トランプ大統領、トランスジェンダー保護政策を撤回 「自認する性に応じたトイレの使用」認められず

「大統領はトランスジェンダーの権利を『州の問題であり、連邦政府の問題とすべきではない』と考えている」
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BOSTON, MA - MAY 25: The sign for the gender-neutral bathrooms on the 5th floor of Boston City Hall across from the reception area for the Mayor's office, May 15, 2016. The answer to the question of what restroom signs should say is not clear as transgender activists fight to use the facility that matches their identity. (Photo by John Tlumacki/The Boston Globe via Getty Images)
Boston Globe via Getty Images

アメリカのドナルド・トランプ大統領政権は2月22日、自認する性に応じたトイレの使用を許可する、トランスジェンダー(心と身体の性が一致しない人)の児童・生徒への学校による差別を禁じる政策を撤回すると発表した

バラク・オバマ前政権時代の2016年5月、教育省と法務省は連邦政府から補助金を受けているすべての学校に、「本人が認識している自分の性別(性自認)を、その児童・生徒の性別として扱わなければならない」という通達を出した。例えば、学校は、トランスジェンダーの児童・生徒が、彼らの出生時に割り当てられた性別ではなく、本人の性自認に対応するトイレを使用できるようにしなくてはならない。

当時の連邦政府は、トランスジェンダーの児童・生徒は、性別に基づく差別を禁止する教育改正法第9編「タイトルⅨ」により保護されていると解釈したが、現在のところ、性的指向や性同一性に特化した連邦政府による保護はない。「出生証明書と同一の性別」のトイレを使うよう求める州法(通称「トイレ法案」)を導入しようとするテキサス州など13の州知事がこの解釈に反対を示し、2016年8月に連邦地裁が通達の一時差し止め命令を出したため、現在は保留になっている。

ベッツィ・デボス教育長官は当初撤回に反対し、署名を拒否していたが、通達の撤回には司法省、教育省双方の合意が必要だったため、ジェフ・セッションズ司法長官がデボス氏に署名を強く求めたという。

ワシントンポストが入手したトランプ政権の通達の草案には、この新しい政策は「いじめや嫌がらせを受けている全ての学生への保護を弱めるものではない」と書かれていた。

ホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官は22日の会見で、1972年に法律が可決されたときに性自認についての議論がなかったために、タイトルIXはトランスジェンダーの問題には適用されないとの認識を示した。しかし、これまで司法では、法令や憲法が性自認という新しい問題に適用できるという判断が頻繁に下されている。

また、スパイサー報道官は、デボス教育長官とセッションズ司法長官との間に意見の相違はないと主張した。

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ニュージャージー州グロースター郡に住むトランスジェンダーの10代の若者ギャヴィン・グリムさんは、男子用トイレの使用を妨害されたとして、グロースター郡教育委員会を提訴した。NIKKI KAHN/THE WASHINGTON POST VIA GETTY IMAGES

今回のトランプ政権の通達により、オバマ政権のレガシー(遺産)となったトランスジェンダーの権利保護政策が覆されることになった。トランプ政権はさらに、8月の通達差し止め命令に対し上訴しないとの声明も出している。オバマ政権下では、司法省は判決結果の影響を受けるのは全米ではなく、訴訟に参加した州のみだとの主張を繰り返していた。

トランプ氏は、自分が「レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア(幅広い性的少数者を含む呼び名)」のコミュニティーを擁護する人物だというイメージを出そうと努力を重ねて来ている。トランプ氏は2016年7月21日、共和党全国大会(RNC)の演説で、LBGTの人々をテロ攻撃から守ると誓った。

トランプ氏は2016年11月13日に放送されたニュース番組「60ミニッツ」の中で、最高裁が同性婚を憲法上の権利として認めた判断について「法的に決着済みの問題だ」という見解を示したが、それまでは同性婚は違憲だから支持しないと語っていた。また大統領選期間中、ノースカロライナ州の各都市がLGBTの人々を保護する環境を整備することを禁じた法律を支持していた。トランプ政権の下では、少なくとも2つ反LGBTの大統領令を出すことが検討されている。

スパイサー報道官は21日、大統領はトランスジェンダーの権利を「州の問題であり、連邦政府の問題とすべきではない」と考えていると述べた。

「スパイサー報道官が、トランスジェンダーの若者の福祉、健康、安全を州の問題と見なしているのなら、腹立たしい。事実、アメリカの子どもが、郵便番号(住んでいる場所)によって権利に差があってならないのです」と、GLSEN(グリセン=Gay, Lesbian and Straight Education Network/ゲイ、レズビアン、ストレートのための教育ネットワーク)代表のエリザ・バイヤード氏は答えた。

トランスジェンダーの学生は、学校で頻繁にいじめを経験している。

学校(K-12、幼稚園から12年生まで)でトランスジェンダー、あるいはトランスジェンダーと認識された学生を対象にした「2015年米国トランスジェンダー調査」によると、回答者の大半は、トランスジェンダーであるために「言葉による嫌がらせを受けた(54%)」、「身体的な攻撃を受けた(24%)」、または「性的暴行を受けた(13%)」ことがあると報告した。

司法省公民権局の局長だったバニータ・グプタ氏は2016年12月、ハフィントンポストUS版に「トランスジェンダーの子供たちは学校に行って平等に教育を受ける権利を持っているのに、本来の性別と一致するトイレを使えなくなる。このことで懸念されるのは、反動でトランスジェンダーが平等な教育を受ける機会を失いかねない危機に、多くの人が気づいていないことです。トランスジェンダーが行き場をなくしてしまったように思えます」と語った。

今回のトランプ政権の通達は、バージニア州で男子トイレを利用する権利を求め、学校を相手に裁判を起こした10代のトランスジェンダー、ガビン・グリムさんの裁判にも影響を与える可能性がある。最高裁はこの件に関して3月28日に口頭弁論を予定している。今回トランプ政権がオバマ政権の通達を撤回したことで、最高裁に控訴を棄却する理由を与えた可能性もある。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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