『自分らしく生きるために』ウガンダプライドパレードからのメッセージ

好きな人と手をつなぎ歩き、暴力に怯えず、社会の中で認められて生きる事、ウガンダのLGBTコミュニティーが直面している問題はLGBTの人達だけの問題ではない。『自分らしく生きていく』権利は共通の人権であり、みんなで守っていかなくてはいけない。
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廣見恵子

『アフリカの真珠』東アフリカウガンダ共和国ナイル川の水源であるヴィクトリア湖畔で 2014年8月9日にプライドパレードは行われた。その日は国際社会から悪法と名高いウガンダの反同性愛法(通称:Kill the Gays Bill)が8月1日に無効となってから8日目だった。街の喧噪から離れて静かな林の中を車で進むと、ところどころ木の枝についているレインボーの旗やリボンが道標となって車を目的地へ導いてゆく。首都カンパラから車で45分ほど離れた砂浜で行われるプライドパレードを"ビーチプライド"というのだ、と地元のLGBT運動家が教えてくれた。 ウガンダ国内でLGBTへの偏見は根強く、時には暴力の対象となるプライドパレードはカンパラでは行われず、あえて人里離れた郊外で催された。普段ウガンダ社会の陰の中で生きているLGBTメンバー にとって、プライドパレードはだれからも指を指されずに、自身を表現できる場所なのである 。私は取材中、参加者のポートレートを撮らせてもらった。

*プライドパレードとはLGBT文化に誇りを持ち、メンバーが住みやすい社会作りを目指し差別や偏見または法的権利を求める社会運動を基盤とするパレード。

*LGBT : 女性同性愛者(レズビアン)男性同性愛者(ゲイ)両性愛者(バイセクシュアリティ)トランスジェンダーの略。

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2013年の国際レズビアン、ゲイ協会によると同性愛を取り締まる法律は世界で76か国あり、そのうち36カ国はアフリカの国々だ。ウガンダを含めアフリカ諸国の多くは欧英植民地時代からの旧約聖書ソドムとゴムラに基づいた反sodomy 法において同性愛性行為を禁じている。しかし今年2月24日に法律化されたウガンダの反同性愛法(8月1日に無効)は性行為だけではなくLGBTコミュニティーに対する心身のケアを行う団体、LGBTメンバーと知ってアパートを貸し、政府に通知しなかった者など処罰の対象をLGBTサポート側にまでも広げ、LGBTコミュニティーの孤立化、迫害、弾圧を目的としたものである。法律成立直後よりスウェーデン、アメリカなど欧米諸国はウガンダ政府に対し国際援助を大幅に削減するなど同法がLGBTコミュニティーに対する差別と憎悪を煽り固定化させ人権侵害にあたるとし、ウガンダ政府に厳重な抗議の姿勢を示した。この法律の可決の背景には、北米のクリスチャン右翼による"同性愛者=変質者" "同性愛者は青小年にレイプ、性的いたずらをする"または"同性愛が社会の道徳を壊す" という地元のメディアを巻き込んだ徹底したプロパガンダが行われた。 またLGBT運動家達は社会に貢献しているLGBT市民をスケープゴートとし政治家達が深刻な国内問題、不満の本質から国民の目を欺いている、と指摘をする。同国憲法裁判所は8月1日に反同性愛法は議会審議の際に必要な定多数なくして採決された、との理由で同法の無効を宣言した。

今年のプライドパレードは反同性愛法の無効がきまり、皆は喜びにあふれていた。参加者の一人は「このプライドパレードは反同性愛法無効、私たちの勝利のパレード。私にとってそれはとても大切なことで、世界の人たちに反同性愛法を乗り越えて私たちはまだここにいる!と知ってもらいたい 」と語った。しかしウガンダにおけるLGBTIに対する偏見は根強く残っている。 多くのパレード参加者は主催者側から配布された白いマスクを被り顔を隠して参加した。

パレードが行われた翌週月曜日8月11日には保守派議員達によって反同性愛法が議会に再提出された。地元の新聞は"ホモ セックスパーティー"と参加者の顔写真とともにセンセーショナルにかき立てた。(その場にいた私が保証できるが、セックスパーティーではなかったし、新聞で使用された写真も参加者がバレーボールを楽しんでいたり、同性愛支持のシールを顔に貼ったりした写真だった。)8月18日早朝、地元の新聞に顔写真が掲載された若い運動家イザック(3枚目の写真の青年)が何者かに自宅の前で暴力を受けた。金銭は盗られずに、犯人は"おまえのような生き方に恥をしれ"と言い放ったそうだ。LGBTコミュニティーの苦悩、戦いは続く。プライドパレードに参加したトランスジェンダーのHIV positive LGBT運動家でありドラァッグクイーンであるバッドブラックは語る「LGBTメンバーとしてメディアに顔を出す事はウガンダ社会において危険な事は十分承知よ。ただこうやって顔を出して、私たちのこと知ってもらう事も運動の一つだと信じているわ。世界の人たちに私たちはまだここにいる、こうやって戦っているって知ってもらいたいから。」

私はこのパレードを取材するにあたり、ウガンダのLGBT運動家達と親しくなった。取材中の会話で彼らは「2月に反同性愛法が法律化された時、日本政府は欧米諸国と違って国際援助の削除や打ち切りをせずに、これからも反同性愛法と関係なくウガンダ政府との関係を続けてゆく、という旨の声明文を発表したんだ。もちろん援助を打ち切る事がいい、悪いではなく、あえて声明文をだして、自分たちと反同性愛法の無関係さを強調したように僕には思えてショックを受けたよ」と語った。彼らは『自分らしく生きる権利』のために戦っている。好きな人と手をつなぎ歩き、暴力に怯えず、社会の中で認められて生きる事、ウガンダのLGBTコミュニティーが直面している問題はLGBTの人達だけの問題ではない。『自分らしく生きていく』権利は共通の人権であり、みんなで守っていかなくてはいけない。

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顔がわからない事を条件に撮影に応じてくてたパレード参加の青年。主催者側の発表によると今年のプライドパレードには約220人参加した。

最後に取材の際、たくさんのウガンダのLGBT運動家、メンバーの方達に優しく受け入れていただきありがとうございました。特にウガンダスペクトラムのイザックムギシャ氏、ピーターカツサベ氏、モーセキンブグエ氏の友情に感謝します。