6月20日は「世界難民の日」。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)はこの日に向けて、戦争から逃れたウクライナ難民がトラウマを抱えて生き続ける姿を描いた新作ショートフィルム「Uprooted」を公開。力強いメッセージを伝えている。
「Uprooted」が訴えることとは?
動画には、ウクライナからドイツに逃れてきた50人以上の難民が出演した。紛争での恐怖の記憶が人々の中に生き続けていることを示し、世界中の難民に連帯のメッセージを送っている。
UNHCRの公式インスタグラムでは動画とともに、次のようなメッセージを添えた。
「花火が銃声のように聞こえ、サイレンが叫び声のように聞こえ、ドアをバタンと閉める音が爆弾を落とす音のように聞こえる。
これは、すべての難民を支援するために、ウクライナ難民と共に、そしてウクライナ難民を主人公として作られた動画『Uprooted』である。いつでも、どこでも、誰でも、戦争の悲惨さを見過ごすことはできない」
UNHCRの公式ホームページでは、この動画に登場する俳優たちは、全員がウクライナからの難民であると記している。
冒頭に登場するオリヤさんは、母親とウクライナの家でお茶を飲んでいたところ、向かいの家にミサイルが落ちるのを目撃したと証言する。
「母は私に、すぐにウクライナを離れなさいと言った。今、大きな音がすると爆弾のことを想像してしまうから、怖くなる。実際に私の人生に毎日起こっていることだから、動画でこの役を演じた」とオリヤさんは語っている。
再現内容の正確さや、動画と出演俳優たちとの結びつきを高めるために、それぞれが自国を脱出したときの服を着用し、撮影したという。
動画のラストの舞台は、誰もいないベルリンの広場だ。数十人の難民たちが抱き合い、大地にしっかりと根を張った木の形を作るシーンで幕を閉じる。
動画の最後には「戦争の記憶を生き抜くために、難民は私たち全員の支えと抱擁を必要としている 」というメッセージが読み上げられる。
「Uprooted」は、Stink FilmsのAndzej Gavrissが監督を務めたという。英国内の一部の映画館で上映される予定だ。
「世界難民の日」とは?
UNHCR日本によると、2000年12月4日に国連総会で、毎年6月20日を 「世界難民の日」とすることが決議された。
「難民の保護と支援に対する世界的な関心を高め、UNHCRを含む国連機関やNGOによる活動に理解と支援を深める日にする」ことが目的という。
難民の急増
UNHCRは5月23日、紛争や暴力、人権侵害、迫害によって避難を強いられた人の数が、史上初めて1億人という驚異的な数字を超えたと発表した。
これは、ロシアによるウクライナ侵攻やその他の紛争が大きく影響しているという。
ウクライナでの戦争により、同国内で今年に入り800万人が避難せざるを得なくなったほか、ウクライナからの難民登録者数は600万人以上にもおよぶ。