俳優や企業の重役、弁護士など、アメリカの裕福な家庭の親たちが不正な手段で我が子をエリート校に入学させていたとして、告訴された。
告訴された親の中には、人気テレビ番組「デスパレートな妻たち」でリネットを演じたフェリシティ・ハフマンや、「フルハウス」のレベッカ役、ロリ・ロックリンも含まれる。
富裕層による大掛かりな不正入学スキャンダルは、全米に衝撃を与えている。
告訴されたのは、33人の親たちのほか、大学のスポーツコーチや試験官など合計50人。
親たちが子供を入学させるために払った金額は 20万ドル(約2220万円)から650万ドル(約7億2280万円)になるという。
■ 不正入試の手口は
不正入学の中心となったのは、大学入試のカウンセリングなどを行う「キー財団」と設立者のウィリアム・リック・シンガーだ。
不正を調査したアメリカ連邦捜査局(FBI)によると、財団とシンガーは数年前から不正な方法を使って、顧客の子供達をイェール大学やスタンフォード大学、南カリフォルニア大学、ジョージタウン大学など全米の名だたる有名校に入学させた。
シンガーらによる不正入学の手段は、主に2つある。
1つは、子供に変わって別人が試験を受けたり、間違った解答を後から修正したりする手法だ。試験の管理官がテストの最中に正解を教えたり、自分たちの子供に学習障害があると申請して特別な延長時間を求めたケースもあった。
もう1つは、大学スポーツチームのコーチに賄賂を贈ってスポーツ選手として入学する方法。子供達の中には、実際にはその競技をやった経験がない学生たちもいた。
■ シンガーを頼った顧客たち
シンガーらは、自分たちが管理できる試験会場をウエストハリウッドとヒューストンの2カ所に持っていたとされる。
試験会場が自宅から離れている場合、結婚式などの理由を作ってそれらの試験会場で試験を受けるよう、顧客にアドバイスしたこともある。
娘のために1万5000ドル(約166万円)を支払ったとされるハフマンのケースでは、協力者がフロリダからウエストハリウッドの試験会場にきて、ハフマンの娘の学力試験を監督した。そのテストで、ハフマンの娘の試験結果は、前年に比べて大幅に上昇した。
ロックリンと夫でファッションデザイナーのモッシモ・ジリアーニは、50万ドル(約5560万円)を支払って二人の娘を南カリフォルニア大学ボート部の特待生として入学させた。
しかし、娘は二人ともボート競技の経験はなかった。ロックリンとジリアーニは二人をローイング・マシーン(ボート運動をする器具)に乗せて写真を撮影し、入学用に使ったとされる。
ロックリンらが支払ったお金は、キー財団と南カリフォルニア大学の体育学部副部長のドナ・ヘイネルに支払われた。
シンガーと親たちは、不正入学を子供に気づかれないための方法についても話し合ったとされる。
別人受験をしたある顧客は、別人が試験場で試験を受けている間、家で試験を受ける理由を息子にどう説明すればいいかを、シンガーに相談した。
今回の事件について記者会見したアンドリュー・レリング連邦検事は、富と特権を手にした人たちによる腐敗が広がっていると非難し、富裕層のための特別な入学手段があってはならないと強調した。
「不正な方法で入学した学生の代わりに、正直で能力に溢れた学生が不合格になっています」
今回の不正入学問題では、子供達の多くは不正に気付いていなかったとされている。今の所、告訴された子供はいないが、レリング氏は、今後の捜査によっては起訴される可能性もあるとしている。