VISION2020

ボルボ「サイクリスト検知機能」を搭載、2014年新モデル

公益財団法人の交通事故総合分析センターによる「自動車と自転車との事故についての調査」では、車両進行中の追突事故の致死率は4.7%。出合い頭の事故の0.47%と比較しても約10倍と圧倒的に高く、さらに四輪運転者の事故の要因のうち、「ドライバーの不注意」が約80%と、大部分を占めている。
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The Huffington Post

渋滞中のクルマの脇をスルリと抜けていく自転車や、夜更けの真っ暗な道路の先を走る自転車・・・。誰しも、クルマを運転していてサイクリストの存在にヒヤッとさせられた経験があるのではないだろうか? スポーツに通勤にと、自転車を使うサイクリストが増える一方で、クルマとの接触、衝突の危険性が高まっている。

公益財団法人の交通事故総合分析センターによる「自動車と自転車との事故についての調査」では、車両進行中の追突事故の致死率は4.7%。出合い頭の事故の0.47%と比較しても約10倍と圧倒的に高く、さらに四輪運転者の事故の要因のうち、「ドライバーの不注意」が約80%と、大部分を占めている。

「ボルボの設計の基本は、常に『安全』でなければならない」を信条とし、さらに2020年までにボルボ新車による死亡者・重傷者をゼロにする「ビジョン2020」を掲げて、積極的に安全性の向上への試みを行ってきたボルボ。

2013年8月27日、ボルボ・カー・ジャパンは最新のセーフティ技術「サイクリスト検知機能」を新たに搭載した「歩行者・サイクリスト検知機能付追突回避・軽減フルオートブレーキ システム(ヒューマン・セーフティ)」を発表。「XC90」を除く2014年の全モデルに採用し、この日から販売を開始した。

この「サイクリスト検知機能」は、クルマの時速4km/hから80km/hで作動。自車の前方を同方向に向かって走る自転車を、フロントグリル内に組み込まれたミリ波レーダーやフロントガラスに装着されたデジタルカメラと赤外線レーザーで検知し、不意に自転車が進路変更し自車の前に飛び出してきた場合など、音と光による警告とともに急ブレーキを自動でかけて、事故を防ぐものだ。

ボルボ 「サイクリスト検知機能」

Volvo Cyclist Detection with Full Auto Brake Overview

その仕組みは、車両速度が50km/h以下で、かつ自転車との速度差が15km/h未満の場合には、衝突を“回避”することが可能で、車両速度が80km/hまでの場合には、衝突による被害を“軽減”することができるという。

ただし、この「サイクリスト検知機能」の作動には、地上70cm以上の高さに反射板(リフレクター)が装着されていることが必要。一般的にはこれは大人用の自転車の高さだから、より低い、子どもの自転車にも対応することが待たれるが、まずは心強い一歩が踏み出されたと言っていい。

またさらに根本的なところでは、サイクリスト、ドライバー双方のマナーの徹底や、自転車専用道を普及させるといった、“自転車-自動車間”の事故のリスクを下げるための社会的な変化も必要となってくるだろう。

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ボルボ・カー・ジャパン代表取締役社長 アラン・デッセルス氏

同社のセーフティシステムは、日本では、前方車両への追突を回避する「シティ・セーフティ」が2009年に、車両と歩行者を検知する「ヒューマン・セーフティ」が2011年に開発・搭載されるなど、着実に進化を遂げてきた。今回の「サイクリスト検知機能」の実現によって、ボルボの安全技術は「新しいステージに入った」とボルボ・カー・ジャパン代表取締役社長のアラン・デッセルス氏は語る。

「確かに、欧米に比べ日本では、サイクリスト専用レーンが圧倒的に少ないですし、さらに市街地での人や自転車、クルマの密度も高い。だからこそ、クルマと自転車の関係、クルマと人との関係のどういうところに危険が潜んでいるか? そういう事例や知識を蓄積することができる。それをフィードバックして、我々のセーフティへの取り組みに活かしていくことができるとも考えています」

この発表会にはスウェーデン本社から参加したボルボ・カー・コーポレーションのセーフティエンジニアを務めるヤン・イバーソン氏は、セーフティ部門を担う人物として“ビジョン2020”を牽引する一人。そんな彼のもとでは100人以上のスタッフが技術の開発にあたっているという。さらにボルボは、独自の事故調査隊を持つ数少ない自動車メーカーの一つ。

ボルボ車が関連した事故現場へ調査隊を派遣し、1970年の設置からこれまで、約40,000件以上の事故を調査してきている。「本社近郊でボルボ車が関与する事故が発生すると警察から事故調査隊に連絡が入り、現場調査隊員が出動できるよう常に24時間体制で待機しています。さらにはテスト車両で正面衝突や側面衝突の実験もできるような設備も整えており、こうした一連のデータ蓄積と実験検証のノウハウが積み重なって次のセーフティ技術開発へと繋がるサイクルを生み出しているのです」。

コンピューターによるヴァーチャルなテストだけには終わらない、実際の事故の多角的な「検証」と「実験」を繰り返し行うからこそ、ボルボのセーフティ機能は進化してきたのである。

事実、ボルボの新車が起こす事故のリスクは、1975-79年式と2005-09年式で比較すると5分の1まで低下。「2020年は思っていたより近い。チャレンジングな目標です」とイバーソン氏は笑うものの、2020年の死亡者・重傷者ゼロの達成に向けての歩みは着実に進んでいるようだ。

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セーフティエンジニア ヤン・イバーソン氏

さらに「サイクリスト検知機能」の発表にあわせて、ボルボS60、V60、XC60、V70、XC70、S80 の商品改良を実施し、さらに XC90 の一部仕様を変更し、2014年モデルとして本日より販売すると発表した。

「ボルボ史上最大のマイナーチェンジ」と語るコーポレート・コミュニケーション部ディレクター若林敬市氏の言葉が示す通り、今回の変化は4000箇所以上に及ぶという細部の改良を積み重ねたもの。

60シリーズは、今年の2月に発表・発売したV40シリーズとも共通する「モダン・スカンジナビアン・デザイン」をより強調した仕上がり。フロントバンパー低位置に追加されたLEDライトや、伝統のVシェイプを強調した新ボンネットによってロー&ワイドの端正な顔立ちに、XC60はさらにラグジュアリーで都会的な姿となった。

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コーポレート・コミュニケーション部ディレクター 若林敬市氏

「大小様々なマイナーチェンジを積み上げることで、クルマ全体の印象はがらりと変わったと思います。そんな見た目の印象から、開発チームが捧げてきたクルマへの愛情を感じとっていただけるのではないでしょうか?」と若林氏。

今年1~7月のボルボ車全体の販売台数は10,384台。前年比+22.7%は輸入車全体の+13.8%を上回っており、きわめて堅調。今回のセーフティ機能の向上とリニューアルによってさらに伸びを見せそうだ。

加えて、乗り心地の方も「別物かというほどに」より上質なものへと進化している、と締めくくった。

ボルボが目指す「安全で、楽しいクルマ」。それはわたしたちの誰もが理想とするクルマの姿ではないだろうか。

【みなさまのご意見をお聞かせください】

テクノロジーの進化で、クルマの安全性への関心がとても高まっていますが、自転車・歩行者も含め事故を防ぐためには、個人がマナーやルールを守ることも大切です。安全な社会の実現に向けて、みなさまのアイデアをお聞かせください。

[ インタビュー・構成 阿久根 佐和子 ]

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