Presented by VISION2020

【鼎談:眞鍋かをりさん×疋田智さん×松浦編集長】クルマと自転車が共存するためには。後編

「自動車vs.自転車」。これから先、ますます深まっていくであろうこの二者の関係をどう捉えていくべきかを考えるべく開催された鼎談の第2回目。疋田智(自転車ツーキニスト)、眞鍋かをり(女優)、そしてハフィントンポスト編集長の松浦茂樹により、啓蒙の重要性が語られていく。
|
Open Image Modal
The Huffington Post

「自動車vs.自転車」。これから先、ますます深まっていくであろうこの二者の関係をどう捉えていくべきかを考えるべく開催された鼎談の後編。疋田智(自転車ツーキニスト)、眞鍋かをり(タレント)、そしてハフィントンポスト編集長の松浦茂樹により、啓蒙の重要性が語られていく。

眞鍋 もし、いま自動車業界が目指しているような安全性の意識が、モータリゼーション全体において当たり前になったら、いつの日か、「昔は不測の事態の事故が多かったらしいよ」といったことが言われるようになるかもしれませんね。実際いまの若い人にしてみたら、「マニュアルってなに?」といった感覚でしょうし。

松浦 オートマは、登場からどれくらいでここまで普及したのでしょうね。普及しはじめたのは、1970年代から80年代にかけてだと思いますが。

Open Image Modal

疋田 初期のオートマは、「急発進するから危ない」とか言われていましたよね。それが進歩を続け今日に至っているところを考えると、オートブレーキシステムが同じような過程をたどることも、十分考えられますよね。

眞鍋 社会全体を見渡すと、30年後くらいには交通事故が激減しているかもしれないですね。

疋田 クルマ会社によるこうした取り組みって、事故防止にはものすごく効果があると思います。あとは、法整備や教育の問題と、インフラの整備ですよね。

松浦 教育という点で自転車とクルマの関係を考えていくと、やはり「自転車も車輌の一部」ということを、疋田さんのようなコアなサイクリストだけではなく、もっと一般ユーザーにまで認識してもらう必要があるのかなと思います。

疋田 ロードバイクに乗っている人もそうですが、信号を守らない人が多いんですよ。これは残念ながら現実です。自転車に乗る人が意識として歩行者の一部だと思っている証拠だと思います。

眞鍋 勘違いということで言うと、自転車でも飲酒運転になるっていう事実は、意外と知られていないですよね。

疋田 たまに、「最近飲酒運転の取り締まりが厳しいので、自転車通勤に変えたんですよ!」って無邪気に言ってくる人がいるのですが、その認識自体間違っている(笑)。

眞鍋 知らないということは、裏を返すと知る機会がなかったということだと思うんです。日本人って、遵法精神が高いというか、言われたことはわりと守るタイプですよね。なのに自転車だけデタラメというのは、やっぱり、「知らない」からなのかなと。

疋田 その通りだと思います。知られていないのは「飲酒運転」などに顕著ですよね。

眞鍋 以前、湘南でレンタサイクルをして、海岸沿いを走っていたことがあるんです。とても暑い日で無性にビールが飲みたくなったのですが、「ちょっと待って、これってもしかしたら違法かも」と思って調べたら、やっぱり自転車の飲酒運転は禁止でした。そうやってたまたま自分で踏み込んで調べたから、知ることができたんです。

疋田 あと、まだ曖昧な存在なのが、ヘルメットです。実は自転車の死亡事故の62%は、頭部の損傷によるものなんです。ヘルメットをかぶっていたら助かったかもしれない人が、それだけいるということです。

松浦 ヘルメットは、視覚的な意味合いもありますよね。ドライバーにしてみると、ヘルメットをかぶっているサイクリストの場合、現時点では「マナーを守る人」という安心感がありますし、今後普及した場合でも、存在感が増すのでより注意を喚起するのかなと。

眞鍋 それはわかっているのですが、でも小径車で近所に行くとき、本気のヘルメットは正直ハードルが高いなぁ。

松浦 確かに機能面でもデザイン面でも、もう少し改良の余地がありそうですね。そういえば、スウェーデンで開発された「見えないヘルメット」が、少し前に話題になりましたね。

Open Image Modal

眞鍋 普段はネックウォーマーに見えるやつですよね! あれのもっとスマートで小型のやつが普及したらいいですね。そういうの、日本人は得意そうですが……。それにしても、クルマのエアバッグにせよ自転車のヘルメットにせよ、自分が事故の時どう守られるか、という視点のものでしたけれど、自分だけではなくまわりも守るという視点が出てきているんですね。これが進化したら、本当に自動運転が実現されるかもしれませんね。そういった外側にも目を向ける姿勢は、とても時代に適っていると思います。

疋田 まわりにも安全のお裾分け、といった感じですかね(笑)。「ビジョン2020」ということですが、2020年というと、ちょうど東京オリンピックの年ですよね。エコを謳ったオリンピックですし、この前のロンドンのときのケースを見ても、これからの7年、より自転車が都市インフラとして普及していくと思います。

松浦 確かに! ロンドンは、ヨーロッパの都市の中でもひときわ自転車政策の面で遅れていましたが、オリンピックと、あとは2005年の地下鉄テロを機に、自転車が都市の重要なインフラとして考えられるようになりましたよね。先日出張でロンドンへ行ったのですが、観光スポットを巡るのにレンタサイクルはすごく便利でしたし、ブルーに塗られた自転車専用レーンは、すごく視認性も高かったです。 

眞鍋 レンタサイクル、利用してみたいんですよ〜。海外の大都市だと、パリやニューヨークにもありますよね。

松浦 日本でも、例えば金沢が「まちのり」という名称でサーヴィスを行っています。1日の基本料金が200円で、30分以内に街中のポートに返すなら無料で乗り継ぎができます。だから例えば、街中のポートを巡って30分以内で自転車を乗り継げば、基本料金だけでずっと街をサイクリングできるわけです。おそらく2020年に向けて、東京にもそのような取り組みが導入される可能性が大いにありますよね。

疋田 ということはつまり、いまよりもっと、クルマと自転車で車道をシェアしていくことになるわけです。そうなったとき、自転車側のマナー違反で事故が増加したら目も当てられません。そうならないためにも、ボルボがこうした安全への明確なビジョンを呈示してくれたのだから、サイクリストにも、意識を変えていく責任があると思います。

松浦 やっぱり、おまわりさんには車道の左側をどんどん走ってもらって、クルマと自転車の共存の方法を自然に身につける環境をすぐにでも整えて欲しいですね。

前編・後編を通して自転車のマナー啓蒙と道路環境の改善が課題として浮き彫りになった今回の鼎談。一方クルマも、自転車を邪魔に思わず、配慮した運転が一層求められるようになるでしょう。

※自転車と自動車が車道をシェアしていくためにどんなことが必要か、あなたの意見をお聞かせください。

眞鍋かをり さん

愛媛県出身。横浜国立大学卒業。大学在学中からタレント活動を始める。

バラエティに加え、ニュース番組のコメンテーターやMC、執筆などマルチに活躍。

2010年C.P.A.チーズプロフェッショナルの資格を取得。現在、Twitterでは約60万人のフォロワー数を誇る。『世界をひとりで歩いてみた~女30にして旅に目覚める~』が祥伝社より12月4日に発売予定。

眞鍋かをり オフィシャルブログ

疋田智 さん

宮崎県出身。NPO法人自転車活用推進研究会理事。学習院大学生涯学習センター・非常勤講師(自転車学)。

「自転車ツーキニスト」という言葉を広めるなど、都市交通の中で自転車を活用することを提案。『だって、自転車しかないじゃない』(朝日文庫)『ものぐさ自転車の悦楽』(マガジンハウス)など、自転車に関する著書多数。

疋田智メールマガジンの「週刊 自転車ツーキニスト