青年校長5年目。土地の売買で起こったトラブル

こんな経験、もう二度とないだろうなぁ......。

■前回記事はコチラ

学校建設を進める上で、土地の選定は非常に重要なポイント。

今回は、その土地を購入する際に起こったトラブルについて書きます。

こんな経験、もう二度とないだろうなぁ......。

土地選定、校舎建設をするうえで......

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K. Furusawa

パートナーが決まり事業を進めていく上で、次に取り掛かったのが土地や校舎などのハード面の選定でした。

簡単な流れとしては......

  • パートナーとの契約
  • 建設場所の選定
  • 土地の購入
  • 校舎の仕様(設計) 確定
  • 校舎建設業者の選定・契約

こんな感じだったのですが、土地の選定についてはパートナーのほうが土地勘や地域の事情を把握しているため、条件を伝えてあとは任せていました。

パートナーに伝えていた条件は、以下の通り。

  • パートナーの小学校が近くになること
  • 周りに他の中学・高校がないこと
  • 法律上、学校登録する際に必要な土地面積以上の広さがあること

土地の選定でのトラブルpart 1(2012年6月)

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K. Furusawa

最初の候補地

選定を一任してからすぐに、パートナーから「良い土地があった」と連絡が入り、さっそくその候補地を見に行きました。条件もすべて揃っていて、願っていた通りの土地! 立地も良く、土地の所有者も売却可能だと、話はとんとん拍子に進みました。

そうして契約日も決めて必要書類などを準備していた時、事は起こりました。土地の詳細を確認するために弁護士に調査を依頼していたのですが、なんとその土地は「裁判調停中」だと判明したのです。

バングラデシュでは、日本のように区画がはっきりと図面で記されておらず、大半の人が「あそこからあそこまでが私の土地」と、あいまいにしか捉えていません。手書きの土地図面があれば良いほうです。私たちが目を付けた土地も似たような理由で、土地の所有権をめぐってふたりが争っていました(そのうちのひとりが私たちに土地を売ると言ってきていたのです)。

発展途上国では、国の土地管理システムの整備が遅れていることもあり、このように土地の売買手続きで問題が発生することも多々あるのだそうです。このまま事業を進めていたら危ないところだった......!

土地選定でのトラブルpart 2(2012年7~11月)

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K. Furusawa

クワを持ってバングラ流「地鎮祭」

さて、気を取り直して別の土地を探すことに。2013年1月の開校予定日まで、もう時間がありません。

パートナーは、またすぐ別の候補地を探してきてくれました。そこは隣にパートナーの小学校があり、土地の値段も予算内。もちろん、事前に弁護士に依頼し土地の所有者も明確にしている。そこからの流れは早く、土地の契約、建設業者との契約、校舎の仕様がスムーズに決まっていきました。

建設を始める際にはバングラ流「地鎮祭」を実施。バングラデシュでは土地にクワを入れることで、「無事建設工事が終えますように」と祈るようです。

この時点で開校予定日まで残り3カ月。開校予定日までに全校舎の建設は難しいので、初年度に使用する最低限の教室だけ、まず建設してもらう話で進めていました。

ただ、その矢先のこと......パートナーから緊急の連絡が入りました。地元マフィアが建設予定地に学校を作るなと圧力をかけてきたのだとか。マフィアはパートナーに銃まで突きつけ脅し、その土地の隣にあるパートナーの小学校には嫌がらせとして多くの張り紙がされるようになりました。

事の経緯を詳しく調べていくと、その地域のある有権者が、私たちの校舎建設予定地から数キロ先にある場所に学校を経営しており、日本支援の学校が近くにできたら生徒が流出する恐れがある、そこでマフィアを雇い、そのようなことをしたのでは......という話が入ってきました。

建設予定地の近くに既に中学校があるとは知りませんでした。

パートナーが元々作成した小学校・中学校マップには、その中学校の表示はありません。なんでも、開校予定日まで時間がなかったということもあり、パートナーはそのことを気に留めず話を進めてしまっていたのです。パートナーを責めたい気持ちはありましたが、彼らだけでなく私たちにも、確認を怠ったという落ち度がありました。

まずい! 開校予定まで時間がない

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K. Furusawa

兎にも角にも、まずは今後の方針を明確にしなければならない。

例の有権者と和解してその土地で事業を進めるか、再び別の土地を選び直すか。ただ開校予定日をふまえた校舎の建設期間などを考えると、もう土地選定の時間はない。私たちはまずその有権者と直接会い、どんな様子か見て判断しようと決めました。

直接会った時の様子や内容をここで書くことはしませんが、この有権者が運営する学校の近くで事業はやらないほうが良いと結局判断しました。危険な状況によりプロジェクト中止にならないように、その時は身の安全を第一に考えて断念。

再び土地の選定、ふり出しに戻りました。開校予定日まで、既に残り3カ月。

もし1月に開校ができない場合には、この事業は当初の計画より1年の遅れが出ることになります。どうにかして進めようと、メンバーたちで考える日が数日続きました。

つづく

Ambassadorのプロフィール

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K. Furusawa

K.Furusawa

宮城県仙台市出身。大学在学中はプロキックボクサーとして活躍。卒業後は日本で私学の教師をやりながらタイ、カンボジア、ネパール、ミャンマーなどアジアの教育支援に携わる。その後、公益財団法人School Aid Japanの仕事としてバングラデシュでモデル校となる学校建設・運営を任される。現在は生徒数約800名の学校をバングラデシュで運営中。