もっと生理について話しませんか~ウガンダの南スーダン難民キャンプ~

難民女性の尊厳を守るために
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Plan International

アフリカで、南スーダン難民を一番多く受け入れているウガンダ。プラン・インターナショナルは、ウガンダの南スーダン難民居住区で支援活動を行っています。私は、2018年1月よりウガンダに駐在し、難民女性に尊厳のある生活をしてもらうための、月経衛生管理の支援活動に携わっています。

学校でからかわれ、授業を休みがちな女の子たち

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難民居住区の小学校に通う女子生徒
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紛争を経験した難民の方々は、着の身着のまま、心に傷と不安を抱えて避難してくるケースがほとんどです。ウガンダに暮らす南スーダンの人々も例外ではありません。避難先の難民居住区では、清潔な水の確保や安全なトイレの使用が困難なうえ、思春期の女の子たちの場合には、生理用のナプキンが不足し、生理について相談する母親や姉妹が側にいないことが問題となっています。生理の仕組みがわからない女の子たちは、生理中に学校で制服が汚れると、男子生徒から容赦ないからかいにあいます。その結果、毎月生理になると1週間は学校に通えなくなり、家の中にこもりがちになってしまいます。

難民女性の尊厳を守るために

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難民居住区に住む女性たち
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ウガンダの難民居住区では、プランを含む月経衛生管理を専門に支援する団体間で調整会議が開かれます。男性スタッフが半数以上を占める同会議では、居住区に住むすべての女性たちが尊厳をもって衛生的に生理期間を過ごすことができるよう、「生理用品キット」(ポーチ、腰巻布、石鹸、布ナプキン、下着)を配布するための役割分担を行います。

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生理用品キットを受け取りうれしそうな女性
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このセットの中身と配布頻度にはルールがあります。配布前には女性たちに対し、生理に関する基礎知識や生理用ナプキンの正しい使用方法などの情報を共有する機会を設けます。物資を配布した団体は、女性たちへの聞き取り調査を通して、女性たちが困っていること、生理に関するよりよい支援をするためにはどうすべきかなど改善方法を検討します。このように、男性を含む関係者が、生理について話し合うのが当たり前の世界が広がっています。

女性たちから寄せられた意見をいくつかご紹介します。

・「お金がなく使い捨てナプキンは買えないので、これまでは毛布や古着を切って使用していた」

・「この再利用可能なナプキンはとても使い心地がよく、ナプキンを洗うためのバケツや保存する袋もあって助かる」

・「からかわれる不安もなく学校に通い続けることができるようになった」

男の子や男性も巻き込む

プランが実施した「生理用ナプキン手作りワークショップ」には、参加者100人の中に、8人の男性がいました。このワークショップでは、月経管理のみならず、思春期の性と生殖に関する健康についての教育も盛り込みました。また、さまざまなタイプの生理用品、生理用パッドの破棄方法、生理期間中の過ごし方などについても話し合いました。タブーとされ敬遠されがちな生理に関するワークショップへの参加を決めた男の子たちに理由を尋ねてみたところ、「生理についての情報は、男性も知るべきことだから。何も知らなかったときは女子生徒をからかったりしていたが、すべきでないと分かった。この生理用パッドの作り方は、妹たちや近所の女性にも伝えたいので、もっと材料が欲しい」と意欲的な答えが返ってきました。

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男性も参加する手作り生理用ナプキンワークショップ
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もちろんプランスタッフも女性と男性が参加します
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私が人道支援の世界に入りたてのころ、同じ支援の現場に「緊急支援活動に生理用品の配布を含めるべきだと語る愚かな人がいた」との発言をした男性スタッフがいましたが、当時の私にはその考えを変える力がありませんでした。確かに緊急時にはまず命を救うべきですが、日々の生活のなかで生理用品は女性にとっては大変重要なアイテムです。ウガンダでの難民支援の活動を通して、今は自信をもって言えます。緊急時こそ、生理について真正面から取り組む必要があると。女性の尊厳を守るために、男性の理解を促すために。

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西田亜理沙  プラン・インターナショナル プログラム部 ウガンダ駐在

にしだ ありさ 東京都出身 米国、ヨルダン、スリランカなど海外在住歴18年。一般企業、米国大学院(国際開発教育学、修士号取得)、米国NPOを経て、日系NGOに入局。その後、2013年にイラクの国内避難民への教育開発支援、2014~15年にスリランカの帰還民に対する生計回復、2016~17年のヨルダンに避難するシリア難民の支援を経て、2017年末に、公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンに入局。現在、世界で3番目に多くの難民を抱えるウガンダ(アルア県)に駐在し、南スーダン難民の子どもの保護活動に従事している。