らにサイズが合わないという問題にも直面した。これは長い間水中で上下逆さまになっているスポーツでは大問題だ。「初めの練習では通常のノーズ・クリップを使っていたため非常に苦労しました。そのため彼らに合った大きなノーズ・クリップを注文しました」
「シンクロは華やかで笑顔だけという固定観念を壊したいです。決して簡単な競技ではありません。これはスポーツなのです。この競技に挑むには大きな運動能力と体力が必要なのです」とヒャルターソンコーチは話した。
「そして今、この力強い男性たちが『僕らは娘を支えるためなら何でもやる。そして、シンクロは見た目よりもずっと難しいんだ!』という思いを見せてくれています」
ハフポストUS版を翻訳、編集しました。