オーバーブッキングにより乗客を無理やり引きずり出し、大きな批判を浴びているアメリカの航空会社ユナイテッド航空は、これまでも幾つかの不祥事を抱えている。
創立91年の同社は4月9日、乗客が購入していた席をユナイテッド航空の従業員に譲らなかったため警察に通報し、この乗客を暴力的に機内から引きずり下ろした。
近年、ユナイテッド航空の広報は悲惨な失敗を繰り返し、法的にも深刻な問題を抱えている。
2011年から14年にかけて、ユナイテッド航空はアメリカ政治の法人賄賂の代名詞だった。彼らは、ニューヨークとニュージャージー州の港や空港を管理する「ニューヨーク・ニュージャージー港湾公社」の港務局長だったデビッド・サムソン氏に便宜を図り、ニュージャージー州のニューアーク空港からサウスカロライナ州のコロンビア空港の不採算路線を特別に提供した。
ユナイテッド航空は、恒常的な不採算を理由に2009年、この路線を廃止していたが、2011年になって元ニュージャージー州検事総長で、現ニュージャージー州知事のクリス・クリスティ氏(共和党)の友人だったサムソン氏が、ニューヨークの職場からサウスカロライナの別荘に行く便利な方法を提供するようユナイテッド航空に圧力をかけた。当時のジェフ・スミセクCEOや2人の副社長らユナイテッド航空の幹部は、連邦捜査局(FBI)に通報する代わりに、この路線の復活を決定した。この路線は「局長の路線」として知られるようになったが、2014年、サムソン氏が辞任すると共に廃止された。
ニューヨークのマンハッタンとニュージャージー州フォートリーにかかる橋「ジョージ・ワシントン・ブリッジ」を、政治的な理由(ニュージャージー州知事選で、フォートリー市のマーク・ソコリッチ市長がクリスティ氏を支持しなかった報復)で閉鎖した疑惑「ブリッジゲート」について、連邦政府がクリスティ氏周辺を調査する中で、この便宜の存在が明らかになった。スミセク氏は辞任し、現在のCEOオスカー・ムニョス氏が就任した。ユナイテッド航空の2人の副社長も同じく辞任した。
2016年、ユナイテッド航空は司法省と証券取引委員会と非訴追協定を締結し、合計465万ドル(約5億2千万円)の罰金を支払うことと、反賄賂遵守プログラムの開始に同意した。サムソン氏は、2016年7月、収賄で有罪が確定した。
このニュージャージー州の贈収賄事件の他にも、ユナイテッド航空は法的な問題に直面している。 2016年には、障害のある乗客を航空会社が保護する規則や、滑走路の遅延延長に関する規則に違反したとして、アメリカ合衆国運輸省に275万ドル(約3億1000万円)の罰金を支払うことに合意した。また、2013年にも滑走路遅延規則に違反して110万ドル(約1億2000万円)の罰金を科されている。また、ユナイテッド航空はレギンズをパンツとして着用した10代女性たちの搭乗を拒否し、ネットが批判にさらされた。
ユナイテッド航空は、シカゴからケンタッキー州ルイビルへ向かうエクスプレス便で、医師のデビッド・ダオ氏を強制的に機内から引きずり下ろしたことに対する責任を逃れようとしている。
チケット代を払った顧客が全員搭乗した後、4人のユナイテッド航空の従業員がすでに満席になったこのフライトで座席を取ろうとした。当初ユナイテッド航空は、後のフライトに変更してもいいと申し出た顧客には400ドルのバウチャーを支払うと提案したが希望者がおらず、800ドルに引き上げられた。
それでも自発的にフライトを変更する客が現れなかったので、ユナイテッド航空はコンピュータプログラムにより無作為に選択した乗客に、飛行機から降りてもらうことにした。仕事に間に合うようにこのフライトを予約していたダオ氏が後の便に移ること拒否すると、ユナイテッドはシカゴ空港警察に連絡した。ダオ氏は警察官に席から無理やり引き離された。その時、ダオ氏は頭を手すりにぶつけ、他の乗客が見守る中、血を流しながら飛行機の外に引きずり出された。
ユナイテッドの従業員への声明で、ムニョス氏は、シカゴ警察官への協力を拒否したダオ氏を非難した。
「読んでいただければお分かりになると思いますが、私たちが機内から降りていただくよう丁寧にお願いした乗客の一人がそれを拒否したため、シカゴ空港警察に連絡を取らざるを得なくなり、残念ながら状況が複雑になりました」と、ムニョス氏は弁明した。
当初ユナイテッド航空は、「自発的にフライトから離れる」ことを拒否したとしてダオ氏を非難していた。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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