イギリス議会の総選挙が5月7日に行われる。投票は即日開票され、8日早朝ごろに大勢が判明する見通しだ。
選挙の主な争点は、財政、経済政策、欧州連合(EU)に残留するかどうかの国民投票の是非など。各政党間の主張が激しくぶつかりあっており、選挙後の連立政権によっては、イギリスの政局に波乱が怒る可能性もある。そこで、イギリス総選挙の連立政権を占う上で重要となる4つのキーワードをまとめてみた。
ロンドンのテムズ川のほとりに建つウェストミンスター宮殿に議会がある
「ハング・パーラメント(宙づり議会)」
イギリス議会は二院制で、貴族院と庶民院(下院)からなる。貴族院は象徴的な存在で、法案決定は庶民院による事実上の一院制だ。
今回行われるのは、庶民院の選挙で定数は650。小選挙区制で650の選挙区から1人ずつ選ばれる。
世論調査による支持率は現在の2大政党、保守党、労働党ともに35%で接戦となっているが、どちらも単独過半数に届かない「ハング・パーラメント」になると見られている。
ハング・パーラメントとは「宙づり議会」の意味で、どの政党も過半数を確保できない不安定な議会の状態を指す。この場合は連立政権が組まれることになる。
「おじさん人脈」
2010年の前回総選挙でもイギリスではハング・パーラメントの状態に陥った。この時は57議席で第3党の自由民主党が労働党、または保守党のどちらと連立を組むかの二者択一で、自由民主党は保守党を選んだ。
保守党のキャメロン首相と、自由民主党のクレッグ副首相
しかし今回、自由民主党は大幅に議席を減らす見込みで、2大政党と自由民主党とによる2党連立では過半数に届かない可能性が高い。そのため2014年9月のスコットランド独立をめぐる住民投票を受けて自治権限拡大を求めるスコットランド民族党(SNP=エスエヌピー)や、EUからの離脱を主張する極右のイギリス独立党(UKIP=ユーキップ)などを交えた、複数政党による連立交渉が必要となる。
自民党を抜いて第3党に躍進することが確実視されるのがSNPだ。しかし、SNPのスタージョン党首は、「保守党政権を排除する」と繰り返し公言。4月2日に行われた党首討論会では、「今夜の討論では、なぜウエストミンスター(議会)にオールドボーイズネットワーク(おじさん人脈)が不要なのか明らかになる」と述べ、保守党と組む可能性を全面的に否定している。
SNPのスタージョン党首
「おじさん人脈」とは議会のこれまでのやり方を揶揄した言い回しだ。この討論会には7人の投手が参加していたが、保守党・労働党・自由民主党・UKIPの男性党首に対して、残りの3人(SNP、プライド・カムリ、緑の党)は女性党首だった。3人の女性党首陣は「左派女性党首連合」とも呼ばれ、イギリスが保有する長距離核弾道ミサイル「トライデント」を搭載する原子力潜水の撤廃でも結束している。
4月2日の党首討論後に抱きあう女性党首3人
「スコットランド黙示録」
SNPの基本政策はスコットランドの独立だが、保守党はこの点を攻撃する。キャメロン首相は、労働党がSNPと連携すると「英経済に地獄がやってくる」と断言しており、スタージョン氏について「スコットランドの独立と英国の破壊をもくろんでいる」と警告する。ミリバンド氏がポケットに入れられ、スタージョン氏に見張られている選挙ポスターまで作成した。
また、保守党の政治家でロンドン市長のボリス・ジョンソン氏は、労働党とSNPによる政権が、世界の終わりを記した「黙示録(Ajockalypse)」と「スコットランド兵士(Jock)」を文字った「Ajockalypse=スコットランドの黙示録」だとコメント。シェークスピアの小説「マクベス」に登場するセリフを引用し、「疲れた二人の泳ぎ手は、がっちり掴み合って互いの技を窒息させる」と述べた。
ロンドン市長のボリス・ジョンソン氏(左)とキャメロン首相(右)
「保守の争い」
連立政権に絡んできそうな政党は他にもある。右派政党のイギリス独立党(UKIP=ユーキップ)もその一つだ。欧州連合(EU)離脱を掲げ、座席を伸ばしてきた。
UKIPがEU脱退を掲げるのは、移民が増えすぎだとする考え方にある。EUでは「自由な移動」が原則であるため、2004年以降に加盟した東欧諸国からイギリスへの移民の数が急増。公営住宅の不足や教育の質の低下、公的年金への不安や高い失業率などが問題となっている。
UKIPのファラージ党首
UKIPのファラージ党首は「我々がEUに留まっている限り、移民は制御できない」と述べ、人気を集めているが、自身の選挙区「サウス・サネット」では、苦戦を強いられている。保守党が元UKIPの候補者を刺客として送り込み、テコ入れしているのだ。
保守党は有権者がUKIPへと流れてしまうことを食い止めなければならないため、EUへの批判的な姿勢を強めてきた。マニフェストには、政権を維持できれば2017年までに、イギリスのEU加盟継続を問う国民投票を実施すると宣言している。
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