2728匹のお母さんに、名古屋港水族館のアカウミガメは繁殖日本一

子ガメは国内各地や韓国の水族館、高知大学でも育てられています。

名古屋港水族館(愛知県名古屋市)に子だくさんで知られるアカウミガメがいます。8月までに2728匹の子ガメが誕生しました。日本の水族館では一番多く、世界でもめずらしいようです。

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取材日は砂場で2時間ほど休憩していた名古屋港水族館のアカウミガメ「6番」=愛知県名古屋市、猪野元健撮影

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卵から孵化したばかりの子ガメ=名古屋港水族館提供

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生まれた子ガメはこうらの長さ4センチ、体重17グラムほど=愛知県名古屋市、猪野元健撮影

正式な名前は「CcW―06」(*)で、名古屋港水族館に6番目に入ったウミガメということから「6番」と呼ばれています。体重90キロ、甲羅の長さは79センチ。職員の見立てでは、40歳は過ぎています。

*「CcW―06」「Caretta caretta(ウミガメの学名)」「Wild(野生)」「―06(6番目)」の意味です。

1991年に静岡県焼津市沖で漁の網に入り、同年から名古屋港水族館で飼育されています。3年目に産卵し、それから23年間で産まなかったのは3年だけです。今年は6月と7月に計246個の卵を産み、このうち23個が8月にふ化しました。これまでに産んだ卵の合計は4299個、ふ化したのは計2728匹になりました。子ガメは国内各地や韓国の水族館、高知大学でも育てられています。

ウミガメの飼育で有名な沖縄美ら海水族館(沖縄県本部町)や串本海中公園水族館(和歌山県串本町)にも、これだけ繁殖したウミガメはいません。知られていなかったウミガメの高い繁殖能力を、「6番」が示したことになります。

ウミガメに詳しい岡山理科大学生物地球学部の亀崎直樹さんは「野生のウミガメの調査は難しく、何歳まで繁殖するかも、どれだけ産卵できるのかもわかっていません。名古屋港水族館のウミガメの記録は貴重で、世界中の水族館を探してもこれだけ産卵していることがわかっている例はないのでは」と話します。

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おすのウミガメと交尾をする「6番」(手前)=名古屋港水族館提供

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「6番」が産卵した卵を確認する職員=名古屋港水族館提供

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子ガメを手のひらにのせる名古屋港水族館飼育係の松田乾さん=愛知県名古屋市、猪野元健撮影

名古屋港水族館はウミガメがくらしやすい環境をつくろうと、水温や砂の温度を調整したり、夜間に警備員が歩く足音を小さくしたりと工夫してきました。飼育係の松田乾さんは「成熟しても産卵しないウミガメもいますが、6番は長い間順調に産んでいます。おとなしい性格で、水族館に相性のいいオスがいるのも良かったみたいです」と話します。

去年3月、「6番」は公益財団法人日本動物愛護協会から「日本動物大賞・功労動物賞」を受賞しました。長生きしている動物や、人と動物の共生への理解に貢献した動物が選ばれる賞で、カメでは初めてだそうです。

松田さんは「6番」を通じて、絶滅が心配されている野生のアカウミガメにも思いをよせてほしいといいます。「これだけ繁殖能力があるのにウミガメが少ないのは、自然環境の変化に対応できていないとも言えます。産卵する砂場が開発で少なくなったり夜も人工の光で明るくなったりするのも原因でしょう。自然を守る大切さを知ってほしいです」

小学生向けの新聞「朝日小学生新聞」8月17日付の記事を再構成しました。媒体について詳しくはジュニア朝日のウェブサイト(https://asagaku.com/)へ。