Presented by VISION2020

今話題の自動運転システムについて考えてみる

“未来の自動車”という言葉を聞いた時、まっさきに思い浮かぶのが自動運転ではないだろうか。まさか21世紀に入ってから十余年たって、いまだに自らの手でクルマを運転しているなんて、SF映画に親しんでいた子どもの頃の自分が知ったらきっとショックを受けるに違いない。
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“未来の自動車”という言葉を聞いた時、まっさきに思い浮かぶのが自動運転ではないだろうか。まさか21世紀に入ってから十余年たって、いまだに自らの手でクルマを運転しているなんて、SF映画に親しんでいた子どもの頃の自分が知ったらきっとショックを受けるに違いない。

なぜいまだに自動運転が実用化されていないのか。そこには技術的な課題、法整備の問題など、さまざまな要因が絡み合っている。たとえば技術仕様をめぐっては自動車メーカーからのアプローチと、GoogleなどのITベンダーからのアプローチの2つの方向から自動運転の実用化が進められている。

現状どういう段階で、いつぐらいか自動運転が現実になってくるか、そこにどういうメリットがあるか考察してみた。

まず、自動運転先進国である、欧米メーカーの取り組みについて触れたい。

ドイツ車を中心に高速道路や渋滞中の自動運転システムの開発が進み、部分的ではあるが、運転支援システムとして実用化されている。これらと一線を画し、興味深い取り組みを行っているのはスウェーデンのボルボだ。多くの自動車メーカーがドライビング機能の補完・延長線として自動運転技術の開発を行っている中、同社は安全性能の追求という観点からアプローチしている。

その根底にあるのは、2020年までに新しいボルボ車において、交通事故による死亡者や重傷者をゼロにするという安全目標「VISION2020」だ。

同社は2007年よりこの目標を掲げており、すでにドライバーの運転支援を目的とした自動運転機能の一部を他社に先んじて導入開始している。具体的には、前方車両への接近や障害物を感知し、衝突前に自動ブレーキをかけ停止するシティ・セーフティ、車両だけでなく人や自転車の検知もできるヒューマン・セーフティ、ドライバーの好みの速度でスムーズなクルージングを可能にするアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)、電動パワーステアリングで車線維持をアシストする車線逸脱防止支援システムなどは実用化されており、多く同社ユーザーがそのメリットを享受している。

さらに、ドライバー運転支援強化を目的に、本年末に欧州で発売予定の新型ボルボXC90には、ACCにステア・アシスト機能を加えて投入する予定だ。渋滞時に前方の車両が発進すると自動的に追従を開始するほか、路肩や柵などを感知し、道路から逸脱する危険性がある場合には、自動的にステアリングを修正することもできるそうだ。

そしていよいよ次の段階である自律的な自動運転に着手することを発表している。ドライバーがハンドル、アクセル・ブレーキ操作をしなくても車を走行させる、いわゆる自動運転だ。

ボルボはまず「自動駐車」を実用化し、部分的な自動運転を市場に届けようとしている。クルマ自らバレーパーキングを実現するものだ。ドライバーは駐車場の入口でクルマを降り、スマートフォンのアプリで自動駐車機能を起動させる。するとクルマに搭載されたセンサーが駐車スペースを感知し、そこに向かって自動走行し、人の飛び出しがあれば検知して停止し、自ら停車する。クルマをピックアップするときは逆の手順だ。駐車場の入口に立ち、再びアプリを操作するとクルマがやってくるという。ボルボは2014年末に欧州で発表予定の新型車にこの自動ハンドル操作機能を初めて導入する予定だ。

さらには2017年には一般ドライバーも参加する大規模実証実験にトライする予定だ。この実験が2017年までにスウェーデンで行われるというもの。100台のボルボが公道を時速50kmで自動運転するという非常に大規模な実証実験となる予定で、現場は日頃から通勤に使われている道路。中には高速道路や渋滞が頻繁に発生する地点なども含まれているという。

しかもテストに参加するのは一般客というから驚きである。実験に用いられる100台のボルボは、前述の新型ボルボXC90となる予定。このプロジェクトには当然、スウェーデン政府と関係各省、テスト地のイェーテボリ市なども協力。官民が連携の上、ボルボのVISION2020を強力に推進する考えだ。

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安全性の追求と交通事故ゼロを目指す「VISION2020」の実現は、ボルボにとって最優先の任務。自動運転という技術はあくまでもその延長線上にあるものだ。この分野の技術で最先端を進むボルボは、ビジョンの面でも技術の面でもパイオニアと言えるだろう。

日本国内での取り組みは、どうだろうか。

日産自動車は11月、ドライバーが操作しなくても走る「自動運転車」を2020年までに発売すると発表。クルマに搭載した多数のセンサーとカメラが車線や歩行者、信号などの状況を認識し、システムが自動で運転操作を行う「自律運転」を目指している。法規制の整った国から順次、販売する考えを示した。

対するトヨタ自動車は、道路のレーン検知システムと車同士の無線通信を組み合わせた“支援システム”を実験している。車線内であれば、白線から外れずに走行でき、先行車を追従できる仕組みも取り入れるという。渋滞緩和に効果的とみており、2015年にも実用化するとしている。ただしあくまでドライバーをサポートする“支援システム”であり、自動車との協調性を重視し、完全な自動化には慎重な立場だ。

ホンダはヒト型ロボット「ASIMO」で培った技術を応用する。車載カメラで周囲の人の動きを分析し、危険を認識した場合はブレーキを自動でかける。また歩行者が持つスマートフォンに組み込んだ専用ソフトとクルマが通信し、接触を避けるという「協調型安全支援技術」の検証も進めている。発売はやはり2020年をメドとした。自律型を推し進める日産と、協調型で実用化を図るトヨタ・ホンダという構図だ。

意外なのがITベンダーのGoogleである。Webの検索サービスをメイン事業とする同社は、2009年から自動運転技術を開発しており、2012年5月に米国でいち早く公道実験するための免許を取得。同年8月には30万マイル(約48万キロ)を走破したと発表した。自動運転時に事故を一度も起こしておらず、「Googleの自動運転は人間よりも安全でスムーズ」と報道された

Googleは4年後にも自動運転技術を製品化すると表明しているが、まだ実証実験には時間がかかりそうだ。

自動車メーカーもITベンダーも、各社がこぞって自動運転の開発を進めるのは利用者にとって大きなメリットがあるからだ。人間よりも上手に、スムーズに、ミスのない運転が自動で可能になれば、事故は大幅に減少するだろう。

またスムーズな運転は渋滞を緩和させる可能性もある。多くの渋滞が不要なブレーキによって起こることを考慮すると、前の自動車を自動追尾するタイプの自動運転が実現されるだけである程度は渋滞が防げるかもしれない。

さらに自動運転が実用化されれば、高齢者が再び運転席に座れるようになるだろう。視力や聴力が衰えた状態では自ら運転することは難しいが、自動運転であれば問題はないはずだ。自動車を扱える年齢層が広がることで、市場そのものの拡大にも寄与すると考えられる。

現在も通勤で自動車を利用しているビジネスパーソンにとっては、時間の有効活用が何よりのメリットになりそうだ。運転席に座りながら電話をしたり、スマートフォンやタブレット端末を仕様したり、あるいは眠ることも可能かもしれない。自家用車をバスや電車や飛行機のような移動手段として利用できる未来が間もなく来ようとしている。

各社のロードマップを見ると、2015年から部分的な自動運転が製品化され、2020年にはハンドルに触れずに目的地までたどり着ける完全な自動化が進むとみられる。順調にいけば2020年が自動運転元年となりそうだ。

「人が運転している時よりも事故発生率が下がる」という触れ込みの自動運転。まだまだ課題が山積しているが、事故の減少、渋滞の緩和などのメリットは大きく、消費者としてはクルマとの付き合い方そのものが変わっていきそうだ。

こうした一連の動きについて、みなさんのご意見をお聞かせください。