PRESENTED BY UR都市機構

老いも若きも、ジャズの音色に誘われて。築50年、2,094戸の団地が取り組む、ある挑戦とは。

埼玉県北本市、関東最大級の縄文遺跡に隣接するUR都市機構「北本団地」。少子高齢化、人口流出... 私たちが抱えるさまざまな課題解決につながるプロジェクトが進行中です。
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「北本団地活性化プロジェクト」でリノベーションされた住宅付店舗で暮らし、ジャズ喫茶「中庭」を営む落合夫妻。
JULIE FUKUHARA

URが目指すのは、誰もが自分の住みたい場所で、生き生きと暮らし続けられる場所=“ミクストコミュニティ”づくり。自治体、企業、住民たちと手を組み、多世代がつながるコミュニティづくり、医療環境の整備、子育て環境の充実などに取り組む「地域医療福祉拠点化」だ。  

1971年に生まれた総戸数2,000超の団地・北本団地は、高齢化、少子化、過疎化が進み、敷地内の商店街はシャッター通りになるなど、さまざまな社会課題を抱えている。

地域資源の発見・活用を通じて、団地の再生、活性化に取り組む「北本団地活性化プロジェクト」のみなさんに、話を聞いた。

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JULIE FUKUHARA
<話を聞いた人>
(写真左から、登場順)
・林 博司さん:北本市 市長公室 シティプロモーション・広報担当。

・岡野 高志さん:北本市を拠点とするまちづくりのチーム、合同会社「暮らしの編集室」代表社員。北本市観光協会職員としても活動。

・吉川 将太さん:「暮らしの編集室」団地プロジェクトメンバー。幼少期から、間が空きながらも32歳まで北本団地に居住。

・落合 康介さん:北本団地内の住宅付店舗にオープンしたジャズ喫茶「中庭」のマスター。ジャズミュージシャン。2021年4月、都内から移住。

・荻原 春視さん:UR都市機構埼玉エリア経営部 団地マネージャー、北本団地を担当。

アイデア次第で、シャッター街で「なんでもできる」

── 北本団地はどのような課題を抱えていて、どのようにプロジェクトが始まりましたか? 

林さん ここは高齢化率が市内でも最も高いエリア。団地の子供たちが通う小学校は1学年5人以下に減り、2021年3月に廃校となってしまいました。市としてもなんとかしたい思いはあったものの、団地の管理や運営はURさんがおこなっており、直接的に関わることができない状況でした。

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北本市 市長公室 シティプロモーション・広報担当の林 博司さん。「北本団地活性化プロジェクト」の窓口として、ふるさと納税でのクラウドファンディングの担当者も務めた。
JULIE FUKUHARA

そんな中、2019年10月に市長が変わったタイミングでURさんたちと、北本団地活性化に向けた話し合いをしました。

すでに北本市内でまちづくりの活動をしていた「暮らしの編集室」目線で、団地の中で空洞化が進む商店街を見ると、アーケードがあって雨風をしのげるし、近隣同士のお付き合いもあるし、車も通らなくて安全だし...。空いていることをポジティブに捉えて、なんでもやれる場所だと言われたんです。その視点は、目から鱗でした。

空き店舗を活用するという提案に、URさんが実現する方法を模索してくれて。2020年3月にはURさんと北本市が包括協定を結び、本格的に「北本団地活性化プロジェクト」が始動しました。 

ただ、場所を作ることはできたとしても、活動してくれる人がいないとプロジェクトは成り立たないですよね。それが「暮らしの編集室」のみなさんや、「中庭」の落合さんです。

2,000戸×50年。関係人口が多い、団地の“資源”をチカラに変える

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(写真左から)「暮らしの編集室」代表社員の岡野 高志さん、プロジェクトメンバーの吉川 将太さん。岡野さんは5年前から北本団地で暮らしている。吉川さんは幼少期から、間が空きながらも32歳まで居住し、現在も実家が北本団地にある。写真は団地内の商店街にて。
JULIE FUKUHARA

── なぜ「暮らしの編集室」は、北本市活性化の拠点として、団地に着目したのでしょうか?

岡野さん 私は5年前からこの団地に住んでいます。吉川は、北本団地育ち。僕らが小さい頃は商店街に大きなスーパーがあって、酒屋さん、お肉屋さん、八百屋さん、薬屋さんも揃っていたので団地の外からも買い物に来てたんです。小さい頃の思い出の場所がなくなってしまうのは寂しいですよね。

そんな話を吉川としていた頃に市長が変わり、初めてURさんにお会いしました。「何もないから、なんでもできる。ここには可能性しかないんです」と話ししたら、URさんが受け入れてくださって。もともと観光協会でご一緒していた良品計画さん、MUJI HOUSEさんが光が丘パークタウン(東京都板橋区)でURさんと活動されていたこともあり、北本団地の住宅付店舗をリノベーションしようという話になりました。 

吉川さん その一角、落合さんが営んでいる「中庭」の店舗を改装するためにふるさと納税でクラウドファンディングを始めたら、たくさんの人が応援してくれて。団地の2,000戸×50年。関係人口が多いことを改めて感じました。

「昔住んでたから応援したいです」「他の団地に住んでたけど、北本もがんばって」というコメントもありましたね。

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ふるさと納税サイトのキャプチャ(※現在は、募集を終了しています)。
提供画像

岡野さん ここを離れた人たちも、このふるさと納税をきっかけにまた遊びに来てくれればなと思ってるんです。「ジャズ喫茶ができたから、ちょっと見に行ってみよう」というように、きっかけを増やしていけたら。

吉川さん 一番大事にしなきゃいけないのは住んでいる人。住んでいる人のための活動が外向けの発信になって、近隣の人たちにも便利な場所、足を運びたいと思える場所を作っていく。

岡野さん 今度、商店街でシェアアトリエをやろうと思っているんです。近隣で活動している子ども食堂の活動資金が足りないので、作ったものを売れると良いなと思って。団地の人たちも手作りのものを色々と「中庭」に持ち込んでいるので、教室を開くのも良いですよね。落合さんが来てくれたことで、そういう気づきがたくさんあるんです。

新たな「場所」に「人」が集う。地域の特性を、音楽に乗せて

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プロジェクトの一環で、URとMUJI HOUSEによりリノベーションされた団地内の住宅付店舗でジャズ喫茶「中庭」を営む落合康介さん。2021年4月に、都内から夫婦で転居した。写真は「中庭」の店舗内。
JULIE FUKUHARA

──  「中庭」では、どのような変化が生まれていますか?

落合さん 僕たちはジャズ喫茶として、朝はコーヒー、午後からは妻がランチを提供。あとはジャズに限らずいろんなライブ、イベントをしています。ここはシェアキッチンなので、子供の料理教室や寺子屋、北本で活動している人たちのコミュニケーションの場所としても使われています。

音楽活動をする中で、演者と聞き手の距離感を取り払って、みんなで作るような場所ができたらなと漠然と考えていたんですけど、ここに引っ越してきて具体的になりました。

昨日も団地に住む方々と、畑で小さな音楽祭をやってみました。「暮らしの編集室」岡野さんの発案です。団地には、関東最大級の縄文集落「デーノタメ遺跡」が隣接しているので、「その頃の生活と音楽って、どういう関係だったんだろう?」ということを学んだり、当時を想像しながら演奏をしたり。地域の歴史や文化の特徴を生かして活動していきたいですね。

地域に、そして全国に還元できる成功事例に

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UR都市機構 埼玉エリア経営部 団地マネージャーの荻原春視さん。2021年春より北本団地を担当。北本団地に頻繁に足を運び、住民の方々とコミュニケーションをとる。
JULIE FUKUHARA

── URが考える、北本団地でのプロジェクトの特徴は何でしょうか?

荻原さん ハードの整備ができても、やる人がいないと実現できない。「北本団地に住んでたよ」「親が住んでるよ」という人や、北本に愛着のある方々が集まってくれたことで形になりました。

住宅付店舗のように、住みながらコミュニティ拠点をオープンするというのは、URの団地でも初めての事例。「住む」こと以外にも、今後も拠点づくりの方法は増えていくと思います。

「中庭」ができて4ヶ月ほどですが、新たなアトリエの構想もあり、少しずつ、商店街の店舗が埋まっていく兆しを感じています。時間はかかるかもしれないけど、自治体との協力体制や、どんな風に役割分担をしたのか、その知見が広がって、地域活性化の成功事例にしたいですよね。

団地ごと、ニーズも特性も異なります。団地を地域の資源ととらえ、全国の団地での再生・活性化の取り組みを通して、そのノウハウを地域に、そして全国に還元していくことが、さまざまな課題に直面する日本社会におけるURの役割の一つと考えています。

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北本団地の空撮(2021年9月21日撮影)
HUFFPOST JAPAN

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戦後から長きにわたり私たちの生活を支えてきたUR。そのノウハウを生かし、SDGsが掲げる持続可能なまちづくり、私たちの未来の暮らしへのヒントとなる、新しいまちづくりに挑戦している。