ほとんどの人は、子どものときに4つの味があると教えられただろう。(私たちの大好きな)甘味、酸味、塩味、苦味である。しかし、私たちが受けたこの教育には大きな穴がある。味覚の中でも最も重要で、私たちが毎日味わっている素晴らしい味。スープを心温まるものに変える味。こんがり焼いた肉をこの上なく幸福な味に仕上げ、時間を置いて発酵させたチーズを素晴らしいものに変える味。この味が、長い間無視されてきたのである。実際、2002年までこの味は、存在自体が疑われていた。私たちが毎日味わっているにもかかわらずである。この味こそが、今海外で「Umami(うま味)」と呼ばれているものだ。
1800年代後半のフレンチシェフであったエスコフィエは、「第5の味」があると信じていた。そして、その第5の味こそが、彼を成功に導いた秘訣だと明言した。この味は、彼が作る子牛をだしに取ったスープに最も顕著に現れ、ひたすらにうま味が濃縮されていた。
「うま味」とは、日本語で「心地よい風味」または「美味しさ」を意味し、1900年代に日本人化学者で、食を愛する池田菊苗が特定した。池田は、海藻から取っただし汁を飲んだときに、4種の味だけでは表現できない絶妙な風味を感じたことに気が付いた。彼の化学者としての知識もあり、彼は研究室で実験を行い、「うま味」が何なのか見つけ出すことができた。
科学的には、うま味はグルタミン酸塩であると言われている。グルタミン酸塩とはアミノ酸の一種であり、肉、魚、野菜、様々な乳製品の中に自然に存在するものである。 グルタミン酸が壊れて分解されたり発酵したりする現象は、肉を調理したり、チーズが熟成されたり、太陽の下でトマトが熟れるときに起こる。そしてグルタミン酸塩がL-グルタミン酸に変わり、食べ物が非常に美味しくなるのである。
池田は言う。「自分の味蕾に注意を払っている人は、アスパラガスやトマトやチーズや肉などに含まれる、ありふれているが明らかに独特な味を見い出すことができます。甘味でなく、酸味でなく、塩味でも、苦味でもないものです……」。これがうま味である。(特に時間が経過したパルメザンチーズには、うま味が多く含まれている)
池田は味について学んだことを活かして、商品化する方法を見つけ出した。こうして世界にMSG(グルタミン酸ナトリウム) が知られるようになったのだ。--しかし、これはまた別の話である。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
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