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日本最大級のLGBTQイベント「東京レインボープライド(TRP)」が4月22〜23日、代々木公園で開かれ、この日を楽しみにしていた人たちが次々と訪れた。
東京で日本初のプライドパレードが開かれたのは1994年。当時の参加者は1100人だった。それから30年経ち、その規模はコロナ前には20万人になった。
参加した人たちはどんな気持ちでここを訪れているのだろう。多くの人々で溢れた会場で「あなたにとってTRPはどんな場所?」と聞いてみた。
ここで救われた
レズビアンと多様な女性たちのための活動をしているNPO法人レインボーコミュニティcoLLaboのブースで出会ったやぶさんにとって、TRPは「仲間に会える場所」だという。「学生時代、ここで仲間に会うことで私自身が救われました。だから今はこうして、出展しています」と話した。
一緒にブースにいたMiwaさんにとっては「勇気をもらえる場所」だ。「勇気をもらえて、ただここにいるだけで誰かとつながれる、そんな場所です」
ボーダレスな場所
誰も排除しない、されない社会を実現するために活動している一般社団法人Get in touchのブースでは、アライだというTenさんが「TRPはみんながお互いを受け止める、とてもボーダレスな場所だと思っています。ここに来ると自己肯定感が上がります」と話した。
この言葉に、同じブースのNoriさんも「LGBTQの人たちの場所と思われているのかなと思うのですが、それだけではなく本当にいろんな人たちが来て、誰もが受け入れられる温かい空間だなと思っています」と頷いた。
当事者もそれ以外の人も楽しめる場所
香川県から参加した田中昭全さんと川田有希さんのカップルは、ここ数年毎年TRPに参加している。
田中さんはその中で、近年変化を感じているという。
「以前はエンパワーメントの場所だったんですけれど、時代が変わり、当事者以外の人も結構来るようになってその融合が面白いと感じています。東京という土地柄もあるのかもしれませんが、当事者もそれ以外の人も一緒に楽しめる場所になっているのがいいです」
川田さんは「地方から来ているので、こういうふうに大きく集まることができる場所があるのは面白いと感じています。人に紛れることもできるし、当事者という立場だけではなくお祭りに参加することもできます。ただその一方で、ここが声を上げる場所である必要があるとも思っています」と話した。
みんながニコニコして嬉しい気持ちに
レインボーフェスタ那智勝浦/レインボーフェスタ和歌山のブースでお会いしたまるさんは「すごい場所です」と力を込めた。
「僕たちは和歌山県の那智勝浦町というところで活動をしています。人口1万4000人で本当に小さい町なんです。多分参加しているプライド団体では、一番小さい町なんじゃないかな。TRPの方達が先頭に立って大きくしてくれることが地方で生きている僕たちが活動しやすいきっかけになっているので、すごい場所です。地方からも頑張っていきます」
同じブースのはんちゃんさんは、初参加。「普段は地方で活動しているので大きいところを見たことがなく、ぜひ来てみたいと思っていました。みんながニコニコしてて幸せそうで、見ていてとても嬉しい気持ちになります」
本当に変わってきた
はんちゃんさんのような初めての参加者がいる一方で、1994年の初回から来ている人も。
岩井紀穂さんは第1回から参加し「東京のプライドパレードの歴史を見てきた」という。その中で社会が変わったのを実感している。
「LGBTという言葉が浸透して、存在が認識されてきたとは思います。僕はトランスジェンダーですが、それがどういうことなのか、今は多くの人がなんとなくでもわかってくれるようになりました」
「ただ、表面的な理解は進んできた一方で、もっと深い部分はまだまだだと感じます。その変化を推し進めていきたいし、そのためには法律の整備が必要です。TRPは僕たちの人権やプライドをアピールする一番の場です」
同窓会のような場所
早稲田大学のOBサークルのブースで毎年参加している赤士さんは「TRPは自分にとって同窓会のような場所」と表現した。
「毎年ここでブースを出していると、名前は知らないけれど、顔を知っているような人たちが結構いるんです。そういう方々と目を合わせ、挨拶したり、写真をとったりするのがすごく楽しいと感じています」
海外との連携、すごくいいこと
ソウルから参加したランさんは、2015年からTRPでソウル・クィア・カルチャー・フェスティバルのブースを担当している。
「「ソウルプライドパレードとTRPは2015年から協力して、お互いにブースやパレードを出しています。韓国と日本のプライドが協力するのは、すごくいいことだと思います」と話した。
顔や名前を出せない人もいる
たくさんの人たちが友人と再会などを顔を出して発信している一方で、参加者の中には、名前や顔を明かせない人もいる。
青森県から訪れたゲイの祐介さん(仮名)にとって、TRPは1年の中で唯一、ゲイである自分が「ひとりじゃない」と感じられる場だという。
職場や父親で差別的な発言を聞くことが多く、バレないようにと常に気を張って生活しているという祐介さん。ゲイだと知っているのは、高校時代の同級生ただ1人だ。
6年前に地元でパレードが開催されていることを知ったものの「知り合いに見られるかもしれない」という恐怖で参加できなかった。
ちょうど同じ時にTRPの存在を知り「大勢の人が来るこの場所なら紛れられるかも」と思い、それ以来毎年一人で参加している。
会場では、当事者団体のブースを遠くから見ているだけだが、それだけで自分以外にもたくさんの性的マイノリティがいることを実感でき、安心するという。
その一方で、自分のように日々苦しさを感じて生きている人の姿は、あまり可視化されないと感じており、孤独感が募る部分もある。
だからTRPには、インターネットでの発信でも良いから、苦しんでいる当事者もいるということを、もっと積極的に伝える場であってほしいとも感じている。
「TRPのおかげで、自分以外にも当事者がいることを実感できました。でも、誰にも言えないのは自分だけなのか、と思っている人はまだたくさんいると思います。こういった場に来ることができない人の思いを可視化し、『ひとりじゃないんだ』と思える人が増える場であってほしいです」