「ウルトラマンは誰の物?」を問う裁判、円谷プロがアメリカ地裁で勝訴

タイ人実業家の「契約書」が本物か否かが焦点に。日本と中国では敗訴していた。

特撮番組「ウルトラマン」シリーズの海外利用権をめぐる裁判で、円谷プロは4月24日、アメリカのカリフォルニア中央区地方裁判所で全面勝訴したと発表した

「ウルトラマン」の海外利用権をめぐっては、制作した円谷プロと、権利を譲渡されたと主張するタイ人実業家サイドとの間で争いがあり、20年以上にわたって複数の国で裁判が行われてきた。

このうち日本と中国では、円谷プロが敗訴し、「ウルトラマン」の海外展開で大きな障害になっていた。

今回の判決が確定すれば、アメリカでは円谷プロが 「ウルトラマン」を商品展開できることになりそうだ。

■ウルトラマン裁判とは?

Open Image Modal
テレビシリーズ用に独自に制作したウルトラマンを紹介するセンゲンチャイさん(タイのアユタヤ市にある自宅にて、2008年撮影)
Kenji Ando

争いを起こしたタイ人実業家のソンポート・センゲンチャイさんは、ウルトラマンの監修をした「特撮の神様」故・円谷英二氏に1960年代に師事した。また、円谷英二氏の息子で円谷プロ元社長、故・円谷皐(のぼる)氏ともセンゲンチャイさんは親交を深めた。

1995年の皐氏の死去後、センゲンチャイさんは円谷プロに対して、次のように主張した。

「皐さんから、ウルトラQからウルトラマンタロウまでの作品の海外利用権を譲渡するというサインと社判入りの契約書を1976年にもらった。円谷プロは自分に無断で海外展開しないで欲しい」

センゲンチャイさんが提示した契約書に対して、円谷プロは「偽造されたものだ」と反発。日本では1997年から裁判が始まった。2004年に最高裁は「契約書の社判は本物である」と認定したことでセンゲンチャイさん側が勝訴した。円谷プロには、ウルトラマンシリーズの海外利用権がないという判決が下った。

一方、タイでも裁判になっており、同国の最高裁は2008年に「契約書はサインが違うので偽物」として円谷プロが勝訴した。こうして、少なくともタイでは円谷プロに権利があるという判断になった。

同年12月、センゲンチャイさん側の権利は、東京都港区のユーエム社(上松盛明社長)に譲渡されたが、各国での裁判は続いた。

2013年の中国最高裁では、社判を理由にセンゲンチャイさん側が勝訴するなど一進一退の攻防が続いていた。

円谷プロによると、2018年4月18日のアメリカの地裁判決では、問題の契約書が「円谷皐によって署名され捺印された真正な契約書ではなく、効力はない」と判断されたという。