中絶助成廃止のトランプ大統領 オランダが対抗して基金設立 「産むかどうかは自分で決める」

「中絶を禁止しても中絶の数は減りません」

ドナルド・トランプ大統領は1月23日、世界各国で人工妊娠中絶を支援する非政府組織(NGO)への助成を禁じる大統領令に署名した。中絶に反対する保守派の意向を汲んだ政策の転換となった。

ロナルド・レーガン元大統領が1984年から始めた共和党政策に従い「グローバル・ギャグ・ルール(口封じの世界ルール)」とも呼ばれる大統領令「メキシコ・シティ政策」を復活させた。この政策は、NGOが行う広範囲の家族計画やリプロダクティブ・ヘルス / ライツ(性と生殖に関する健康・権利)のオプションの中に、中絶を含めて提供あるいは助言する場合、NGOへの政府支出を禁じている。これはアメリカ政府の資金が世界の中絶関連サービスに使われることがなくても適用される。

この大統領令は、世界に深刻な影響を及ぼし、発展途上国や紛争地域の女性や少女たちにとって致命的になる可能性がある。そのような国や地域では、安全な中絶方法にアクセスできない場合、妊娠中絶するために危険な方法を取ることが多いからだ。

オランダのリリアンヌ・プルメン開発協力相は、途上国への悪影響を軽減するため、避妊や中絶を必要とする女性たちに引き続きサービスを提供する組織のために、国際的な中絶基金を設立すると発表した。

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オランダのリリアンヌ・プルメン開発協力相

プルメン氏は24日、トランプ氏が「グローバル・ギャグ・ルール」を復活させたことについて、声明を発表した。「この決定は広範囲に影響を与えます。何よりも影響を受ける女性たちは、子供が欲しいかどうかを自分で決められるべきです。それは夫や子供、社会全体のためでもあります。中絶を禁止しても中絶の数は減りません。隠れて危険な中絶手術を受け、妊婦に命の危険が及ぶ可能性が高くなります」

プルメン氏はさらに、世界中にある女性のための組織をオランダ政府が支援し、600万以上の望まない妊娠や50万以上の中絶を防止した成果を強調した。

この支援を継続させるため、プルメン氏は他国の「政府、企業、市民社会団体」に新しい基金への寄付を呼びかけた。グローバル・ギャグ・ルールによってカットされるアメリカの資金提供分を埋め合わせるのが目的だ。

ガーディアンによると、すでに15〜20の国や基金がプルメン氏に支援協力を申し出ている。

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トランプ大統領が「メキシコシティ政策」を再導入する大統領令に署名したため、過去の経緯から考えると、世界中で中絶や妊婦の死亡が増えることになる。

■ なぜアメリカの中絶政策が世界に影響を及ぼすのか

アメリカ合衆国国際開発庁は家族計画に関し、国と国が協力して資金を提供する世界最大の組織だ。

グローバル・ギャグ・ルールはレーガン政権以降、民主党政権では廃止され、共和党政権になると復活している。

しかし注意してほしいのは、1973年の「ヘルムズ修正案」で、中絶手術に直接アメリカの資金を使用することはすでに禁止されていたことだ。グローバル・ギャグ・ルールは、たとえアメリカでは中絶手術が合法だとしても基本的に中絶について女性に指導したり、他の資金を中絶手術に回している各国の病院に、アメリカの資金を使用させないものだ。

このルールは人の生死に影響を与える。家族計画の国際機関「マリー・ストープス・インターナショナル」はこのルールによる影響を受け、資金がカットされることで今後4年の間に650万以上の望まない妊娠、220万以上の中絶、若い女性2万1700人の死亡が予測されている。

このルールによって世界中の中絶率が実際に上がったことが研究で明らかになっている。スタンフォード大学の研究グループによる2011年の調査で、1994年から2008年のアフリカ20カ国の女性26万人の中絶率を調べたところ、中絶関連のサービスを提供する病院への資金提供を制限すると、中絶率が増加することがわかった。

1994年から2001年のビル・クリントン大統領時代にこのルールが廃止されると、対象国の年間中絶率は女性1万人に対して10.4%だった。しかし2001年から2008年のジョージ・W・ブッシュ大統領の時代にこのルールが復活すると、年間中絶率は上昇し、女性1万人に対して14.5%に上がった。

さらに、この研究グループによると、グローバル・ギャグ・ルールによる影響が強い国に住む女性は、クリントン政権時代よりW・ブッシュ政権の時代に中絶する割合が3倍多かったという。研究グループは、ブッシュ政権時代にサハラ砂漠以南のアフリカ地域で中絶が増えた理由について、決定的な結論を出すのを避けたが、現代的な避妊方法を取る病院から資金を引き揚げたために、中絶率が増加した可能性があるという仮説を立てた。

もちろんこうした病院は家族計画だけではなく予防衛生サービスも提供しているところが多い。アメリカがこうした機関から資金を引き揚げると、そのすべてに影響が出るだろう。

2006年に設立された女性の健康のための国際組織「エンジェンダーヘルス」の報告によると、ブッシュ政権の終盤、グローバル・ギャグ・ルールの影響でケニアの病院が8軒閉鎖した。そのうち数軒はその地域に1つしかない一般診療を提供する重要な病院だった。ザンビアでは、生と生殖に関するサービスを提供する非政府組織が約40%の職員を失い、家族計画やエイズ防止の活動が妨げられている。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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