スリムな体型のモデルばかり集まっていた下着ブランド「ヴィクトリアズ・シークレット」が、ついに変わった。プラスサイズのモデルを広告に起用し、多様な体型をうち出し始めたのだ。
「ヴィクトリアズ・シークレット」ののキャンペーンモデルとして新たに起用されたのは、アリ・テート・カトラー。
10月4日、ロンドン発のランジェリーブランド「ブルーベラ」とのコラボレーションラインでモデルを務めることがヴィクトリアズ・シークレットのInstagramで発表された。
サイズ14(日本では15号)のプラスサイズモデルをブランドが起用するのは初めてだという。
カトラーは自身のInstagramで、「10代の頃に憧れていたブランドと一緒に仕事をすることができてすごく嬉しいです。あらゆる身体を持つ人たちにとって、正しい方向に進む大きな一歩です」とコメントしている。
「私たちは特定の人に売り出したい」発言で批判も。変わりはじめたヴィクシー
ブランドは4月にも、従来のモデルよりも少しだけふくよかで、美しいボディラインを持つロレナ・デュランを起用している。
スペイン出身のデュランも、ヴィクトリアズ・シークレットのモデルとして働くことについて、「すごく幸せで、誇りに思っています。多様性の時代がきました」と喜びをつづっている。
ヴィクトリアズ・シークレットの変化が驚きと賞賛をもって受け入れられているのは、ブランドを運営する「エル・ブランズ」の役員が、プラスサイズやトランスジェンダーのモデル起用に消極的な姿勢を明らかにしていたからだ。
2018年11月、同社で最高マーケティング責任者を務めていたエド・ラゼック氏がVOGUEのインタビューで「私たちは特定の人たちに売り出したいだけで、世界全体に売り出したい訳ではない」と発言。
プラスサイズやトランスジェンダーのモデルをファッションショーでは起用しない方針と打ち明け、「『何故ショーでこれをやらないの?』『トランスセクシュアルも起用すべきでは?』って思われるかもしれませんが、その必要はありませんよ」などと話した。
「何故って?ショーはあくまでファンタジーだからです。42分間の特別なエンターテインメントですよ」
ラゼック氏の発言は差別的で不適切だとして、インタビュー掲載後に大きな批判が起きた。ブランドは公式ツイッター上ですぐに謝罪。
10カ月後の2019年8月には、その発言を撤回するかのように、トランスジェンダーのモデルとして活動するヴァレンティナ・サンパイオを起用した。
背景に時代の変化、ボディ・ポジティブ掲げるブランドが成長
エル・ブランズはアメリカ国内で圧倒的な市場シェアを誇っていたが、かつての「女の子の憧れ」がもはや「時代遅れ」であることを示すかのように、近年は伸び悩みが指摘されている。
前述のラゼック氏は1980年代からブランドを支え続けた功労者だが、8月に同社を辞任している。
代わりに頭角を現しているのは、ありのままの体型を賞賛する「ボディ・ポジティブ」の考えに寄り添うブランドだ。
アメリカン・イーグルの「エアリー(aerie)」や、オンラインで一人ひとりの身体にフィットした下着を販売する「サードラブ(ThirdLove)」が若者の関心を集め、売り上げを伸ばし続けている。
女性たちから絶大な支持を集めていたヴィクトリアズ・シークレット。時代に合わせて変化し、顧客離れを防ぐことができるか、その真価が問われている。