女子テニス選手は、コート上で着替えをしてはいけないのだろうか。ある選手の行為が、大きな物議を醸している。
テニスの全米オープンで8月28日、フランスのアリーゼ・コルネ選手が、コート上でシャツを脱いで着直したところ、規律違反を通告された。この判断に性差別ではないかという批判が殺到し、主催者の全米テニス協会が謝罪する事態に発展した。
酷暑ルールに基づいて第2セットと第3セットの間に設けられた10分間の休憩中、コルネ選手は、シャツを後ろ前に着ていたことに気づき、コート上でシャツを脱いで着直した。その際に黒のスポーツブラが見えた。
その行為が、「スポーツ選手らしくない行為」と見なされて、主審から規律違反を通告されたのだ。
この判断に対し、男子選手は暑さをしのぐためにシャツの交換が自由なのに、女性の場合は規律違反とみなされるのは差別ではないかという批判が殺到した。
イギリスのアンディ・マリー選手の母で、元テニスコーチのジュディー・マリーさんは、男女の間に二重基準があるのではないかと疑問を投げかけ、「男子はコート上でシャツを着替えられるのに」とツイートした。
女子テニス協会(WTA)も、WTAではコート上での更衣に関するルールは設けていないとして、「アリーゼは何も間違ったことをしていない」と批判するコメントを発表。規律違反の通告は「アンフェア」だと批判した。
全米テニス協会は、「すべての選手はコートサイドでウエアを交換することが許されており、これは規則違反とは見なされない」「コルネ選手について規則違反とした昨日の判断を申し訳なく思う。再発防止に向け、すでにポリシーの見直しを行った。幸い、コルネ選手に関しては警告にとどまり、さらなる罰則や罰金はなかった」とコメントを発表した。
コルネ選手は「全米テニス協会の謝罪にホッとしている。こんなに大ごとになってるなんて今朝起きたときには思ってもみなかった」と語った。コルネ自身は、大きな問題にするつもりはないようで、「昨日のことも1人の間違いであって、ツアーや協会、全米オープンを巻き込みたくはない。主審だってあまりに暑かったから正常な判断ができなかったんでしょう」と寛容な姿勢を示した。
テニスは、混合ダブルス以外は男女で戦うことはないが、男女の賞金格差や、女性選手に対する外見やウェアの批評など、ジェンダーにおける不平等の歴史がある。
▪️女性選手とウェア
女子選手とウェアとめぐっては、5月に開かれたテニスの全仏オープンで、セリーナ・ウィリアムスが「キャットスーツ」を着用し、話題を呼んだ。
ウィリアムズは、血栓予防のために特殊なウェアを着用したが、フランステニス連盟の ベルナール・ジウディセリ会長は「今後は認められない。選手は試合と場所に敬意を払わなければいけない」と発言、来年以降はキャットスーツを禁じるドレスコードを発表していた。