ここ1週間位、竹中平蔵氏の「正社員をなくしましょう」発言が話題になっている。
正社員をなくした方がいいのかどうか、立場によって賛否がバラバラなのは、当然だ。
でも色々な考え方があるから、その分様々な働き方・雇用関係・地位を認めることが大切ではないだろうか。
正社員が必要かどうかの議論の前に、まず正社員のメリット・デメリットを私なりに整理してみたい。
なおこれは大手企業を想定した労働者視点のメリット・デメリットなので、経営者サイドとは反対になる。
<正社員のメリット>
・雇用が安定している。簡単にクビにならない。
・クビになりにくいから、ローンを組みやすい。
・福利厚生などが充実。
<正社員のデメリット>
・経営サイドの好きなように働かされる。社畜化・奴隷化される可能性がある。
・終身雇用が前提のため、福利厚生や退職金などの金が割かれる分、給料が低い。
私は上記のメリット・デメリットが真実であり、社会的に受け入れられている事実ならば、こうした企業内で正社員・非正規社員(契約社員や派遣社員)など、多様な働き方が柔軟に選べることは賛成だ。
だが労働現場では、このメリット・デメリットが真実ではなく、非正規社員と比較して正社員が圧倒的に有利な会社も多いだろう。
非正規社員の契約社員で、正社員と同じ仕事をしているのに、給料が安くて、雇用も安定していない。
こういう企業に心当たりのある人は多いと思うが、これは非常に不公平だ。
正社員になれる可能性をちらつかされて、その働きっぷりをみるという理由で5年間など、長期間社畜化して安い賃金で働かされる非正規社員。
これは、非正規社員の搾取だ。彼らには何のメリットもない。
若い正社員が安い給料で、何も役に立たない年寄り正社員を支えるのは、多くの会社で既に割が合わなくなっているが、非正規社員には完全に関係ない話だ。
契約社員が本当に契約した内容だけ働いて社畜化されず、有期雇用のリスクも考慮されれば、雇用に関して正社員非正規社員とは、働き方の違いだけだ。
しかし、無意味に正社員の立場だけが高い正社員制度ならば、その不公平な格差は問題だ。
それは、非正規社員の搾取から生まれる、正社員への不公平な利益移転だ。
同じ仕事をして同じ結果を出すならば、不公平に扱う理由がみあたらない。
同じ企業に長くいることを評価するならば、正規・非正規関係なく、そこは評価してもいいはずだ。
好き嫌いで経営するオーナー企業ならば、まだしょうがないのかもしれない。
しかしパブリック企業は、不公平な正社員・非正規社員の格差について考えるべきだ。
なんか期せずして、言ってることが竹中さんにちょっと近い感じになってしまった。
繰り返すが、現代だからこそ、多様な考え方・働き方・雇用関係・地位が認められるべきだ。
しかし、それは今の状態のまま、非正規社員が増えることではない。
格差社会と世間では騒がれるが、違いがあること自体は悪いことではない。
仕事にも違いはあるし、職能にも違いがある。その違いから、報酬が違うことも当然だと思う。
何をしても皆が全く同じことが格差ゼロ社会ならば、それこそ気持ち悪いし、やる気が出ない。
しかし、その違いが圧倒的に不公平である場合、その違い(格差)は問題視されるべきだ。
この正社員非正社員問題の本質は、そうした実質的な格差なのだ。
多様な選択肢がある職業環境の前提として、正規社員・非正規社員などの立場だけによって、圧倒的な格差が発生しない環境整備が必要だ。
アリヴェデルチッ!
(2015年1月13日「yubu23.com」より転載)