フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル排出ガス不正問題は、欧州で販売されて来た他のエンジンにも不正ソフトウェアが搭載されている可能性が出てきたことで、さらに多くのクルマを巻き込んで大きくなる見通しだ。VWは、EURO5(2009年に導入されたEUが定める自動車による大気汚染物質の排出基準)に適合したEA288型エンジンの初期の製品にも、検査をすり抜ける不正ソフトウェアが搭載されていないか、チェックする必要があるとしていると、自動車情報サイト『Automotive News』が伝えている。ドイツ当局は、最新のEURO6(2014年導入)に適合した仕様のエンジンは問題ないことを確認している。
VWは当初、全世界で販売されたEA189型エンジンを搭載する1,100万台の車両に不正ソフトが搭載されていると語っており、欧州では最近、販売禁止命令が出された。しかし、その後継であるEA288型エンジンを搭載するディーゼル車にも不正ソフトウェアが搭載されているとしたら、同社が欧州で行なっているリコールに、さらに数百万台が追加対象になる可能性がある。それと同時に、VWは当局から命じられている改修の準備を、2016年1月からドイツで開始するスケジュールに間に合わせなければならないという難局に直面している。ほとんどのモデルは新しいソフトウェアで排出基準に適合できるはずだが、中には、よりコストのかかるハードウェアの変更を必要とするものもあるかもしれない。
欧州では影響の拡大が懸念される一方で、米国でも9月18日以降販売禁止となったVW車に、このEA288型エンジンを搭載するモデルが含まれている。VW広報担当のJeannine Ginivan氏がAutoblogに語ったところによると、このEA288型エンジンは同社が「Generation3」と呼ぶ、2015年モデルの2.0リッターTDIディーゼル車6万7,000台に搭載されているそうだ。米国の検査当局はさらに、VWがエンジンに合わせて調整した不正ソフトウェアを組み込んでいた証拠を得るため、EA288型エンジンを詳しく調べる方針だ。
なお、上述のような報道があった後、VWはEURO5またはEURO6に準拠したEA288は「ディフィート・デバイス(無効化装置)」が搭載されていないことを明確にする公式声明を発表した。ただし、これは欧州におけるケースであり、VWの広報担当者は「米国では、米環境保護局(EPA)および米カリフォルニア州大気資源局(CARB)から当該ディーゼル車の救済措置や認証を得る必要がある」と、Autoblogに語っている。VWの発表した公式声明全文(英語)はこちらをどうぞ。
問題のディーゼル・エンジン搭載車が販売されていない日本でも、「フォルクスワーゲンから皆様へ」と題したお詫びの文章が発表された。さらにVWオーナーの方々には「安心してお乗り頂くため」、12月20日まで、販売店で無料点検を実施中だ。正規販売店以外で購入されたものも含む全てのVW車が対象になるそうなので、VW車にお乗りの方は是非、この機会に愛車を点検し、"安心して"年末を迎えられてはいかがだろう?
フォルクスワーゲン グループ ジャパン 公式サイト:「フォルクスワーゲンから皆様へ」
By Chris Bruce
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
(2015年10月26日 Autoblog日本版「フォルクスワーゲン、排出ガス不正問題で他のディーゼル・エンジンも調査」より転載)
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