多くの女性が「隠れ我慢」を抱えているといわれています。
「隠れ我慢」とは、心身の不調を我慢していつも通りに仕事や家事を行うこと。ツムラが実施した調査では、全国20~50代女性の約8割が「隠れ我慢」を抱えながら日々過ごしていることが分かりました。
美容系動画クリエイターとしてYouTubeなどで活躍する佐々木あさひさんは、「隠れ我慢をしないためにも、まずは自分の心地よい状態を知る」ことが大切だと投げかけます。
限界まで自分を嫌いになって気付いたこと
──ツムラの調査によると、20〜50代女性の約8割が「隠れ我慢」をしているそうです。この傾向をどう思いますか?
私も以前は「嫌われたくない」「よく思われたい」という自分の弱さから、我慢を重ね過ぎて体が悲鳴を上げ、倒れてしまうこともありました。今となっては、どうしてあんなに我慢していたんだろうと思います。
自分の不調を打ち明けても、嫌われない人には嫌われないし、むしろ言った方が、打ち解けられるのに、どこかでバリアを張ってしまっていたな、と。
「隠れ我慢をしている」と答えた8割の女性も、以前の私と同じで「嫌われたくない」という思いが根底にあるんじゃないかな?と思います。
──まさに、我慢する理由として「周囲に迷惑をかけたくない」という回答が多くあります。
めちゃめちゃ共感します。女性に限らず、日本人は文化的に「頑張ることがすごい」みたいな思い込みを幼少期から植え付けられてしまっていますよね。それってすごく私たちを苦しめている。
でも同時に「がむしゃらに頑張れること」って、自分のモチベーションになるときもあるから、バランスが難しいですよね。
私の場合でいうと、YouTubeに動画をコンスタントにアップし続けるのはとても大変で、不調を感じる時も我慢を重ねながらやってきた部分があります。でもそれが今の仕事に結び付いているから、あの時頑張ってくれた自分に「ありがとう」って思います。
一方で、どんなに頑張り続けても、自分としては全然満足ができなかったんです。「今のままじゃだめだ」という焦りが先立ち、ゴールがないまま走り続けていた。自分で自分の頑張りを認められなかったんです。
──どうやってその状態から脱したのですか?
小さなことでいいから、「できたこと」をちゃんと認めることから始めました。例えば「今日も朝ちゃんと起きられた」とか、目の前の小さなことでも「ちゃんとできたね」って自分に言ってあげるんです。
それまでは何をしても満足感が得られず、同じ円の中をぐるぐる回っている感覚でした。でも自分ができたことを一つずつちゃんと認めることで、円がパーッと開けて、前に進む道が見えてきました。
──その一歩を踏み出せたのは、なぜでしょう?
限界まで自分を嫌いになったから、かな……。
何を頑張っても満たされなくて、がむしゃらに頑張っても成功した実感がなくて、そんな自分を認められなくて。気持ちがどん底まで落ち切ってから、大きく変化してきた気がします。
まずは自分の思い込みを手放してみました。例えば、不調のときに「周りに負担をかけたくないから、なんとか自分でやろう。」というのも、ある意味では自分の思い込みの一つかもしれませんよね。
迷惑をかけたくないからと自分で抱え込んで、さらに体調が悪化してしまったら、もっと周囲に迷惑をかけることになる。そういった思い込みを手放すことで、自分の行動を一つずつ認められるようになりました。
自分が心地よい状態を知ること
──そんな佐々木さんは、自分の心や体、生理や不調などと、どのように向き合っていますか?
お風呂に長く入ったり、おなかを温めたり、冷たいものを飲まないようにしたり。不調のときは体を温めて、体を冷やすような食材をなるべくとらないように意識しています。
あとポイントとしては、「自分の心地よい状態」を意識するようになりました。自分の体や心が、どういうことをすると心地よいと感じるか、気持ちいいとはどういう状態かを知ることが大事だなと、最近ようやく気付いたんです。
──自分の体の状態を知るって、意外と難しそうです。
例えば私は今日このインタビューの直前に、自分の手を触ったら「いつもよりちょっと冷えているな」と気付いて。それで「緊張しているのかもしれない。ちゃんと深呼吸してみよう」と思ったんです。
実際やってみたらリラックスできて頭もクリアになりました。こういう感じで、日頃から少しずつでいいので、自分の体や心に意識を向けると、自分のベストな状態が分かるようになってきます。
心地よい状態が分からないなという人は、逆に、自分の「不調の状態」を書き出してみるのもいいかも。自分が「嫌だな、不快だな」と思うのは、どういうときか。人に話したり書き出したりすることでよりいっそう可視化されて、そうならないことを意識するようになります。
あと私は、たまにカウンセリングに行って、自分を内観するサポートをしてもらっています。日本だとカウンセリングはまだまだハードルが高く受け取られがちですが、整体に行って体を整えるくらいの感覚で、気軽にカウンセリングに行って心の状態を知るのも、セルフケアのひとつになると思います。
──少し立ち止まって、意識を自分に向けてみる習慣を身に付けるということですね。
そうですね。私たちって常日頃から、めちゃめちゃ流れの速い川の中にいるようなものですよね。ちゃんと地に足が着いていないと、自分のバランスを崩されてすぐに流されてしまう。
だから、根付かせる足を鍛えることが大事。そのための基礎になるのが、「自分の状態を知る」ことだと思います。
みんな十分頑張っているから、ふにゃふにゃになろう
──#OneMoreChoice とのタイアップ動画を制作したことで、ファンの方からどんな声が届きましたか?
「あさひさんも私と一緒なんだ、自分だけじゃなかったんだ」というような共感のコメントをたくさんもらって、うれしかったですね。
「こういうふうにガス抜きすればいいんだ」っていうコメントをしている人もいて、純粋にこの動画を作ってよかったなって思いました。
動画を公開してから時間がたった今でも定期的にコメントが来ているので、みんなが気になることなんだって思ったのと同時に、みんな我慢して生きているんだなと、気付きました。
私、自分の動画を見返すことってなかなかないんですけど、今朝この動画を見返してみたら「めっちゃいい動画だな!」って思いました(笑)。
私はこの動画を介して「皆さんはもう十分頑張っていますよ」ということを伝えたかったんです。
「みんなもっと力を抜いて、ふにゃふにゃになろう」という根っこにあるメッセージが、この動画ではちゃんと自分の言葉で伝えられている気がします。
これがわたしの#OneMoreChoice
「十分頑張っているから、頑張らない」です。
自分が十分頑張っていることに気付けなかったり、自分自身を認められなかったりするのは、つらいと思うんです。そんな人たちに「大丈夫だよ、十分頑張っているよ」と、伝えたいですね。
取材・文=川口あい 撮影=Shin Ishikawa
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