アメリカのドナルド・トランプ大統領は、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領と4月29日に行った電話会談で、フィリピンの麻薬戦争について「素晴らしい仕事をしている」とコメントしていた。ワシントン・ポストとニュースサイト「ジ・インターセプト」が入手した電話会談の記録から明らかになった。
「おめでとうと言いたいんだ。麻薬問題に対してすばらしい業績を上げたというので」と、トランプ氏は言った。「麻薬の問題を抱える国は多い。うちもそうだ。でもあなたの功績は本当に素晴らしい、それを伝えたくて電話したんだ」
その後、トランプ氏はバラク・オバマ前大統領を貶し続けた。オバマ氏はドゥテルテ氏の暴力的な麻薬取り締まりをを非難し、アメリカ政府は麻薬売買に少ししか関与していなかった人や使用していなかった人も含め、ドゥテルテ氏の就任後1年足らずで9000人近くの人々を殺害したことに抗議していた。
「私にはあなたの功績がわかる、よくわかる。うちの前の大統領にはわかっていなかったけれど、私にはわかる。このことは前にも話したよな」と、トランプ氏は発言した。
トランプ政権の高官はワシントン・ポストに対し、この会談記録は正確なものだと認めた一方で、「リークされた文書だ」として、それ以上のコメントを差し控えた。
この会談記録はフィリピンの情報提供者からメディアに持ち込まれ、ジ・インターセプトと提携しているフィリピンのニュースメディア「ラップラー」が本物と確認した。トランプ氏が世界各国の独裁的な指導者に対し、普段と異なる友好的な態度を見せていることがうかがえる。またトランプ氏やジェフ・セッションズ司法長官が強い調子で「薬物乱用と中毒という災難」を非難していることから、今後さらにドゥテルテ氏が攻撃的な取り締まりをする恐れも出ている。
トランプ氏との電話会談では、ドゥテルテ氏も同じように薬物を「私の国の災難」と呼んでいたことが、会談記録から読み取れる。
ホワイトハウスは当初、この電話会談を「非常に友好的な対話だった」と発表し、トランプ氏がドゥテルテ氏をワシントンに招待したことも公表した。しかし電話会談の内容が明らかになると、ホワイトハウスのスタッフの間にも衝撃が走り、多くの人権団体からも非難が広がっている。人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」はかねてから、ドゥテルテ氏が無法な麻薬戦争を許容し、自警団員や警察官が超法規的な殺人を奨励して国内に恐怖を広げたことを非難してきた。ドゥテルテ氏は自分が野蛮な人間だと思われることを歓迎しているようで、自分自身をアドルフ・ヒトラーになぞらえ、数百万人もの薬物中毒者を殺害する使命を強調している。
「ドゥテルテ氏の麻薬戦争に肯定することで、トランプ氏は将来の大量殺戮に倫理的な面で加担することになる」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア支援主任担当ジョン・シフトン氏はニューヨーク・タイムズに語った。「あの性格では無理だろうが、それでもトランプ氏は恥を知るべきだ」
トランプ氏がドゥテルテ氏の戦略を支持したことで、オバマ政権時代からの政策転換があらためて浮き彫りとなった。オバマ政権は、薬物規制の問題では一貫してドゥテルテ氏と対決姿勢を見せていた。2016年9月の東南アジア諸国連合サミットに先立ち、オバマ氏はドゥテルテ氏との会談で麻薬戦争の問題を取り上げるつもりだと述べた。オバマ氏は「法による適正手続きを維持すること、またこうした麻薬との闘いを国際的な規範に則って行うこと」が必要だと考えていた。
ドゥテルテ氏はこれに対し、オバマ氏を「プータン・イ・ナモ(タガログ語でくそったれ)」と罵倒し、会談はキャンセルされた。
また、トランプ氏とドゥテルテ氏は電話会談の中で、朝鮮半島で緊張が高まっていることについても意見を交わし、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長に対する懸念を表明した。トランプ氏は金正恩氏を「核兵器を持った気の狂った男」と呼んでいた。しかし数日後、トランプ氏は5月1日、ブルームバーグのインタビューで金正恩氏との会談について「適切な条件の下であれば間違いなくそうするだろう。名誉なことだ」と述べていた。
トランプ氏とドゥテルテ氏は、北朝鮮への監視を続ける上で中国が中心的な役割を果たすだろうという考えで一致し、武力行使の可能性については明言を避けた。
「私たちはあのあたりにたくさんの兵器を置いている。世界最高の潜水艦が2隻、原子力潜水艦が2隻だ。ぜひ使いたいというわけじゃないが」と、トランプ氏は発言している。
「今までこんな状況は見たことがないが、兵器まで使う必要はないだろう。だが正恩は気が狂ってるかもしれないし、様子を見なくてはならない」
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
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