ウクライナのパラリンピック協会は、ロシア軍がクリミア半島で軍事行動を開始したことを受けて、ソチ・パラリンピックをボイコットする意向を公式ホームページで発表した。アメリカとイギリスの首脳陣も不参加を表明しており、ロシアの軍事行動に反対する西欧諸国の対応が注目されている。
■ウクライナ「冷徹な侵略」に「深い憤り」
ウクライナのパラリンピック協会は3月3日、「開催国であるロシアがウクライナへの侵攻をやめない限り、ウクライナ選手団はソチ・パラリンピックをボイコットする」という声明を公式ホームページで発表した。
「我々は『ロシア国民とロシア語を話す住民の保護』という口実のもと、我々の国家の一部であるクリミア自治共和国へ侵攻を開始したロシアに深い憤りを感じる。ロシアによるこの冷徹な侵略活動は、ロシアがパラリンピックを開催する準備ができていないことを証明している」とし、ロシアの軍事行動を強く非難した。
クリミア自治共和国はウクライナに属していながら、ウクライナ系住民は人口の24.4%しかおらず、58.5%をロシア系住民が占める(2001年ウクライナ国勢調査)。そのため、ウクライナの新ロシア派政権の崩壊を受けて、親ロシア派と親EU派の対立が激化していた。そこへ、ロシアのプーチン大統領は「自国民保護」を理由に、軍事介入も辞さない意向を示した。
プーチン氏は上院に対して「ウクライナで起きている異常事態で、ロシア国民や(クリミア半島の)クリミア自治共和国に駐留しているロシア軍人の生命が脅かされている」と説明し、自国民保護を軍事介入の理由に挙げた。介入の期限は「ウクライナの社会政治情勢が正常化するまで」としている。
(朝日新聞デジタル「ロシア、ウクライナに軍事介入へ 欧米、激しく反発」より 2014年3月2日01時03分)
3月3日にクリミア半島への上陸を開始したロシア軍は、現在半島を事実上掌握していると報じられている。
ウクライナ情勢を巡って、ロシア系住民が多い南部のクリミア自治共和国ではロシア軍の部隊が駐留地の外での活動を活発化させ、ウクライナ軍の施設を包囲しているほか、ロシア寄りの地元政府と共に行政府や空港などの主要施設を管理下に置き、現地を事実上、掌握する事態となっています。
(ロイター「ロシア軍、クリミア半島に上陸開始=ウクライナ国境警備隊」より 2014年3月4日08時29分)
■アメリカ・イギリスの首脳陣もボイコット 選手団は派遣
アメリカのオバマ政権も、政府代表団の派遣を中止する意向を発表した。しかし、選手団の派遣は行なう予定だ。3月3日の会見でアメリカNSCのヘイデン広報官はボイコットを表明するとともに、「オバマ大統領は、パラリンピックに出場するアメリカチームの選手たちを強く応援し、成功を祈っている」と発言した。
同様に、イギリスのキャメロン首相率いる議員団も参加中止を発表した。ニューヨークタイムズ紙によると、イギリス・パラリンピック委員会のパトロンを務めているエドワード王子も、「政府の推薦」により参加を中止する模様。
今回のソチ・パラリンピックは、ロシアにとって二度目の五輪開催。東西冷戦下で開催された1980年のモスクワ・オリンピックの際には、ソ連のアフガニスタン侵攻に反対して、アメリカのカーター大統領がアメリカ選手団のボイコットを表明。各国にもボイコットを呼びかけた。
その結果、欧州諸国をはじめとする67カ国の選手団が出場を取りやめるに至った。今回のソチ・パラリンピックでも各国の対応が注目される。
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