トランプ大統領のメディアバッシングが波及?「報道の自由度」が全世界的に下がっている

トランプ氏のツイートや侮辱で、アメリカで報道の自由がすでに蝕まれている。

国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団」(RSF)が4月26日に発表した世界各国の「報道の自由度」ランキング2017年版によると、トランプ大統領のメディアに対する「ムカつく」「無能」「的外れ」「役立たず」「不快」「経営が悪化している」「最低」「退屈」「頭が悪い」「大失敗」「うんざり」「ゴミ」「フェイクニュース」といった怒りのツイートや侮辱で、アメリカで報道の自由がすでに蝕まれている。

国境なき記者団は、メディアの独立性や組織の透明性などの項目について180カ国を評価・ランク付けし、「世界報道自由度ランキング」を毎年作成している。

最新のランキングには2016年に集めたデータが反映されているが、アメリカは16年の41位から43位に低下した。他の要因もあるが、何よりも大統領選の選挙運動での「有害な」発言が大きい。

国境なき記者団は4月26日朝、(トランプ大統領が「いんちきで不誠実」と称する)ワシントン・ポストとの合同会見でランキング結果を披露した。会見には世界中のメディアパネリストが出席した。

国境なき記者団のデルフィン・ハルガンド北米代表は会見で、「今年のランキングには、メディアを攻撃するのが当たり前になり、権力者が増加している世界の情勢が反映されている」と述べた。

アメリカでトランプ大統領が誕生したように、主要な民主主義国の政治的な大事件を特徴付けるのは、ハルガンド氏いわく「あからさまなメディアバッシングであり、世界を『ポスト真実(客観的事実よりも感情的な訴えが世論に影響すること)』やデマ、フェイクニュースの新時代に引きずり込む、極めて有害な反メディアの言葉」だ。

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2016年11月6日にミネアポリスのトランプ集会で撮影された男性。ジャーナリストを絞首刑にかけろと訴えるTシャツを着ている。JONATHAN ERNST / REUTERS

言論弾圧を監視する団体「ジャーナリスト保護委員会」は、大統領になる以前からトランプ氏が報道の自由にとって脅威だったと警告を発していた。2016年、元FOXニュースのジャーナリストで討論会の司会を務めたメーガン・ケリー氏との関係が悪化する中、トランプ氏は共和党の討論会への参加を拒否し、批判を受けた。

就任以降の100日間で、トランプ氏はメディアを容赦なく中傷し、特にニューヨーク・タイムズやNBC、ABC、CBS、CNNのような報道機関を「アメリカ国民の敵」だと糾弾している。

選挙期間中に「信じられないほど不正確な報道」をしたとしてワシントン・ポストの信頼性を貶め、SNSで繰り返し愚弄しているにも関わらず、トランプ氏は自分の興味がある同紙の記事を頻繁にシェアしている。

国境なき記者団はまた、バラク・オバマ前大統領が、政権の活動に関する情報を漏洩した「内部告発者に対して戦争をしかけた」と指摘した。オバマ政権が「諜報活動取締法」(Espionage Act)を適用して起訴した情報漏洩者は、それまでの政権すべてを合わせた人数よりも多くなっている。

例えば元CIA職員のジェフリー・スターリング氏は、ニューヨーク・タイムズの記者に機密情報を漏らしたために2015年に有罪判決を受け、いまだ獄中にいる。スターリング氏と家族、それに数万人の支持者は彼の無罪を主張し、赦免するよう求めている。

国境なき記者団の人道問題・広報担当のマーゴ・イーウェン氏はハフポストUS版に、「悪化の傾向が続いている」と語った。イーウェン氏はトランプ氏が大統領でいる限り、この傾向が続く可能性があると見ている。

「憲法修正第1条がある国の指導者がシンボル的な存在となり、メディア攻撃の方法や、政権からメディアに疑念の目をそらす方法を喧伝している。極めて憂慮すべきだ」と、イーウェン氏は指摘した。

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「イタリアのトランプ」と称されることもあるイタリアのポピュリスト政治家ベッペ・グリッロ氏。ジャーナリストが「フェイクニュース」を報じているという批判を繰り返している。REMO CASILLI/REUTERS

トランプ氏の言葉の影響は、アメリカ国境をはるか超えて広がっている、とイーウェン氏は言う。

例えばヨーロッパで、コメディアンからポピュリスト政治家に転身した「五つ星運動」を率いるベッペ・グリッロ氏がいる。公然とトランプ氏を称賛し、ジャーナリスト「階級」からの質問には答えず、記者を「フェイクニュースの製造者」と呼んでいる。

中東にもいる。トランプ氏と良好な関係にあるエジプトのアブドルファッターフ・アッ=シーシ大統領は、非合法化したイスラム組織「ムスリム同胞団」を支持しているという疑いをかけたジャーナリストに「魔女狩り」を敢行し、メディアへの取り締まりを強めている。国境なき記者団は、これをメディアの「Sisification(シシ化)」と表現している。

トランプ氏は4日、ワシントンでシーシ大統領と会談した際、シーシ政権による人権侵害に関して言及することはなかった。エジプト政府は、政権批判の言論を封じ込めるため記者を拘束・大量に逮捕し、国際社会から非難されている。

アジアに目を向けてみると、カンボジアの行政機関「閣僚評議会」の広報官フェイ・サイファン氏が、国の安定性を損なう可能性のある文書を公表したメディアを「潰す」という脅しをかけた。彼は、いわゆる「フェイクニュース」に対するトランプ氏の攻撃を直接引き合いに出し、自身の発言を正当化した。

「トランプ氏や彼の政権のメディアに対する厚かましい言動の影響が、すでに海外で起きています」と、イーウェン氏は語った。「世界の指導者たちは、アメリカ大統領のメディア攻撃を目の当たりにし、自分たちもできるのだと感じているのです」

2017年のランキングでは、16年より自由度が下がった国は62%に及ぶ。これは深刻な数字だ。イギリスやカナダのような西側諸国も含まれており、それぞれ2ランク、4ランク下落している。ただし、両国ともアメリカよりは上位にいる。

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トランプの反メディア的言動は「ポスト真実、デマ、フェイクニュース」の時代に寄与している。JONATHAN ERNST/REUTERS

ランキングで現在40位のイギリスは「歴史上最も厳格なメディア監視体制を確立し、国家安全保障の名の下、メディアの自由を侵害している」と、国境なき記者団は指摘した。新たに成立した「調査権限法」により、内部告発者やジャーナリスト、情報源への脅威が増しているという。

EU離脱(ブレグジット)の是非を問う国民投票のキャンペーン中、イギリス国内は政治的な「メディアバッシング」の拠点となった。EU離脱賛成派を率いたイギリス独立党の元党首ナイジェル・ファラージ氏もトランプ氏を公然と支持しており、自分の利益に反する「偏向」報道について、報道機関を頻繁に批判している。

22位のカナダは、ジャスティン・トルドー首相による「自由なメディア」に対する取り組みが肝心な部分で大失敗に終わっている、と国境なき記者団は指摘している。数人のジャーナリストが警察当局に監視され、「VICEニュース」の記者は「情報源とのやり取りを開示」を求める裁判所と争っている

「今年のランキングにも表れているように、報道の自由度は脅威にさらされています。そして最も注目すべきは(主要な民主国家)がランクを下げている点です」と、イーウェン氏は語った。 

「メディアに対する信頼はここアメリカでリスクにさらされています。しかし同時に新政権の発足以降、報道する側にも耐性ができているようです。メディアは市民のために報道しているという事実を思い出してもらうことが極めて大切なのです」

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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