ウクライナの選手、父親が捕虜になり棄権。「試合に出場できるような状態ではない」【北京パラリンピック】

自国が武力攻撃される中で、ウクライナのアスリートたちは大きな不安やストレスを感じながら競技に臨んでいます
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3月5日のバイアスロン競技に出場した時の、アナスタシア・ラレチナ選手(2022年3月5日)
Michael Steele via Getty Images

北京パラリンピック・バイアスロンのウクライナ代表アナスタシア・ラレチナ選手が、父親がロシア軍の捕虜になったために競技出場を取りやめた。

ラレチナ選手は、3月8日に開催されたバイアスロン・ミドル(座位)に出場予定だったが、この日の朝に棄権した。

ウクライナ代表広報のナタリア・ハラチ氏は「彼女の父親はウクライナ軍兵士で、ロシア兵の捕虜になりました。父親はロシア兵に殴打された」とAFP通信に語った。

ハラチ氏によるとラレチナ選手はとても動揺していて、試合に出場できるような状態ではない。現在チームの担当医に見守られながら休息をとっている。

大きな不安を抱えながら出場する選手たち

自国が武力攻撃される中で、ウクライナのアスリートたちは大きな不安やストレスを感じながら競技に臨んでいる。

ウクライナ・パラリンピック委員会のワレリー・スシュケビッチ会長は「選手たちの目は赤く腫れており、最新の状況を知るために電話を片時も離さず、涙を拭いて競技会場に向かっている」と、ニューヨークタイムズに説明している。

スシュケビッチ会長によると、パラリンピックはウクライナで人気の大会で、期間中はお祭り気分が広がる。しかし同会長は「今はそうではありません」と話している。

「朝、選手たちに『眠れた?』と尋ね、別の選手にも『眠れた?』と聞きます。彼らは『眠れなかった』と答えます。ぼんやりと悲しそうな表情をしています。とても厳しいムードが漂っています。私たちは故郷や家族のことを考えています」 

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金メダルに輝いたバイアスロンのイリーナ・ブイ選手を祝福するスシュケビッチ会長(2022年3月8日)
Michael Steele via Getty Images

それでも、選手たちは「国際試合の出場がウクライナにとって重要だ」という気持ちで、自らを奮い立たせており、スシュケビッチ会長は、ニューヨークタイムズに次のように語っている。

「私たちパラリンピックチームには、ここ北京での私たちの闘いがあります」「ここに来なければ、まるで降伏したように、ポジションを失うことになってしまいます」

また、3月7日に行われたクロスカントリーでウクライナの4つ目の金メダル輝いたオクサナ・シシコワ選手も、「私たちは、私たちの国を代表するためにここにきました。私たちの国を讃え、世界にウクライナは存在すると伝えるためにきたのです」と述べている。 

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金メダルになったクロスカントリー女子15キロクラシカル(視覚障害)でゴールした時のオクサナ・シシコワ選手(2022年3月7日)
Lintao Zhang via Getty Images

非常に厳しい状況での競技にも関わらず、ウクライナチームはこれまでに、トップの中国に次ぐ6個の金メダルをはじめ、合計17個のメダルを手にしている。

ハフポストUS版の記事を翻訳しました。