この、アメリカとメキシコの国境で撮影された写真にうつっているのは、ホンジュラス出身の2歳の女の子だ。彼女はボディチェックされる母親を見上げて泣いている。
この写真が「トランプ政権によって引き裂かれた親子の苦しみをうつしている」と、注目を集めている。
アメリカとメキシコの国境では今、中南米からたどり着いた移民の親と子どもたちが、毎日のように隔離されている。トランプ政権が、不法入国しようとする親子を隔離する政策を取っているためだ。
写真を撮影したのは、ピュリツァー賞を受賞した、ゲッティイメージズの写真家ジョン・ムーア氏。
写真を撮った時、母親は税関と国境パトロールにボディチェックされていた。ピンクのセーターを着た2歳の女の子は、母親を見上げてなすすべもなくただ泣き続けていたという。
「(母親は)ボディチェック中は子供をおろすよう、指示されました。女の子はおろされた途端に泣き始めました。私は数枚しか写真を撮影しませんでしたが、込み上げてくる感情を必死にこらえなければいけませんでした」と公共放送NPRにムーア氏は語る。
その後、母子は止まっていたバンに乗るよう指示された。この親子やそれ以外の移民たちを乗せたバンは、移民手続きセンターに走り去ったという。その後、この親子がどうなったのかわかっていない。
ムーア氏は約10年間、アメリカとメキシコ国境で撮影を続けている。今回撮影した親子が連れ去られる前に、少しだけ母親と話すことができた。「女性はホンジュラス出身だと話し、『丸々一カ月旅していて、とても疲れている』と言いました」と、ムーア氏はゲッティイメージズのウェブサイトでコメントしている。
アメリカとメキシコの国境で逮捕されるホンジュラスからの移民は、ここ数カ月で増加している。ホンジュラスは中米で2番目に貧しい国であり、国民はギャングによる激しい暴力や不安定な政治に苦しめられている。
ムーア氏は、この1週間で撮影した移民の多くが中米からの亡命希望者であり、暴力や死を恐れて自国から逃れてきたと話す。
「ほとんどの家族が、多かれ少なかれ怯えていました。彼らが、以前に国境を越えようとしたとは思えません。政治亡命を求めてアメリカに来るために、彼らは子供を連れて自国を逃れ、危険な状況で何千マイルも旅しなければいけません。多くの人たちが、真夜中に到着しています」
ムーア氏はこれまでに、アメリカとメキシコの国境で「多くのものを見てきた」という。しかしこの一週間は「これまでと違う感情を抱いた」とNPRに語っている。
「これまでと違った理由は、写真を撮影した後に彼らが隔離されると知ったからです。私たちアメリカ人は、トランプ政権が、家族を隔離するというニュースを聞いていました。しかし、写真にうつる人たちは、そのニュースを知りませんでした。この後に何が起きるのかを知っていながら、写真を撮るのはつらかった」
トランプ政権は6月15日に、4月19日~5月31日の6週間で、不法入国を試みた親や保護者から約2000人の子供たちを隔離したと発表した。隔離は、いかなる違反も一切容認しない「ゼロ・トレランス(容赦なし)政策」の一部だという。不法入国した家族について、親はすべて逮捕し、その間子どもは親と引き離して保護施設に入れるとした。
ムーア氏はこう話す。
「フォトジャーナリストとして私のやるべきことは、どんな厳しい状況でも撮影を続けることです。しかし、まだ幼い子供を持つ父親として、カメラの前で起きていることを目にして、『自分の子供が、同じように引き離されたらどうだろう』と考えると胸が張り裂けそうになります」
ムーア氏がこの一週間で撮影した写真の一部をご紹介する。撮影のあと、子供達は親から引き離されて拘束されている可能性が高いと考えられる。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。