PRESENTED BY UR都市機構

「品川を、世界とつながる玄関口に」。2020年、日本の人と交通の流れを変える、駅と一体化したまちづくりとは

3月14日に高輪ゲートウェイ駅開業予定。「本番はこれから」という品川開発が目指すもの
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2020年、東京を中心に訪日外国人の大幅な増加が期待されており、国内の人の流れも大きく変化することが予想されている。

その中でも、世界からの訪日客を迎え入れる「玄関口」として大きな変化を遂げているのが、品川だ。品川─田町駅間を中心に、約14.7haにも及ぶ大規模な開発が行われている。JR山手線におよそ50年ぶりに誕生する新駅「高輪ゲートウェイ駅」の開業は、もう目前だ。

都内だけでなく、国内の人と交通の流れを変える「世界とつながる玄関口」に──。駅と街が一体となってできる、新しい品川の姿とは?

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YASUHIRO SUZUKI

複数のプロジェクトが同時並行で進む

「山手線、品川―田町駅間に30番目の新駅設置へ」

このニュースがメディアを賑わせたのは、2014年のこと。「高輪ゲートウェイ駅」と名付けられたJR東日本の新駅開業を2020年3月14日に控え、「品川駅北周辺地区土地区画整理事業」の全貌が今、姿を見せ始めている。

その始まりは、品川─田町駅間の線路上にあった「品川車両基地」の機能廃止だ。上野東京ラインが開通することで、車両を品川車両基地以外の場所に移動させることが可能に。同基地は2013年に廃止され、南北におよそ1.5km広がる跡地での「JR東日本品川車両基地跡地の再開発計画」が発表された。

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2015年4月撮影の品川車両基地。着工から3年、この場所に「高輪ゲートウェイ駅」が完成しようとしている
UR都市機構

2020年の羽田空港の国際線増便、2027年品川~名古屋駅間リニア中央新幹線開業など、品川の海外都市や国内地方都市とのアクセス性はますます向上。その立地、交通の特性を生かした「世界とつながる玄関口」となる品川のリーディングプロジェクトが、車両基地跡地の周辺を含む総面積約14.7haの大規模開発「品川駅北周辺地区土地区画整理事業」だ。

品川周辺は、新駅開業だけでなく、京急品川駅の再編、環状4号線の整備、東京都による市街地再開発事業など、さまざまな事業が並行して進む。その分利害関係者も多く、行政、鉄道事業者、インフラ・開発事業者、そして地権者は計40以上にのぼるという。

UR都市機構は、事業の計画立案とともに複数の事業との協議調整を含め、品川全体のまちづくりのコーディネート役を計画段階から担ってきた。そして現在は、開発事業者として2024年のまちびらきに向けた基盤整備を行っている。

JRとURのコラボレーションで生まれる街

鎌倉時代には港、江戸時代には東海道の宿場町として栄え、明治時代には日本初の鉄道が開通して交通の要所となった品川。人と交通の流れを支えてきた品川のこれからについて、開発事業者であるUR都市機構とJR東日本の担当者に話を聞いた。

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左から、JR東日本の天内義也さん、楠原千佳子さん、UR都市機構の山口香世さん、田中利幸さん
YASUHIRO SUZUKI

── 開発がスタートした経緯として、品川駅周辺が抱えていた課題はあったのでしょうか?
天内 「都心最後の空白地」とも呼ばれた、品川車両基地の跡地。その場所をどう活用するかというのは、JRとして少なくとも10年以上前から検討してきました。羽田空港やリニア中央新幹線など交通環境の変化を背景に、日本の玄関口としての機能は、東京駅だけでなく品川駅も高まっています。

日本の新たな玄関口となる、都心の一等地でJR東日本ができるまちづくりとは何かを議論した結果、それは新しい街の象徴となる駅と一体となった街、「エキマチ一体のまちづくり」という考えにたどり着きました。

田中 駅の周りって人が集まる基盤ができているので、まちづくりの拠点になりやすいんです。元からある場所の機能強化をする中で、鉄道事業者の資源である駅を生かしたまちづくりを目指す時に、JRさんとURのコラボレーションが生まれることが多いかな。

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2020年3月14日に開業を迎える「高輪ゲートウェイ駅」の完成イメージ。日本の伝統的な折り紙をモチーフとした大屋根が特徴的。駅から街を見渡せる大きなガラス面を設けるなど、「駅と一体化した街」を目指した構造だ
JR東日本

天内 おかげさまで、高輪ゲートウェイ駅の工事はほぼ完成し、電車も駅の中を走っています。あとは駅開業時にホームドアを開けばお客様をお迎えできる状態です。とはいえ、街の開発という視点では、本番はこれから。駅が完成したら終わりというわけではなく、「まちびらき」に向けたスタートにすぎません。

山口 国道15号から新駅の方を見ると分かりますが、現場は引き続き工事中なんです。駅に向かうまでの道路、駅周辺の人の流れを作るのがURの仕事。

楠原 皆さん、新駅に注目しがちだと思いますが、道がないとたどり着けないですからね(笑)
本来は、道路や周辺環境が整ってから、最後に駅を作るんです。でも今回は2020年開業というゴールがあったので、通常とはプロセスも、作業ペースも全く違う。開発に関わる自治体や事業者との調整、スケジュールの工夫が必要でしたが、そこはURさんのコーディネート力あってこそ。

「1+1が、2以上になる取り組みを」

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「新駅は、近未来を感じる工夫がたくさん。豊かな暮らしに向けた実験の場のようなイメージです」と天内さん
YASUHIRO SUZUKI

── JRとUR、お互いの得意分野を生かした開発が進んでいるのですね。

楠原 品川開発の目標は、「世界とつながる玄関口」を作り、国際交流の拠点とすること。そのために、新駅に直結する大きな広場スペースを設けたり、品川〜新駅間の人の流れが2階のデッキレベルで安全に快適に移動できるような動線上の工夫をしたりしましたが、JRはそうした経験がまだまだ浅いので。

山口 逆に、URのノウハウだけではできないこともたくさん。65年の経験がありますが、世の中の制度もニーズも変わっているので、そこは柔軟に、お互いの知見を生かして進められているかな、と。JRさんの思いやアイデアを実現していくために、URの経験を生かせていることはうれしいですね。


天内 ここまでの大規模開発はJRでも初めて。「この跡地を、どう活用すれば世の中のためになる?」というところからスタートしましたが、計画段階からURさんが入ったことで、品川のポテンシャルを最大限生かせる内容になったと思います。 

田中 JRさんとURの1+1が2以上になる。そんな取り組みができているな、と実感します。なんとか新駅の開業まで漕ぎ着けそうですが、天内さんの言う通り、そこからが本当にスタートです。

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田中さんは「地方公共団体や地権者との調整、インフラの整備や活用は、私たちのノウハウが生きる分野。お互いの知識と経験、アイデアを生かして、どんどん新しいものが生まれたら」と話す
YASUHIRO SUZUKI

── まちびらきは4年後ですが、それまでにどのような計画があるのでしょうか?

楠原 まちびらきを迎えるまでの間に、駅やその周辺で新しい取り組みや、地域に根をはる活動をしていきたいと思っています。言葉、食、宗教...どんな人でも過ごしやすい、ダイバーシティの街に向けて、地域の方々との連携も必要不可欠なので、URさんの力も借りながら進めたいなと。

「交通」という側面からできるまちづくりについても、引き続き考えていきたいなと。例えば、港区はその名の通り、「水」にゆかりがあり、区内を流れる運河があります。また、品川区側の芝浦エリアは東京湾に面しています。それらの地域資源を生かして、日常生活の足や新たな観光ルートとなるような水上交通はできないか? なんて構想もあるんです。

天内 この地区の開発は、リニア中央新幹線含め、今後15年くらいは続きますからね。その間に、周辺の環境、利用者からのニーズも変わってくるかなと思うので、「決めたことを変える勇気」は忘れずに持っていたいです。

山口 このプロジェクトでは、URだけでは思いつかないこともたくさん実現させてきました。URは基盤整備、特に道路の整備を進めていますが、駅と街が一体となるためにも非常に大切な要素。これから、まだまだ道路や公園の整備があるので、初動期から利用者の声に耳を傾けながら、まちづくりを進めていきたいですね。 

田中 まだまだ調整していかなければならないことが山積みですが、JRさんに「またURに協力してもらって、都市開発ができれば」と思ってもらえたらうれしいです。

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2024年にまちびらきを迎えるが、その後も開発は続く。新たな「玄関口」の誕生で、都心の交通、日本の人の流れはどのように変化するのか楽しみだ
UR都市機構

◇◇◇

2024年まちびらき、2027年リニア開業に向けて、URの区画整理事業による基盤整備は続く。「世界とつながる玄関口」としての役割はもうすぐに始まろうとしている。2020年、国内の人の流れ変えていく役割を担う品川は、空からの玄関口、そして都内、国内移動の交通の要所として、これからますます人が集まる場になりそうだ。

それに伴い、都心から地方都市への人の流れも加速することが予想される。国内の旅行客だけでなく、多くの訪日外国人を受け入れるために、地方都市ではどのような取り組みが行われているのか?

第5回は、広島県福山市での都市再生事業。「古いものを活かして賑わいを生む」、新たな手法とは一体?