学校に行けない子の居場所「しゃべん会」、発足したのは不登校を経験した女子高生ら

不登校になった子たちの居場所をつくろうと、不登校を経験した女子高生らが挑んでいます。福岡市の末本晴香さん(高2)と松本理沙さん(高2)たちです。

不登校になった子たちの居場所をつくろうと、不登校を経験した女子高生らが挑んでいます。福岡市の末本晴香さん(高2)と松本理沙さん(高2)たちです。

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「しゃべん会」のチラシや名札をもつ末本晴香さん(左)と松本理沙さん=福岡市

主な活動は、不登校生の仲間づくりや会話に慣れるための「しゃべん会」を月に1、2回開くことです。福岡市西区の公民館で、不登校生とおかしをつまんでトランプをしたり、勉強をしたりしています。運動不足の解消もかねて、ごみ拾いなどをすることもあります。

「売りはメンバー全員が不登校の経験者です」と笑顔で話す末本さん。「大人がやるより安心感を持つ人がいるはず」と松本さん。学校でのつらかった経験をふまえ、参加者にやることをおしつけません。独りぼっちになる人が出ないようにすることや、自尊心を高めるために名前をしっかり呼ぶことなども心がけています。

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「しゃべん会」で参加者と輪になり、カードゲームをするようす(末本さん提供)

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体を動かすため、外でごみ拾いをすることもあります(末本さん提供)

「Fline」というグループ名で、1月に活動を始めました。メンバーは10代から20代の6人。発案者の末本さんは中学生時代、部活の雰囲気になじめず、厳しい校則にも疑問を感じ、2年のときに不登校になりました。体調不良も重なりました。「家にずっといるのも親に申し訳ない」と別室登校するうちに、同じ境遇の人たちと話すようになりました。

「進路や勉強の不安、苦しかったことなど、普通に学校に通っていたときには言えなかった話ができました。不登校生同士、話ができる居心地のいい場所をつくりたいと思いました」

去年11月、末本さんは市内の不登校生やその保護者が集まるイベントに参加。同世代の松本さんに会い、協力してほしいと声をかけました。松本さんは「はるかちゃんは意識高い系で、遠い存在だと思った」と振り返ります。「でもメンバーが本当に1人しかいないし、できることをやってみよう思った」

末本さんらは、不登校生の親が集まる会でチラシを配ってしゃべん会の参加者を募集。1回目は1人だけでしたが、口コミなどでいまは多いときで10人ほど集まります。要望があれば不登校生の家を訪ねて話をすることもあります。コミュニケーションが苦手だった中学生が少しずつ心を開き、この春には夢に向かって高校に進学したそうです。

末本さんと松本さんは3月、高校生のキャリア教育を応援するNPO法人「カタリバ」が東京で開いた「全国高校生マイプロジェクトアワード」で取り組みを発表しました。パワーポイントを使って取り組みをプレゼンし、35チームの中から優勝。9月には不登校生と先生を目指す大学生らとの交流を企画するなど、活動範囲を広げています。

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3月の「全国高校生マイプロジェクトアワード」で発表する末本さん(左)と松本さん=東京都中央区

ネガティブなイメージがある不登校の経験を人生の糧にしたいと考えている2人。活動は手探りで、うまくいかないこともありますが、やりがいを感じています。話すことは得意ではなかったという松本さんは、性格が明るくなっていくことに気がつきました。末本さんも「新しいつながりが生まれる」ことに喜びを感じています。「自分にやるべきことがあるというのは楽しい」。若い世代を応援する仕事に興味を持ち始めています。

しゃべん会の活動などについての問い合わせは、メールで末本さん(fline.futoko@gmail.com)へ。

この記事は、「朝日中高生新聞」7月12日号に掲載した記事を加筆し、写真を追加しました。ジュニア朝日のホームページ(http://www.asagaku.com)では、「朝日小学生新聞」「朝日中高生新聞」のサンプルや記事の一部も見られます。