ウクライナ政府は15日、東部で警察署や行政庁舎を占拠している親ロシア派武装勢力に対する強制排除に乗り出した。武装解除を要求した最後通告から24時間以上が経過しても親ロ派勢力が応じる様子はなく、ウクライナ政府は軍投入に踏み切った。
東部のクラマトルスクでは、親ロシア派武装勢力に対する「特別作戦」が開始された。現場付近では戦闘機が急降下、飛行場では銃声が響いており、ウクライナ軍兵士がヘリコプターから降りる姿が目撃されている。
現地のロイター記者によると、空港上空にいたウクライナ軍のヘリコプター4機のうち2機が着陸、兵士が降り立った。
ウクライナのトゥルチノフ大統領代行は、声明を発表し、クラマトルスクの飛行場を奪回したことを明らかにした。一方、治安当局によると、近くのスラビャンスクでは武装勢力に対する「反テロリスト作戦」が進行している。
トゥルチノフ大統領代行はこれに先立ち、議会で演説。「ドネツク州の北部で対テロ作戦を開始した。ただ、作戦は段階的に行う。この作戦はウクライナ市民を守ることが目的だ」と強調していた。
ウクライナ政府による親ロシア派勢力排除を受け、ロシアと西側諸国の対立はさらに先鋭化しそうだ。
ウクライナ東部での軍事行動を嫌気しロシア株は急落、主要株価指数はおよそ3%下げた。
ロシアのメドベージェフ首相はフェイスブックで「再び流血の事態となった。ウクライナは内戦の瀬戸際にある」と述べた。
<ロシア派市民脅かされている事実ない>
ロシアは、ロシア系住民の権利を無視し危機を助長したとして、ウクライナ政府を批判している。
だが国連はこの日、「ロシア系コミュニティーに対する攻撃も一部で見られたが、組織だったものではなく、大規模に行われてもいない」との報告書を公表。ロシア系住民が著しく脅かされているとのロシアの主張に疑問を投げかける格好となった。
ロシアは報告書は一方的な見解とし、政治的意図からねつ造されたのは明らかと反論している。
北大西洋条約機構(NATO)のラスムセン事務総長は、ルクセンブルクで開催された欧州連合(EU)国防相会合で記者団に対し、ウクライナ危機に関し「ロシアが深く関与しているのは明らかだ」と批判した。
一方、ロシアのラブロフ外相はウクライナ東部・南東部で親ロ派武装勢力による危機をあおっているとの見方を否定。
17日に開催される米ロとEU、ウクライナによる外相レベルの4者会談を控え、「武力行使は交渉の機会を阻害する」として、ウクライナ政府に自制を求めた。
<ウクライナへの天然ガス供給を開始>
ロシアがウクライナへのガス供給を停止するとの懸念がくすぶる中、ドイツのエネルギー大手RWE
RWEによると、供給されるガスはロシア、ノルウェー、EU産がそれぞれ3分の1程度を占めるとみられ、欧州の卸売価格で販売される。
ポーランドでパイプラインを運営するガス・システムは、同国経由のウクライナへの供給が1日当たり400万立方メートル、年間で15億立方メートル相当だと明らかにした。
[キエフ/スラビャンスク(ウクライナ) 15日 ロイター]
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