藤井浩人美濃加茂市長の事件、今日の午後、名古屋地裁で開かれる第2回公判で証人尋問が始まる。その最初、今日、明日の2日間にわたって、贈賄供述者の証人尋問が行われ、いきなり、この裁判の天王山を迎える。
西松建設事件、陸山会事件では、検察OBとして、評論家的立場で、いわば外野から、「暴走する特捜検察」を批判し、大阪地検特捜部の証拠改ざん等の不祥事を受けて開かれた「検察の在り方検討会議」にも加わり、検察改革の在り方についても意見を述べてきた。そして、大坪元大阪地検特捜部長の事件では、大坪・佐賀を断罪することで特捜部長以下の問題に矮小化し、検察組織そのものの問題から目を背けさせようとする検察と戦うべく、リリーフ投手として控訴審から登板した。
今回の事件では、まさに先発投手として、藤井市長が逮捕された翌日、検察に送致された時点から、検察と徹底的に戦ってきた。
その中で多くのことがわかってきた。
検察改革の中で、検察官の倫理規定も定められ、取調べの可視化も相当程度進んだ。しかし、本当に検察が真実に向き合う姿勢に変わったのか、本当に「引き返す勇気」を持った検察になったのか。
決してそうではないということを、今回初めて弁護人として先発登板して、1回から検察と戦い続けてきたことで、実感した。
しかし、それを自分の認識だけに終わらせてはならない。真実と向き合おうとしない、「引き返す勇気」も絵空事に過ぎない検察の実情を、裁判の場で、白日の下にさらさなければならない。
そういう意味でも、今日からの証人尋問が、まさに正念場である。
今日は検察官の主尋問。弁護人冒頭陳述【藤井浩人美濃加茂市長事件 弁護人冒頭陳述】では、本件を「警察、検察によって作り上げられた犯罪」と言ったが、その「作り上げられた贈賄ストーリー」が、公判の場で贈賄供述者の口からどのように語られるのか。まずは、じっくり聞いてみることとしたい。
そして、明日は、朝から夕方までかけて行う弁護人の反対尋問。贈賄供述者の「公判廷での嘘」を、そして、我々がその「嘘」につながったと主張する検察と贈賄供述者との「闇取引」を、どこまで白日の下にさらすことができるか、まさに、私の刑事弁護人としての真価が問われていると言ってよいであろう。
「真実に向き合おうとしない検察」という組織の根本問題を、今回の公判で明らかにすることができるか、「名古屋の陣」に是非注目して頂きたい。
(2014年10月1日「郷原信郎が斬る」より転載)