従来のトランジスター技術は、その基本限界に急速に近づいており、次世代の高密度低消費電力チップエレクトロニクスでは、二硫化モリブデン(MoS)などの二次元半導体材料がシリコンの代わりになると考えられている。特に有望なのは、従来型のシリコントランジスター(MOSFET)とは基本的に異なる方式で動作するバンド間トンネルトランジスターにおける二次元半導体材料の可能性である。しかし、総合特性がシリコントランジスターより優れたそうしたデバイスは、これまでほとんど実証されていない。今回K Banerjeeたちは、活性チャネルとして原子レベルの薄さのMoSを、ソース電極としてゲルマニウムを使って垂直構造を作ることで、トンネルトランジスターを作製した。このトランジスターは、既存のシリコントランジスターより優れたターンオン特性と低消費電力動作を示した。今回の結果は、超高感度バイオセンサー、ガスセンサー、そして低消費電力集積回路など、さまざまな電子回路用途で興味深いと考えられる。
Nature526, 7571
2015年10月1日
原文:
doi:10.1038/nature15387
【関連記事】
マグネシウムの構造特性を高める方法 Nature526, 7571 2015年10月1日
高T超伝導体の幾何学的形状 Nature525, 7569 2015年9月17日
ハイパボリックメタ表面で光を操る Nature522, 7555 2015年6月11日