トルコ、大手新聞社を政府管理下に 言論弾圧にEUが沈黙する理由とは

トルコ当局は4日、トルコの大手新聞ザマン紙の強制捜査に踏み切り、政府に批判的な報道機関を、一夜にして実質政府の代弁者にしてしまった。
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トルコ当局が新聞社を強制捜査した翌日、ザマン紙を掲げる男性

ベルギーのブリュッセルで3月7日、移民問題を協議する歴史的なヨーロッパ連合(EU)とトルコの首脳会議が開かれた。一方でトルコのジャーナリストらは、トルコ政府による言論弾圧に、「EUが目を背けている」と強く非難した。

トルコ当局は4日、トルコの大手新聞ザマン紙の強制捜査に踏み切り、政府に批判的な報道機関を、一夜にして実質政府の代弁者にしてしまった。すぐに抗議デモが起き、検閲に抗議し記者への連帯を表明するため、ザマン社の外に集まったデモ参加者らに、治安部隊は催涙弾を使用した。

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その3日後、トルコのアフメト・ダウトオール首相とEU幹部は握手を交わした。トルコを中継地点として、増加する移民・難民に対処するための切迫した会議だった。

EUは、現在トルコに住む270万人以上のシリア難民を支援するため、60億ドルの援助を約束した。それはこの冬、トルコに約束した額の2倍におよぶ。数十万人の難民がヨーロッパへ押し寄せている中で、この5年、多くの負担が中継地となるトルコにのしかかっている。

EUはトルコに対し、密入国者の取り締まり厳格化と、NATOの船舶が難民や移民をトルコ沿岸に送還できることを求めた。その資金に加え、トルコ政府はEU加盟協議の前進を求め、トルコ国民がビザなしで移動できるようにすることを最優先課題とした。

「トルコには表現の自由がない」

複数のEU幹部はダウトオール首相と、トルコで最近、報道の自由への懸念について、率直に話をしたようだ。

「あまりに小さいし遅すぎる」、4日、やはり政府管理下に置かれたザマンの姉妹紙「Today's Zaman」のある記者は、EUのトルコ非難が限定的だったことを批判した。「EUと協議を続けたいなら、トルコは報道の自由を確保すべきだ。EUは、ヨーロッパの価値観に目をつぶっている」。

「トルコには表現の自由がない」。このジャーナリストは匿名を条件にワールドポスト(ハフポストUS版)に打ち明けた。日曜版から記事が削除された。記者は政府のさらなる報復を恐れている。

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政府当局が新聞社を管理下に置いた2日後の3月6日、イスタンブールにあるトルコの大手新聞社ザマン本社周辺を歩く治安部隊。

EUのスポークスマンは5日、EU加盟候補国のトルコについて「メディアの自由も含め、民主主義の原則と実施を尊重し、推進する必要がある」と強調した。7日にはフランスのフランソワ・オランド大統領が、トルコとEUの協調関係は無条件ではないと主張。「トルコを含め、あらゆる場所で報道は自由でなければならない」と述べた。

しかし今までのところ、トルコはEUとの協議が進展したので、反体制派と批判者への厳格な取り締まりを緩めるつもりはないようだ。

「EUは、難民問題に対処する唯一の方法は、トルコを怒らせないことだと理解している。それを最優先にしています」とToday's Zamanの女性記者Gulten Ustuntagは述べた。4日以降に彼女が書いた記事で、イスタンブールの裁判所が任命した新聞管財人が承認したものはないという。

新聞社の従業員たちは、解雇されるのを待っているという。少なくとも解雇手当を受け取ることができるからだ。

ザマンは、トルコの市民運動に大きな影響力を持つ宗教指導者、フェトフッラー・ギュレンと親密な関係にある。ギュレンはかつてエルドアン大統領の盟友だったが、その後は同盟関係を一転し仇敵となった。エルドアン大統領は2014年8月に大統領に選ばれたが、その前に10年以上首相を務めていた、賛否両論のある人物だ。

現在、アメリカのペンシルバニア州に亡命しているギュレン氏を、エルドアン大統領はトルコ政府の転覆を謀ったと糾弾している。

2015年10月10日、首都アンカラで起きた自爆テロ。

シリア内戦は近隣諸国にも波及しているが、トルコは比較的安定しており、戦火を逃れる人々の避難場所となっている。しかし最近、さらなる自由を求めるクルド過激派との衝突や、過激派組織「イスラム国」の自爆テロが頻発しており、トルコ政府は国内の治安悪化という課題に直面している。

2月26日、首都アンカラの大統領公邸であった海外記者との会議で、スポークスマンのイブラヒム・カリン氏は、国内の治安と報道の自由について「完全なバランスを取ることは容易ではない」と述べた。彼はトルコ政府を擁護し、ジャーナリズムには「常に事実とフィクションが入り混じっている」と批判した。

4日のザマンへの強制捜査について、トルコ政府の報道担当者にコメントを求めたが、回答はなかった。

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3月6日の「ザマン」

「トルコ政府は、この暴挙に口出しさせないために、難民問題をEUとの交渉カードに利用しています」。ザマン編集長のCelil Sagirは、4日以降、厳重な警備が敷かれている新聞社の事務所から、ワールドポストとの電話インタビューで語った。

ザマンとToday's Zamanのジャーナリストは、遠巻きにブリュッセルの会議を見つめ、強い抗議が届かないことに、先の見えない悲運と激しい怒りを感じた。中には、このまま発言を続れば裁判にかけられ、収監されるのではないかと心配する人もいる。

「どこに行って働こうか」。編集長の言葉からは、トルコで政府に対峙できる独立系の報道機関がほぼ存在しないという現実がにじむ。「このトンネルの出口に光がみえない」。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

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