この人に聞く:次期国連事務総長に任命されたアントニオ・グテーレス氏

国連総会は満場一致の拍手により、12月31日に任期満了を迎える潘基文(パン・ギムン)国連事務総長の後任にアントニオ・グテーレス氏を任命しました。

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満場一致の拍手による次期国連事務総長任命を受け、総会で開かれた記者会見で発言するアントニオ・グテーレス氏©UN Photo/Kim Haughton

2016年10月19日 - 国連総会は2016年10月13日、満場一致の拍手により、12月31日に任期満了を迎える潘基文(パン・ギムン)国連事務総長の後任にアントニオ・グテーレス氏を任命しました。

67歳のグテーレス氏は、1995年から2002年にかけポルトガル首相、2005年6月から2015年12月にかけ国連難民高等弁務官を歴任しました。

10月6日、国連安全保障理事会は加盟国193カ国に対し、2021年12月31日までの5年間を任期とする国連事務総長候補として、グテーレス氏を推薦する勧告を行っていましたが、総会はピーター・トムソン議長が提出したコンセンサス決議を採択し、この勧告を承認しました。

グテーレス氏は2017年1月1日、世界のトップ外交官となり、その後5年間にわたって職務を遂行します。

潘基文(パン・ギムン)事務総長はこの任命を受け、「私たちが過去10年間の前進をさらに積み重ねながら、今日の世界の不安と不確実性に取り組んでいく中で、グテーレス氏の任命は、国連の運営にとって素晴らしい選択」だと述べました。

UN News Centreは、任命直後のグテーレス氏にインタビューし、1月の就任後、最も対応に急を要する優先課題は何かをまず尋ねました。

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次期国連事務総長:ご質問にお答えする前に、この国連メディアを通じて、国連全職員に対する私の深い連帯感を表明したいと思います。私は10年間、国連難民高等弁務官(UNHCR)として、皆さんの同僚として働く機会に恵まれました。そして今、私は1月1日から、再び同僚として働く可能性を得られたことに大きな喜びを感じています。私は世界各地で、あらゆる国連職員と協力できることを楽しみにしています。

では、話をご質問に戻しましょう。最優先課題は平和に関するものになると思います。今日の世界で私たちが直面する最も劇的な問題は、平和の欠如です。新たな紛争が多発する中で、旧来の紛争も収まっていません。ソマリアやアフガニスタン、コンゴ民主共和国がその例です。

世界には変化が見られます。不処罰と不確実性の感覚が広がり、国際社会が紛争を予防、解決する能力は大きく低下しました。ですから、私の優先課題は、平和のための外交の活性化となるでしょう。これについては、加盟国に依存するところが大きく、事務総長にできることが限られていることは知っていますが、私は会議の招集者や促進役、誠実な仲介者を務めることにより、より多くの加盟国を結集させることはできるのではないかと期待しています。

現在の世界を見れば分かるとおり、戦争はますます卑劣に、人々の苦しみはますます深刻になっていますが、もっと悪いのは、こうした戦争が私たちの集団安全保障にますます危険な影響を及ぼしているということです。ですから、紛争の当事者や、紛争当事者に影響力を及ぼす者が結集し、グローバルな安全保障という共通の利益が、当事者間に生じかねない分裂よりもはるかに重要だということを理解すべき時が来ていると言えるのです。

UN News Centre:つまり、難民や金融、武力紛争、テロといった世界の危機のほとんどの原因は、平和の欠如にあるとお考えですか。

次期国連事務総長:すべてが相互に関連していることは明らかです。同時に、人間の苦難をあらゆる次元で和らげる最善の方法は、平和のための外交の活性化であることも明らかです。もちろん、難民の危機はその最も劇的な側面のひとつです。

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シリア難民のイラク・クルディスタン地域への流入が続く中、グテーレス難民高等弁務官(当時)は、最近流入した難民4万7,000人を含め、20万人近くの難民を受け入れている地域政府に賛辞を送るとともに、次のような認識を明らかにしました。「この難民流入は、当地の経済とインフラにとって大きな負担となっています。隣国での戦争はいつでも脅威となります」©UNHCR/S. Baldwin

UN News Centre:新たな職務について考える時、最初に頭に浮かぶ懸念や課題は何ですか。

次期国連事務総長:現時点での重要課題は、先ほどもお話しした平和のための外交をより効果的に展開することだと思います。しかし、国連改革については、大きな課題があります。それは、全世界の人々にさらに効果的に奉仕するため、国連の能力を高めることです。また、2030アジェンダや気候変動協定をはじめ、主に潘基文事務総長のイニシアティブによって比較的最近、達成された重要な成果や画期的な決定をしっかりと実施するとともに、その効果的なフォローアップを確保することも課題です。さらに、人類、そして全加盟国に共通の責任として、人権を確保していくという問題もあります。

UN News Centre:国連事務総長選任プロセスでは初めて、数人の女性が立候補し、検討の対象とされました。国連高官としての女性の役割に関する考えをお聞かせください。

次期国連事務総長:私はまず、女性が国連事務総長や世界各国の首脳に就任することの象徴的な価値を十分に認識しています。しかし、残念ながら私は女性ではないので、それについてどうすることもできません。

私にできるのは、第1に国連の全世界でのあらゆる活動で、女性と女児のエンパワーメントと保護を中心的な優先課題とすること、そして第2に、国連という組織の内部でも、できるだけ近い将来に、あらゆるレベルで男女の職員を同数とするよう努めることです。先ほども申し上げたとおり、私は自分のジェンダーについてどうすることもできませんが、国連に関するあらゆる物事において、ジェンダーの平等達成を強く決意することはできます。

UN News Centre:つまり、副事務総長への女性の起用をお考えだということですか。

次期国連事務総長:それは絶対に必要なことだと思います。男女同数を標榜するのなら、仮に事務総長が女性であれば、副事務総長は男性とすべきであり、事務総長が男性であれば、副事務総長は女性とすべきだということになるからです。

アントニオ・グテーレス次期国連事務総長は、「平和のための外交活性化」を優先課題とすることを約束しました。同時に、グテーレス氏は国連ニュース・サービスに対し、持続可能な開発のための2030 アジェンダの実施や、気候変動に関するパリ協定の執行をはじめ、潘基文事務総長が着手した作業を継続する意向も表明しました。グテーレス氏は、国連改革やさらなる人権尊重の推進など、事務総長と国連の前途に控える課題も認識しています。

UN News Centre:10年以上にわたり、国連難民高等弁務官を務めた経験がおありですが、新たに事務総長として、難民と移民のニーズに取り組むため、この分野での経験をどのように活用していくつもりですか。

次期国連事務総長:近年、全世界で難民の保護状況が深刻に悪化していること、そして、世界各地でポピュリスト的、排外主義的な考え方が広がり、移住に対する敵意が高まっていることについては、憂慮していると言わざるを得ません。難民と移民に関する最近のサミットが、こうした動向を変える一助となることを期待しています。

また、私としても、こうした動きを逆転させ、難民保護を本来のグローバルな責任として受け入れてもらえるよう、全力を尽くしていきます。それは単に、難民条約に盛り込まれているだけではありません。全世界のあらゆる文化や宗教にも深く根づいた理念です。イスラム教にも、キリスト教にも、アフリカを含む各地にも、そして仏教やヒンズー教にも、難民を保護するという強い意識が見られます。

ですから、各国が単に国際法を守るだけでなく、私たちが目にしている恐ろしい紛争を逃れ、保護を必要としている人々との全面的な連帯を確保することはもちろん優先課題となりますが、移住を人間的な観点から捉え、グローバルな問題の解決策の一環として認識することも必要となってくるでしょう。

但し、国家間の協力に基づき、これを効果的に規制する必要はあります。移民の出身国、通過国、目的地国の間に効果的な協力がなく、移住が世界の問題を解決するうえで当然の要素のひとつとみなされないことによって、人々が命を失う一方、密入国斡旋業者や人身取引業者、犯罪集団が栄える状況には、手を打たねばならないからです。

UN News Centre:国連事務総長の仕事を不可能な仕事と見なす向きも多くあります。今後、どのようにして不可能を可能に変えていくつもりですか。

次期国連事務総長:全力を尽くしていくとしかお答えできません。国連、そして国連憲章の崇高な理念と崇高な価値に奉仕すべく、できる限りのことをするつもりです。