共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏は、メキシコ出身のヒスパニック系の不法移民を標的にし、彼らが薬物や犯罪をアメリカに流入させていると再三発言している。彼らを国外退去させ、メキシコとの国境に壁を作り、不法移民の流入を防ぐというのも「公約」だそうだ。
こうした発言は、激しい反発を招いているが、ヒスパニック系の中にも、トランプ氏の支持者がいる。ヒスパニック系のトランプ氏支持団体の「ラティーノズ・フォー・トランプ」の共同設立者マルコ・グティエレス氏はアメリカのテレビの討論番組の中で、数百万人の不法移民を国外退去させるトランプ氏の支援を一生懸命伝えようとしたのだが、その中で使ったある「たとえ」が、思わぬ波紋を呼んでしまった。
グティエレス氏は「私たちの文化は、非常に力強いのです」という趣旨のことを主張。その上で、「問題も起こしています。何もしないと、街角のあちこちにタコスの屋台が並ぶことになります」と語った。
タコスのトラック屋台「タコトラック」
タコスはメキシコの代表的な料理のひとつ。仮にトランプ氏が負けてヒラリー・クリントン氏が大統領になれば、多くの移民がメキシコから流れ込むことを警告したものと思われるが、タコス好きのアメリカ人からは「それって良いことじゃん!」「毎日がタコス祭りだ」という声が続出。
Twitterでは、「#TacoTruckOnEveryCorner (どの街角にもタコスの屋台)」というハッシュタグができてしまったうえ、普段はトランプ氏を批判している人たちからも「素晴らしい」と絶賛の声が上がっている(皮肉交じりに)。
タコスの店がメキシコからアメリカに「侵入」する動画まで登場した。
トランプ氏は、ヒスパニック系の支持を取り付けるため、頻繁に「ヒスパニック大好き」とアピールしている。中でも、5月のメキシコの祝日「シンコ・デ・マヨ」に合わせてタコスを食べている画像をTwitterに投稿した時は多くの反響を呼んだ。
第31代大統領ハーバート・フーヴァーが選挙戦を展開した時、共和党陣営は「すべての鍋にチキンを」という言葉をスローガンにして、生活の向上を国民に約束していた。普段はトランプ氏を忌み嫌うアメリカ人たちも、今回ばかりは胃袋をつかまれたのかもしれない。
関連記事