ドナルド・トランプ大統領は日頃からSNSで自分の考えを発信しては物議を醸している人物ではあるが、中でも3月4日のツイートの嵐は驚異的だった。
トランプ大統領は4日の一連のツイートで、選挙期間中にオバマ政権がトランプタワーを盗聴していたと主張した。
「ひどすぎる!」と、トランプ氏は書き込んだ。「勝利の直前のトランプ・タワーでオバマが「電話を盗聴」していたことが今分かった。何も見つからなかった。これはマッカーシズムだ!」
トランプ氏のツイート全投稿は以下の通り。
ひどすぎる!勝利直前のトランプ・タワーでオバマが「電話を盗聴」していたことが今分かった。何も見つからなかった。これはマッカーシズムだ!
新情報。ジェフ・セッションズが会っていたロシア駐米大使はこれまでに22回、去年だけで4回もホワイトハウスにオバマを訪ねていた。
現職大統領が選挙期間中に候補者の電話を盗聴するのは合法なのか?以前裁判所は却下した。最低新記録だ!
良い弁護士がいればきっと見事に立証できるはずだ。選挙直前の10月、オバマ大統領が私の電話を盗聴していたという事実を!
非常に神聖な選挙の進行期間中に私の電話を盗聴するとは、オバマ大統領も落ちたものだ。これはニクソンのウォーターゲート事件だ。悪い(それか病んでいる)奴だ!
トランプ氏はTwitterに連続して投稿し盗聴疑惑を広めたが、その裏付けとなる証拠は示さなかった。
トランプ氏も、トランプ政権も、この疑惑の根拠としたのは保守系メディアの記事のみで、スパイサー報道官は16日、FBIが複数の機関による共同調査を率い、トランプ政権関係者とロシア政府の接触の可能性を調べていると、匿名の情報筋の証言を引用した一連の報道を読み上げた。
上院情報特別委員会は3月16日、バラク・オバマ前大統領がトランプタワーを盗聴していたとするドナルド・トランプ大統領の主張を立証する証拠はないと発表した。
複数の保守系ニュースサイトではそれまでもこうした盗聴の噂が流布していたが、トランプ氏は初めてオバマ氏と断定して主張した。現職の大統領がこのような陰謀論を持ち出してきたので、すぐに大きな議論となった。しかし、トランプ氏の側近はこの主張を裏付ける根拠を示していない。
ケリーアン・コンウェイ大統領顧問は6日、短いコメントを出した。
彼はアメリカ合衆国の大統領です。彼は他の誰もが持ち得ない情報や機密情報を得ているのです。
トランプ氏が主張する盗聴問題について、そうした機密情報をトランプ氏に提供しそうな人間は、誰一人彼を支持していない。それどころか、多くの人間がトランプ氏に異議を唱えている。
*アメリカ連邦捜査局(FBI)ジェームズ・コミー長官
コミー長官は3月20日、下院情報特別委員会の公聴会で、「トランプ氏のツイートを裏付ける情報は何もない。FBI内部でも慎重に調査した」と明言した。
*下院情報委員会
議会はホワイトハウスの要求に基づいてトランプ氏のツイートについて調査した。しかし、トランプ氏の主張を証明できず、その主張が単なる陰謀論以上の何物でもないことが暴露された。
下院情報委員会は司法省から盗聴問題に関する報告を受け取った。共和党のデビン・ヌーンズ氏と民主党のアダム・シフ氏の両委員長とも、その情報は大統領の説を裏付けるものではないと語った。
「トランプ・タワーでの盗聴の物的証拠? いや、何もありませんでした」と19日、ヌーンズ委員長は語った。「17日に入手した情報についても同様です」
シフ委員長も「司法省の回答について機密報告を受けました。我々のほとんどが地元を離れた後に届いたものです。しかしやはり、トランプ大統領がオバマ前大統領に盗聴されていたという主張を支持する証拠は何もありません」と述べた。
*上院情報委員会
16日の共同声明で、上院情報委員会のリチャード・バー議員(共和党)とマーク・ウォーナー議員(民主党)は、トランプ氏の主張を裏付ける情報はないと発表した。「私たちが入手できる情報に基づいて、2016年のアメリカ大統領選前後に、アメリカ政府の機関がトランプ・タワーを監視の対象にしていたことを裏付ける証拠は一切ありません」
*ジェームス・クラッパー元国家情報長官
クラッパー氏は、オバマ前政権下で国家情報長官を務めていた。それは、オバマ前大統領がトランプ・タワーを盗聴していたとトランプ氏が主張する時期にあたる。クラッパー氏は、自身が管轄したどの機関もそのような活動に従事しなかったと述べた。「私が国家情報長官として管轄した国家安全保障の組織で、当時のドナルド・トランプ次期大統領、または大統領候補、もしくはトランプ陣営に対する盗聴活動は一切ありませんでした」
*バラク・オバマ前大統領
「大統領としての職務の中で、オバマ大統領もホワイトハウス職員も、いかなるアメリカ国民に対しても盗聴命令を出したことは一度もなかった」。オバマ氏のスポークスマンを務めたケビン・ルイス氏は声明を出した。「それと相反する話はすべて偽りだ」
*イギリス政府
コンウェイ氏は、トランプ大統領は誰よりも情報を持っているので、盗聴についても知っていて不思議はないと語ったが、ホワイトハウスは証拠として、誰もが耳にするようなメディアによる報道に矛先を向けた。例えば、ホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官は16日、オバマ政権がイギリスの情報機関と協力してトランプ氏を盗聴していたと主張した。その根拠は、FOXニュースの法務アナリスト、アンドリュー・ナポリターノ氏の情報によるものだった。
ナポリターノ氏は、「オバマ氏は国家安全保障局(NSA)や中央情報局(CIA)、連邦捜査局(FBI)、司法省を使わず、GCHQ(英国の情報機関)を利用した」と発言している。スパイサー報道官はこの発言を盗聴の根拠にした。
イギリス政府は抗議し、テリーザ・メイ首相の報道官は「トランプ政権に対し、そのような主張は馬鹿げていて、無視すべきものだ。このような報道がもうないという確認をした」と批判した。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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