シンディ・ローパー「よりによって奴が言う?」トランプ氏、女性の肌に異常にこだわる

「お前はいったい何様なの? って感じ」
|
Open Image Modal

『アプレンティス』の撮影中、実際に番組で放送されなかった内容も記録されていた。

アメリカ大統領選で民主党の参謀たちは、共和党候補ドナルド・トランプ氏が出演していたリアリティー番組『アプレンティス』の未公開映像を入手するために、数百万ドルを出すと申し出た。これは、10月7日に発覚した、トランプ氏が女性の「性器をつかむ」と発言した場面が録音された2005年の映像のような、台本にない発言の瞬間を再び発見できるのではとの期待からだ。

2004年からNBCで12シーズン放送された『アプレンティス』(「見習い」の意味)は、出演者がトランプ氏が経営する企業でのポスト就任を争うリアリティ番組で、トランプ氏が出演者をふるい落とす際のセリフ「You're fired!(お前はクビだ!)」は全米で流行語となった。

しかし、掘り出し物なのは動画だけではなかった。マーク・バーネット氏がプロデューサーを務めた『アプレンティス』では、書き起こしサービスが利用されていた。同番組の複数の関係者によると、筆記者は、最終的に放送されなかった場面もいくつか書き起こしている。

書き起こしがどれだけ残っているかは定かではない。消息筋によると、時々番組で放送されると思われる内容だけを記録することもある筆記者もいれば、放送されるか否かに関わらず、発言をすべて記録する筆記者もいた。

『アプレンティス』の関係者は、筆記録と未放送の映像公開に関して極めて慎重だ。BuzzFeedによると、バーネット氏はトランプ氏の支持者と伝えられており、情報を漏らすスタッフがいれば秘密保持契約に違反するとして訴えると警告している。

ハフポストUS版は、『アプレンティス』第9シーズンのエピソードの書き起こしを1件入手し、その信憑性も確認することができた。この記録は、マイクに拾われたトランプ氏の2005年の発言ほど驚く内容ではないが、トランプ氏の女性の外見に対するこだわりが垣間見える。トランプ氏の性格をあらわすこのこだわりには「スターなら女はやらせてくれる。何でもできるんだ」とトランプ氏が自慢したことが公になって以来、さらに注目が集まっている。(トランプ氏は、行動に移してはいないと主張している)

このエピソードのタイトルは「Beauty and Brains(美貌と頭脳)」で、2010年に放送された。コンテスト出場者はカントリー・ミュージック・スターのイメチェプランを課され、音楽業界関係者3人に評価してもらうという内容だ。番組内で彼らは、スターたちのインタビュースキルをみがき、宣伝用パッケージを制作し、そして生のラジオ番組やパフォーマンスの準備を手伝った。

片方のチームは、のちに「アメリカズ・ゴット・タレント(America’s Got Talent)」への出場を果たした新進ミュージシャン、エミリー・ウェストを担当した。そしてもう片方は、カントリー・ミュージック歌手兼ソングライターで成功した男性シンガー、ルーク・ブライアンを担当した。

どちらがよりうまくアーティストを変身させることができたかを決定する重役会議でトランプ氏は、ウェストの外見、特に彼女の肌について何度も話を切り替え、時には不機嫌な様子だった。

■ トランプ氏の発言をシンディ・ローパーが遮る

書き起こしによると彼は、「これは放送しないんだろうな。いいか、こんなくだらない内容は番組で使わないでくれよ。いずれにしても彼女の肌だ。彼女の肌はひどいな。そうだろ?」と発言している。「とにかく彼女の肌だ。彼女は相当スキンケアの世話にならなきゃいけないな」

エミリー・ウェスト側チームのリーダーを務めた歌手シンディ・ローパーはトランプ氏の発言をさえぎり、「ドライなもの」(おそらくメイクのことだと思われる)を使ったと説明し、トランプ氏が文句を言うべきは「彼女の肌でない」と言った。しかし彼は相変わらず不満そうだった。

Open Image Modal

カントリー・ミュージック歌手エミリー・ウェストは、2010年に『アプレンティス』に出演した。

ミーティングの最中、トランプは何度も「ちくしょう」と罵った。「エミリーのことだ。俺が聞いているのは。もう1人の方(ルーク・ブライアン)を見せてくれ。これ(会話の内容)は番組では採用しないんだろうな。こいつのキャリアをダメにしたくないからな」

トランプ氏はいったんチームの作業を評価する話に戻ったが、すぐにまたウェストの外見について話し始めた。やり取りは約3分間続いた。

トランプ氏はブライアンについても、「個人的には、私は、もう聞いたかもしれんが、ゲイじゃない。それでも、いいか? エミリーより奴の方が見てくれはいいな」と発言する場面があった。

Open Image Modal

ルーク・ブライアン

トランプ氏はまた、ゲスト審査員として番組に登場したカントリー・ミュージック・スターのトレース・アドキンスに、それぞれのチームが制作したパンフレットについてどう思ったかをたずねた。

「うーん、エミリーの方がちょっと洗練されてていいかな」と、アドキンスは答えた。

そこでトランプ氏は、「お前は本当に肌を気にするタイプじゃないんだな」と、トランプ氏は言った。彼は後になって、テーブルをたたきながら同じことを繰り返した。そして「でもそれは別に悪いことじゃない」とつけ加えた。「私も気にしないタイプなら良かったけどな」

「お前は本当に肌を気にするタイプじゃないんだな」と、トランプ氏は言った。彼は後になって、テーブルをたたきながら同じことを繰り返した。そして「でもそれは別に悪いことじゃない」とつけ加えた。「私も気にしないタイプなら良かったけどな」

■ シンディ・ローパー「お前はいったい何様なの?って感じ」

エミリー・ウェストのチームがこのエピソードを勝ち抜いた。彼女はハフポストUS版に、番組に出演している間にトランプ氏に会ったことはないと語った。それぞれの出番は、別々に撮影されたからだ。トランプ氏が誰を「クビ」にするかを決定し、彼らの「商品」についてコメントする会議室には、アプレンティスたちが集合した。

「トレース・アドキンスには認められました。私はそれで満足です」とウェストは言う。

ローパーは、このエピソードの未放送部分について、ハフポストUS版が入手した書き起こしは正しく記録されていることを認めた。

Open Image Modal

シンディ・ローパー

「ええ、もちろん(彼はそう言いました)」と彼女はハフポストに語った。ローパーは、音楽業界ではかなり外見が重視されるとはいえ、トランプ氏には批判する資格はないと語った。「他の誰よりも人の肌についてこだわるなんて! 何で奴が言うの?」と、彼女は言った。「じゃあ、奴の肌はどうだっていうの?」

ローパーはトランプ氏が好きではない。「彼はそういう奴だ」と、彼女は言った。「とにかく、本当に残念だけど」

「[10月9日夜のテレビ討論会では]、[ヒラリー・クリントン氏]がいて、彼はまるで悪党のごとく彼女の後ろをうろついていたでしょ。ヒラリーやビル(クリントン元大統領)に対する話し方もそう。お前はいったい何様なの? って感じ。ありえないでしょ?」と、ローパーは言った。

「彼はリアリティー番組のスター。そして彼のせいで私たちの政治全体が地に堕ちた。なんか昔のニューヨークギャングのやり方みたい」

他の誰よりも人の肌についてこだわるなんて! 何で奴が言うの?

―ーシンディ・ローパー

■ 番組の秘密を漏らせば「罰金5億円」

トランプ氏の広報担当ホープ・ヒックス氏は、選挙活動の一環で「書き起こしの疑惑に対してコメントすることはできない」と述べた。また『アプレンティス』プロデューサーのバーネット氏のオフィスからは、締め切りを過ぎてもコメントがなかった。

しかし、有権者が未放送場面を見られるよう『アプレンティス』の動画アーカイブを公開することは、双方とも拒否した。秘密保持契約を結んでいるため匿名を希望した『アプレンティス』の元スタッフの1人は、「番組とは関係のない雑談を記録することは求められていないが、記録された可能性はある」と認めている。この元スタッフによると、トランプ氏は、撮影されていることを知らずに、女性を品定めするような発言をすることで知られていた。

以前『アプレンティス』の制作に関わっていたビル・プルーイット氏は、トランプ氏の動画の中には「もっとひどいもの」があるとツイートしている。テレビプロデューサーのクリス・ニー氏は『アプレンティス』に関わっていないが、トランプ氏が「Nから始まる言葉」(nigger / ニガー黒人を指す蔑称)を使っている映像があるとスタッフから聞いたことがあるとTwitter上で主張した(ハフポストはこの情報の信憑性を確認できていない)。後にニー氏は、そういった「噂を聞いたことがある」だけだ、とツイートしている。

複数の情報筋によると、『アプレンティス』の制作に関わっていた人たちは、厳格な秘密保持契約書に署名するよう強制された。このため、番組に関する情報について語ったり、それを公開したりすることはできなかった。ハフポストUS版のインタビューを断った元スタッフも数名いる。少なくともその中の1人は、その理由として秘密保持契約をあげている。

ハフポストUS版が目にした同契約書のコピーで、そのような情報を開示した場合、500万ドル(約5億円)の罰金が科されることが確認されている。またクラウドファンディングサイト「GoFundMe」では10月9日、内部告発者に支払うために同じくらいの額を集めることを目的としたキャンペーンが発足した。

トランプ氏に雇用された従業員にとっては秘密保持契約書を結ぶことは当たり前であり、トランプ氏はこれまでにも違反した人を相手取り訴訟を起こしている。彼の元妻イヴァナ・トランプもその1人だ。トランプ氏はまた、彼が関わっていたあるビジネス取引について「ニューヨーク・マガジン」誌に話したとして、当時不動産業界で働いていたバーバラ・コーコラン氏も訴えている。この訴訟は、トランプ氏が敗訴した。

元リアリティー番組のスターであるトランプ氏は、大統領に選ばれたら、「連邦政府高官に秘密保持契約を結ぶよう要求することを検討する」と発言している。

---

ハフポストUS版編注:ドナルド・トランプ氏は世界に16億人いるイスラム教徒をアメリカから締め出すと繰り返し発言してきた嘘ばかりつき極度に外国人を嫌い人種差別主義者ミソジニスト(女性蔑視の人たち)、バーサー(オバマ大統領の出生地はアメリカではないと主張する人たち)として知られる人物である。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

▼画像集が開きます

(スライドショーが見られない方はこちらへ)

Open Image Modal