◇ 本年3Qの実質GDP成長率は、前年比+6.5%と前期(同+6.7%)に比べて伸び率が低下した。これは、金融リスク防止政策の影響で、地方政府によるインフラ建設投資の伸びが低下したほか、耐久財消費が伸び悩んだことが主な要因である。
◇ 国家統計局は足許の経済情勢について「穏中向好」(安定を保ちながら良い方向に向かっている)に替えて「穏中有進」(安定を保ちながら推移している)という表現を用いた。これは17年初以来1年半にわたり続いていた建国以来最も安定した経済情勢から再び緩やかな減速局面に入ったことを示している。
◇ 米中貿易摩擦は本年7月以降激化しているが、対米輸出は関税大幅引上げ前の駆け込み輸出が全体を押し上げているため、マイナスの影響がまだ見られていない。
◇ 足許の景気動向を前提とすれば、2020年までの経済成長率目標値の達成についてはあまり心配する必要がなくなったため、当面の経済政策運営は改革推進を優先することが中央政府のマクロ政策の基本方針とされている。
◇ 来年の政策運営は、改革推進の副作用と米中貿易摩擦のマイナスインパクトをマクロ経済政策で吸収しながら、経済全体のバランスを確保するという極めて難しい政策調整が必要となるというのが中央政府のマクロ経済政策関係者の共通認識である。
◇ 日本企業は今年、中国ビジネスへの取り組み姿勢の積極化が顕著で、日本から中国に出張してくる取引先企業関係者の人数が増えているのみならず、社内ランクの高い人の出張が目立っている。
◇ 米国商会が8月末から9月初に実施したアンケートによれば、米中貿易摩擦で関税が引き上げられても、中国に進出している米国企業のうち全体の8割程度は製造拠点の移転といった生産体制の変更は行わない計画であることが明らかになった。
◇ 米中貿易摩擦の激化にもかかわらず、中国国内の一般庶民の対米感情に変化はなく、米国は自由・経済発展・平和を世界にもたらした立派で尊敬できる国であるとの前向きな評価は変わっていない。トランプ大統領の政策はおかしいが、米国企業とは関係ないとの受け止め方が大勢である由。
◇ 10月下旬に行われた安倍総理の中国公式訪問は、中国国内でも習近平主席、李克強総理らによる安倍総理に対する歓待ぶりがテレビ、新聞等各種メディアにより大きく報じられ、一般庶民の間でも親日ムードが盛り上がった。
全文はキヤノングローバル戦略研究所のHPよりご覧ください。
(2018年12月13日 キヤノングローバル戦略研究所「中国経済は安定保持から緩やかな減速局面へ~改革推進の副作用、米中摩擦の影響とマクロ政策とのバランス確保が課題~<北京・上海・広州出張報告(2018年10月21日~11月2日)>」より転載)