国連がカトリック教会に対して、子供の性的虐待問題を指摘。その背景にあるもの
国連の子どもの権利委員会は2014年2月5日、カトリック教会の聖職者による子供の性的虐待問題について「必要な対策を取っていない」として、ローマ法王庁を非難する勧告を発表した。
同委員会は1月、スイスのジュネーブにおいてローマ法王庁に対する審査を実施した。
委員会によると、カトリック教会の聖職者は各国で子どもに対する性的虐待を行っているが、性的虐待を行った聖職者については配置換えなどの対応にどどまっているという。また一部の教区では、司法当局への通報が妨害されるなど、組織的な隠蔽体質が見られるという。
同委員会は、カトリック教会に対して、独立機関による調査の実施と再発防止策の徹底を求めているが、カトリック協会側はその勧告に強く反発している。
カトリック教会で子供への性的虐待が行われていることは以前から指摘されていた。新しくローマ法王に就任したフランシスコ法王は、教会内の虐待に対して厳しい姿勢で臨む方針を明らかにしており、昨年12月には、対応を検討するための委員会を設立している。また英国のオブライエン枢機卿が神学生に対する性的虐待で辞職を余儀なくされるなど、一部では具体的な処分も行われている。
ただ途上国を中心にカトリック教会は政府も手が出せない一種の治外法権となっているところが多く、ローマ法王庁の意向がすべての教区に徹底されているわけではない。国連が指摘するように、組織的な隠蔽が行われているというのは一部の教区では事実である可能性が高い。
カトリック教会のこうしたスキャンダルが一気に表面化しているのは、経済や社会のグローバル化と大きく関係している。カトリック教会に対しては、性的虐待の問題だけではなく、バチカン銀行などを通じたマネーロンダリング疑惑も浮上している。
かつてカトリック教会は、その特権的立場を活用して、社会の駆け込み寺的な存在として機能していた。軍事独裁政権など、人権弾圧が行われるような国では、教会の存在が人道上、大きな役割を果たしてきたのである。だが一方でこうした特権的立場は、犯罪や腐敗の温床にもなる。
経済や社会が国単位でバラバラだった時代には、清濁併せ呑む存在であるカトリック教会はうまく機能してきたが、全世界的に価値観が共通化され、透明性が要求されるような現代では、その負の側面が目立つようになってきたのだ。
カトリック教会では、これまで徹底的に拒否してきた同性愛などについても、許容する方向性を見せ始めている。そこにはむやみに新しい価値観を否定するよりも、新しい価値観との融和を図った方が、結果的に伝統的価値観を存続できるとの読みがある。
伝統的価値観を代表する組織の一つであるカトリック教会が、今回の勧告に対してどのような対応を示すのか注目される。
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